第二十一話 つるべおとし1966年46号(11月20日号)掲載

 夜道を歩いていると、突然、大木のこずえなどからだしぬけにぬっと落ちてくる妖怪だ。近畿、四国、九州地方によく現れ、人々に恐れられている。

 それは、まるで井戸水をあげるつるべのように、どぼんと落ちてくる。それで、つるべおとしと名付けられたのだろう。

 愛知県の方では、大きな杉の木に鬼が住んでいて、下を通った男がつるべのようにすくい上げられたという話が残っている。

 この妖怪は、つるべのように木の上から、どすんと落ちてきて、また上につるつると上がっていくと思われる。


第二十二話 竹きりだぬき1966年46号(11月20日号)掲載

 夜中に、山の中の竹藪でちょんちょんと、竹の小枝をはらう音がする。それからしばらくして、根元の方が引き切られて、ざざっと、竹の倒れる音がする。翌朝その竹藪に行ってみると、竹を切られた跡もなく何事もない。兵庫県の山奥でしばしばこんな音がする。この地方の人々は『竹きりだぬき』という、狸の仕業だと言っている。

 また、静岡県の山奥では、深夜にどこからともなく、チョンチョンという神楽の囃子がすることがある。これを『山囃子』といい、やはり狸の仕業だと言われている。

 静岡県の熊村というところでは、最近狸が腹鼓を打ちはやしているのを見たという人さえいる。


第二十三話 砂かけばばあ1966年47号(11月27日号)掲載

「砂かけばばあ」は『大和昔譚』という本に出てくる妖怪だ。

 神社の近くの、寂しい森陰などを通ると、砂を、ばらばらと振りかけて人を脅かす。別にそれ以外のことはしない。


第二十四話 山うば   1966年47号(11月27日号)掲載

 山うばは山に住む妖怪だ。目がするどく、口は耳の辺りまで裂けている。

 いつもは山中に住んでいるが、時々、人をなつがしがり、人のいる山小屋をのぞいてみたりする。また雪の降る日に、人がいない山の中の一軒家にあがって囲炉裏の火にあたっていることもある。正月頃になると、人里におりてきて買い物をしたりする。特に酒が好きらしく、小さなビンを持って、酒を入れてくれと言う。山うばとわからずに、売ってやった人は、その後になって幸運が訪れるという。

 長野県の方では、重い荷物を持った木こりを助けたり、農家の主婦の草鞋づくりを手伝ったりしたという伝説も残っている。

 徳島県の山奥に、中島という村がある。この村の山に、山うば石といわれる大きな岩がある。昔、この辺に山うばが住んでいた。そして、ときどき里の子供を連れてきて岩の上に火をたいて当たらせることがあり、それを見たという人もある。

 山うばの特徴は、山の中で布を織ったり、草鞋を作ったり、子供を育てて、山の主にすることだ。

 昔いた、坂田金時という豪傑は、山うばに育てられたという伝説も残っている。


第二十五話 つちころび 1966年48号(12月4日号)掲載

 この妖怪は、はじめ、飛騨地方(岐阜県の山の中)に現れた。正体は、藁打ちの槌のような形で一面に長い毛が生えている。人が通ると、転げかかってきて驚かす。出る場所は、山の中の岩がごつごつしている峠の道が多い。

 中部地方の山岳地では、これを野づちという。やはり、岩の上を転がってきて人を襲う。

 ある人は、野の霊が、そういう形になったと言っている。

 現在では、この槌型の妖怪は全国におり、鳥取県の山中では転がってきて足に吸い付くという。


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