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第143回 工房の 輝豸雄 と 空の少女
「ねぇ、何を聴いているの?」
「ねぇ、、、、。」
その少女は、何も言わずに空を指さした。
「 空 ?」
輝豸雄はその少女の指さす空を見上げた。
蒼く、眩い空が、輝豸雄の視界いっぱいに拡がった。
「 ? 」
何か見えるんだろうか?
輝豸雄は一生懸命目を凝らした。
だが、見えるのはやはり、蒼く眩い空だけだった。
「ねぇ、、、。何を、、、、。」
輝豸雄がそう話し始めた時、
少女がゆっくりと話し始めた。
「貴方には、この蒼い空いっぱいに溢れる素敵な音楽が聴こえないの?」
「お、音楽?」
「そう、素敵な音楽よ。」
輝豸雄は耳を澄ませた。
でも、何も聴こえない。
少女は、それ以上何も言う気が無いらしく、また、瞳を閉じてしまった。
輝豸雄だけが、取り残されているような気がしてならなかった。
もう一度、輝豸雄は空を仰ぎ見た。
蒼くて、
眩い空だ。
「あぁ、いいお天気だ。」
思わず言葉が漏れる。
輝豸雄は、空を見上げながら、深く深呼吸をして、
そして、
その、瞳を閉じた。
何処かで、音楽が聴こえたような気がした。
第144回に続く