◆□キノの旅でハァハァしよう3□◆
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上記スレ、555さん作。
一本の道を一台のモトラドが結構なスピードで突っ切っている。
「ちょっとスピード出しすぎじゃないかな?」
「そうかい?今の僕にはこのくらいがちょうどいいんだけどね」
「……まだつるぺた扱いされたことに怒ってるの?」
「もちろん」
「…キノって、胸だけじゃなくて心も貧しいんだね」
「次の国でエルメスをばらばらに解体して部品を売り飛ばして新しいモトラドでも買おうかな」
「またまたー。そんな冗談ばかり言っても面白くないよ」
「冗談ならいいね」
「………」
それからは無駄口を叩かずに黙々と走り続けるだけであった。
しばらく進むと一台のトラックが向こう側から走ってきた。
モトラドとトラックがすれ違う瞬間、
「おーい、旅人さん」
突然呼び止められ、キノはブレーキをかけ、車体を滑らせるようにして止まった。
「はい?」
「あんた、あっちの国から来たのかい?」
トラックの運転手が指差したのはキノにとっては忌々しいあの国だった。
「…はい」
「そうか。それじゃ都合よくあの国最大のお祭りにも参加できたかね?」
「……まあ、一応」
「キノは今年の優勝者なんだよ。凄いだろ」
エルメスがいつものように余計なことを口にする。キノは無言のプレッシャーをエルメスに与えた。
「へぇー、旅人さんが優勝かい!こりゃ珍しい」
彼は感心したような口振りでそう言った。が、すぐに悲しげな、哀れむような目をキノに向けてきた。
「でも、そりゃあんたにとっては辛かったかもな…」
「判ってくれますか…」
初めて会えた賛同者にキノは少し嬉しくなった。胸の奥からほろりと暖かいものが溢れ出てきた。
「そうだ、あんたにいいものをやるよ」
「?」
そう言うと彼は助手席のほうをごそごそと漁り、あったあった、と言いながらキノにガラスのビンを一つ差し出した。
その中には2色の玉がたくさん入っていた。
「これは?」
「それは俺がある医学の発達した国で手に入れたものだ。2色の飴玉があるだろ?
そっちの緑のほうを舐めると、何とかホルモンだか何たらが促進とか何とかで…とにかく身体が大人になるのさ」
「……本当ですか?」
「嘘っぽいなあ、そんな話」
「まあ、信じる信じないはあんたがたの自由さ。俺も試したわけじゃないからなんとも言えないしな。
それともう1色の黄色の飴玉を舐めると、逆のことが起こって元に戻るのさ」
「…へー」
キノはしげしげとビンの中身を見た。緑の飴玉は、何と言うか毒々しい色をしている。
黄色の飴玉は、それは黄色と言うよりも金色、金玉と言ったほうが正しいくらいである。
「じゃーそれはあんたにやるよ。俺はつるぺたな女性には興味がないからな」
はっはっは、と高笑いを上げて彼は去って行った。残されたキノはただ呆然と立ち尽くしている。
「なんだか飴玉で変身なんて、昔のアニメでありそうだね」
「…何の話?」
「さあ?それで、キノ。それどうするの?」
「……うーーーん」
「キノー、そろそろ寝たらどう?」
このあたりの気候は温暖、というより暑いくらいである。
キノは下着姿でビンと睨めっこをしながら唸っていた。
「…これを舐めたらどうなると思う?」
「さあ」
「………うーーーーーん」
「迷う必要なんて無いよ。キノは今のままで十分だよ」
「頂きます」
キノは毒々しい緑色の飴玉を取り出すとそれを口の中に放り込んだ。
「あらら」
「……苦い」
「いいのかなー。そんなわけの判らないもの食べちゃって」
「お休み…」
今の僕は藁にも縋る思いなんだよ…、と思いつつキノは眠りについた。
うーん、うーん。キノの苦しげな声が聞こえている。
胸が締め付けられるように苦しい。キノは跳ね起きた。
「っはぁ、……はぁ…く」
物理的に締め付けられるような感覚がキノを襲う。
(と、とにかく何とかしないと…!)
地面を這うように苦しんでいたキノは何とかその苦しみから解放されようと着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
息苦しかった感覚が少しずつ薄らいでいくのを感じた。
「っは、はあ、…はあ」
苦しかった胸を手で押さえ、押さえたところで気がついた。
ふにふに
(――ん?)
胸から手に伝わる感触。今まで触ったことのない弾力に富んだもの。
キノは自分の胸を見た。つるつるぺったんだったそこには二つの大きなおっぱいがついている。
「うわっ…」
思わず声を上げた。本当に身体が成長している。
胸だけでなく腰も触ってみた。そこは見事にくいっとくびれている。
お尻も触ってみた。豊かにぷりっとしている。着けていたパンツは股間に食い込んでいる。
キノは自分の身体が見てみたくなったのでエルメスのボディを鏡代わりに利用した。
「うわわっ…」
再び声を上げた。丸々としていた顔がすらりと、まさに世間一般で言う美女、となっていたからだ。
今のキノは、つるぺたの国に行っても全く相手にされないような、そんな女性、身体になっている。
キノは両手で顔を覆い、うつ伏せにゴロリと寝っ転がり、足をパタパタ上下に動かして喜びを身体で表現した。
「こんなのキノじゃない」
未だに浮かれているキノに対し、エルメスがびしりと言った。
が、キノは意に介さずはしゃぎ続ける。
「ふふん、何を言ってるんだいエルメス。僕は僕だよ。んふ、んふふふふ」
「そんな気持ち悪い笑い方しないでよ」
「あー、嬉しいな嬉しいなー」
ごろごろごろ、と地面を転がるキノ。と、その動きがぴたっと止まった。
「そうだ」
上体を起こして気がついたように言う。
「……服が無い」
確かに今のキノに合うサイズの服など持っているわけがなかった。
「どうするの?次の国まで食い込みパンツ一枚の姿で行くつもり?」
「まさか」
「じゃあ黄色の飴玉を舐めて早くもとに戻ってよ」
「嫌だ」
「そんな身体、キノじゃないよ」
「また僕をつるぺたに戻したいだけだろ?」
「あ、判った?」
「………」
エルメスに構っていられないといった感じでキノは思案しだした。
しばらく考えを巡らせ、思い立ったようにエルメスの荷台を探り出した。
「何かいい考えでも浮かんだの?」
「うん、ちょっとね――」
「――――ああ、忘れるところだった」
「次は何ですか?」
モトラドに乗った一人の旅人とバギーに乗った一人の旅人。キノとシズ。
ある国を出た後、二人は少しだけ話をしてそのまま別れようとしていた。
分かれようとしてシズはある小包を渡し、次こそ本当に分かれようとしたときにまた呼び止めた。
「ついでにこっちも貰ってください。同じく私には不要な物ですから」
シズは先ほどより大きめの包みをキノに差し出した。
ごそごそと中身を確認し、キノは再びシズに尋ねた。
「……これも何ですか?」
「それもあなたの役に立つはずです。遠慮せずにどうぞ」
「………わかりました」
「――シズ様」
「何だ、またか陸?」
「いえ、最初にお渡しした物の方は判りました。しかし後にお渡しした物は、キノ様には少し…」
「陸、あれでいいんだ。今の段階で着れるかどうかなど問題じゃない」
そこでシズはにやりと顔を歪め、
「要は着た時にどれほどの魅力があるかどうかだ。想像できるか、陸。どう思う?」
「…………感服いたしました」
「……ねえ、その服小さいんじゃないの?」
着替え終えたキノを見てのエルメスの感想はそれだった。
「んー、でも胸と、それに腰のサイズはぴったりだからきっとこれでいい、と思うんだけど…」
確かにキノが着ている服は胸のラインがきっちりと見え、その美しさを惹き立てている。
腰のスカートもまるで採寸したかのようにぴったりと着ることができる。
「じゃあなんでキノのおへそが見えるほど上着の丈が短いのかな?」
「きっとこういう服なんだよ」
「じゃあなんでキノの太ももが見えるほどスカートも丈が短いのかな?」
「きっとこういう服なんだよ」
白をベースに紺色の襟とスカート、赤いスカーフ、へそと太ももを曝け出すように計算され尽くした作り。
シズのオーダーメイドのセーラー服(夏服)である。
「ちょっと肌を出しすぎてると思うよ」
「この辺は暑いからこれくらいでいいよ」
「コートは着ないの?」
「コートを着たらせっかくこの服に着替えた意味がないよ」
「あ、もしかしてキノ、その格好で旅をする気!?」
「次の国までだよ。そこで服を買うから。ところで、どう?」
キノはその場で華麗にターンした。襟とスカーフ、短いスカートが遅れて回る。
食い込みパンツが見えた。
「どうと言われても何とも言えないよ」
「つれないなあ」
キノが不満顔で言った。
「まあいいさ。そろそろ行こうか」
「靴が無いんじゃない?」
ふふん、とキノが鼻で笑った。
「心配無用。ちゃんとシズさんからのプレゼントの中に入ってたよ」
そう言って取り出されたのはランニングシューズと、そして何故かルーズソックス。
「それなら安心」
「そういうこと。じゃあ行こうか」
「――――素晴らしい……」
レンズを覗くシズが思わず感嘆の声を漏らした。
「やはり俺の眼に狂いはなかった。キノさんは魅力的だと、俺は信じてましたよ」
独り言をぶつぶつと繰り返す。
「…………シズさ」
「陸、ビデオカメラのバッテリーが切れそうだ。予備を」
「……はい」
とぼとぼとバッテリーを取りに行き、とぼとぼとそれをシズに渡した。
取替えの作業に移るときになってようやくシズがレンズを目から離した。
そこで陸がさっき言いかけたことを告げた。
「シズ様、お言葉ながらやはりこのようなことは間違っているのでは?」
ぴくっ、と作業をするシズの手が止まった。一瞬、ほんの一瞬だけ陸はただならぬ気配を感じた。
殺気が、よぎった気がした。
だが陸の内心びくびくの忠告をシズは冷静に受け止め、そして考える仕草をした。
「ふむ、間違い…間違いか、確かに間違ったな……」
陸はようやくシズに自分の想いが通じたと思い、ほっと安堵の溜め息をついた。
「ようやく判っていただけ」
「やはり今はルーズソックスより黒のハイソックスだな…。陸、お前も判るようになってきたな」
くしゃくしゃと陸の頭を撫で、シズは再びレンズを覗きだした。
「むっ、見事なターンだ。ばっちり撮らせて頂きましたよ、キノさん」
「………シズ様」
陸は泣きそうというより本当に泣いているような顔だった。