臨床検査技師の仕事 −医学教育を受けずに業界に入っちゃった人へ− (4)


(1999/12/18掲載)


[臨床検査の意義]

 臨床検査の目的は、「医師の的確な診断を助ける」ことである。検査結果で診断することではない。検査はあくまで補助である。この点は、診療のリーダーたる医師の中にも誤解をしている人がいて、非常に憂慮すべき事態を招いている。
 しかし、間違ってはならない。検査は主役でこそないが、なくてもいいそえものでもない。

日常診療における臨床検査の目的
  1. 確定診断(推定された疾患の確認と、程度の判定)
  2. 鑑別診断(他の可能性ある疾患の除外)
  3. 頻度の高い合併症のチェック



臨床検査の歴史

太古呪術と共に存在

メソポタミア時代の洞窟壁画に尿検査らしき描写
17世紀光学顕微鏡開発

微生物学、血液学(形態学)の発展
19世紀日本の微生物学発展

北里柴三郎
昭和10年代戦略目的で細菌検査技術発達

衛生兵
昭和20年代医師から検査技師へ検査技術の継承

検査室改革
検査技師育成学校
検査技術が生かされる時代・検査万能時代
昭和30年代専門職種確立

衛生検査技師法制定(33年)
検査の簡易化進む
テクニコン自動生化学分析装置(フロー式、33年)
昭和40年代測定法の確立

臨床検査技師法制定(45年)
自動生化学分析装置(ディスクリート式)の普及
試薬キット
精度管理
EIA、LNなど新しい原理の測定法開発
昭和50年代臨床検査の標準化

なくてはならない臨床検査
自動生化学装置の多機能化、マルチ化
自動血球計数装置、ドライケミストリー(定量)
昭和60年代データ解釈のできる臨床検査技師を目指して

臨床検査技師法改正(62年)
平成〜未来

臨床検査と誤診

誤診を生む検査の三要素
  1. セット検査
  2. 保険上の病名を信じてしまう
  3. 医学(検査の意義)教育の不足

自覚症状なし→検診→スクリーニング検査確定・鑑別検査→診断
自覚症状→来院→問診・所見確定・鑑別検査→診断
×自覚症状→来院→セット検査  →診断
  1. 検査項目選定の誤り、もしくは不足による誤診(セット・スクリーニング検査の落し穴)
    • 見当違いを一生懸命検査→手遅れ
  2. 検査値の意味も理解せず、絶対評価
    • 採血条件や年齢、性差を考えずに肝機能障害・高脂血症と診断することも多い
    • 健康な人を病人と誤診→患者の精神的肉体的社会的ダメージ
    • 判定ミス→手遅れ
参考)確定診断のための検査(セット検査に含まれない、代表的なもの)
  • タンパク分画(骨髄腫)
  • 甲状腺ホルモン(甲状腺機能障害)
  • 血中Ca、リン(副甲状腺疾患)


臨床検査機器は誤解されている!



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