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第154回  工房の 通信販売の恐怖


  或る日の午後の出来事だった。


「お〜、輝豸雄。
 随分渋いの読んでるんだな、お前。」
「ま、まあね。 
 たまには、時代物もいいかなって思ってさ。」
「ふ〜ん、、、。
 『 乱(らん) ツインズ 』 ねぇ。 あんまり本屋で見たこと無いな。」
「ま、まぁね。」
「ひょっとして、昨日来てたアマゾン、これだったのか?」
「ま、まぁね。」
「取り寄せしてまで読みたいなんて、そんなに面白いのかい?」
「ま、まぁね。」
「また今度貸してくれよ。」
「ま、まぁね、読み終わったらね。」
「きっとだぞ。」
  
   

そう言い残して、甘栗は出て行ってしまった。



独り自室に残った輝豸雄は、眼の前の雑誌を改めて見下ろして、、、、
そして、大きく溜息をついた。


” ちきしょう! アマゾンめ!
  てっきり 乱(みだれ)ツインズ だと思って注文したのに。 ”
” 赤い髪の女の子と、緑の髪の女の子が、乱れる本だと思ったのに、、、。 ”
” 宇宙人のくせに、現国を教えている人妻美人教師も出てくると思ったのに、、、。 ”


輝豸雄の後悔は、日本海溝よりも深かった。

                                                   第155回に続く