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第34回  工房の 街角のメロディ

或る日、輝豸雄は、街角でふと足を止めた。

あたたかい 人の情けも
胸を打つ あつい涙も
知らないで育った 僕はみなし児さ

強ければ それでいいんだ
力さえあれば いいんだ
ひねくれて 星をにらんだ僕なのさ

ああ
だけどそんな僕でも
あの子らは 慕ってくれる
それだから みんなの幸せ祈るのさ


吹く風が 冷たい時も
降る雨が 激しい時も
目をあげて 明日に希望をかけたのさ

ああ
だからきっといつかは
あの子らも わかってくれる
みなし児の 正しく生きるきびしさを

あの子らも わかってくれる
みなし児の 正しく生きるきびしさを

   都会の雑踏の中で、輝豸雄は懐かしいあの歌を聴いたような気がした。

                                                   第35回に続く