番外編  工房の しょうらいのゆめ

或る日、輝豸雄は夢をみた。
幼い頃の夢だ。



夢の中で 輝豸雄は 教室にいた。
教壇の向こうにいる先生が、やけに遠くに見える気がした。

   


「輝豸雄くんは、大きくなったら 何になりたいのかな?」

「はいっ、せんせいっ!
 ぼくはっ大きくなったらTVの中の人になりたいです。」

「て、TVの中の人?」

「TVの中ではたらく人になりたいです。
 世界中のいろんな国にいって、いろんな人にあって、いろんな話をいっぱいして
 みんなとなかよくなりたいです。」

「そう。
 どうしてそんな人になりたいって思うようになったのかしら?」

「ほんとうのことが知りたいんです、ぼくは。」

「ほんとうのこと?」

「はいっ、ほんとうのことです。
 ほんとうのことがわかれば、みんな なかよくなれるじゃないですか。
 そんでもって、なかよくなって、ほんとうのことを教えてもらうんです。
 みんなが幸せになれる方法を、
 さびしい気持ちにならない方法を、
 みんなが大好きになれる方法を、ぼくは世界中で探したいんです。」

「・・・・。」

「うそは嫌なんです。
 飾ったり、大きくしたり、隠したりするのは嫌なんです。
 ほんとうのことを探したいんです。」

「・・・・・・・。」

「せんせいっ! 何か言ってくださいよ!
 ぼくは間違ってますか?
 ぼくの考えはおかしいですか?
 ぼくは、ぼくはっ!、、、、。
 せんせいっ!せんせっぃ〜、、、、、。」





「ふぅ〜」
暗闇の中で輝豸雄は目を覚ました。
この夢が、哀しい夢なのか 楽しい夢なのか 今の輝豸雄には解らなかった。
まだ、本当の事は見つかっていない。
それだけは、今の輝豸雄にも解っていた。

                                                   番外編 おわり
               
                                                   戻る