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第53回  工房の 後楽園で僕と握手

「後楽園に行けば、ヒーローと握手が出来る」

そんな噂が、輝豸雄の廻りを飛び交っていた。
お隣のミヨちゃんは、ガオレッドを観たと言っていたし、
タカシくんは、龍騎のサインを持っていた。

テレビで活躍中の、あのヒーローに逢える!
いつしか、輝豸雄にとって後楽園は憧れの場所になっていた。


そんな輝豸雄にも、後楽園に行くチャンスが巡って来た。
町内会で後楽園の試合を観に行くことになったのだ。

輝豸雄は一生懸命後楽園でヒーローを探した。
アバレッドや、ガオシルバーや、555を探した。
でも、、、、そんなヒーローは何処にもいなかった。
大きな身体の男達が、小さな四角形の舞台で踊っているだけだった。

輝豸雄は、哀しくなった。
せっかく、後楽園にやって来たのに、一人もヒーローに逢えないなんて。
自然に涙が頬を伝った。
寂しかった。

    

「どうしたんだぃ、君。」
不意に輝豸雄は抱き上げられた。
虎のマスクをかぶった、男の人だった。
「男の子が、泣いてちゃダメだぞ!元気を出すんだ!」

ワーイ!タイガーマスクだぁ  
タイガーだあ〜
ワ〜イ、ワ〜イ、ワ〜イ、タイ〜ガ〜、ワーイ


虎のマスクの中の人の瞳は、とても真直ぐで力強かった。

”タイガーマスクって云うんだ、この人” 
輝豸雄はすっかりこの”タイガーマスク”のファンになっていた。

そうだ、この人と握手して貰おう。  輝豸雄はそう思った。
                                                   第54回に続く