電気の力でワックスがけ!

■近来稀にみる傑作(←自分で言うなよ)をご報告します。
 
女 「もしもし、私、〇〇と申しますが、とおみさんのお宅でしょうか。
 奥様でいらっしゃいますか?
 この度、絨毯やフローリングのお掃除を、キャンペーンで特別に300円で承っておりまして、是非この機会にいかがでしょうか。
 別に、その後に電話がかかってくるとか、定期的に訪問するとか、そのようなことはございませんので、是非、お気軽に体験なさってみませんか?」
 
 後の電話や再訪問よりも、「お掃除の訪問」時に何がおこるかの方が重要だよなあ。
 
女 「絨毯は、敷いたままで構わないので、とても簡単ですよ。お宅には、絨毯は・・・」
私 「絨毯ですか? 使っていませんけど(やや嘘)」
女 「一枚もですか? 玄関マットなんかもありますでしょう?」
私 「はあ。あるにはありますが、洗濯機で丸洗いできるヤツばっかりなんで・・・」
 
 この時は、この後にとんでもない展開が待っていようとは露ほども思わず、極フツーに電話を切り上げようとする私だった。
 
女 「丸洗いですか・・・(気を取り直して)じゃあ、フローリングのワックスがけはどうしていらっしゃいます?」
私 「ワックスがけは、主人が趣味で結構マメに磨いてくれてます(かなり嘘)」
女 「それじゃあ、ご主人にも是非、当社のお掃除を見ていただいて・・・。皆さん、参考になるっておっしゃいますし。
 なにしろ、当社は、電気の力で、張りつくようにワックスを塗り込むので、断然仕上がりに違いがでてくるんですよ! 手塗りじゃこの仕上がりは無理ですね!」
 
 電気の力! スゴイ言葉が出てきました。
 
私 「で、デンキのチカラ? 手塗りとは違うって、電気でどうやってワックスを塗るんですか?」
女 「どうやって、って、電気で張りつくようにワックスを塗り込むんです。手ではこれは不可能ですよ」
私 「いや、だから、電気をどこにつかうんですか? 手塗りでは不可能な仕様が、どのように電気でおこなわれるんですか?」
 
 半分はマジに質問している私。
 そう、何かスゴイ技術でワックスがけがなされるのかもしれない。先入観は科学の心の天敵だ(笑)
 
女 「いえ、ですから、電気で、こう、張りつくように、ですね。摺り込むように、です」
私 「ワックスを塗る部分が、電動だというんですか? でも、それだと手でも頑張ったら出来ないことないですよね?」
女 「・・・電気掃除機を使うんです。あの、私は、電話で今回のキャンペーンのご案内をしているだけなので・・・」
 
 だめですよ、逃がしません。
 
私 「でも、「普段家でしている方法よりも仕上がりが違ってくる」っていうのが、そちらのサービスの一番重要なところじゃないんですか?
 どうやって「張りつくように」ワックスを塗るのか、すっごく気になるんですよー。どんな掃除方法かわからないままにお願いしたくないしー。
 とてもキレイになるんですよね?」
女 「ええ、そうですね」
私 「掃除機のモーター部分以外に、電気を使ってワックスがけをする秘密があるんですか?」
女 「いいえ・・・その、ターボを使うんです」
私 「それはワックスがけには直接関係ないのでは? 掃除機の排気を使って、ヘッドを細かく振動させる仕組みがあるとか」
女 「いいえ、・・・その・・・電気で動く、掃除機で、手ではちょっと無理な・・・」
私 「掃除機のヘッドの重さでワックスを摺り込むとか・・・」
女 「いえ、そこまで重くはありませんよ(← 即 答 )
 
 とりあえず、その掃除機は結構重いようです。
 
私 「じゃあ、何が違って、何が参考になるんですか?」
女 「あの、ええと、電話ではやはり少しお伝えしにくくって・・・。ですからこそ、是非この機会に、お客様の目の前で、現物を使ってご説明させていただけたらと」
私 「いくら格安でも、よくわからないサービスにはお金は払いたくないです。お掃除と同時に説明だなんて、もしもそのサービスに不満があった場合はどうすればいいんですか?
 普通は、サービスを受ける前に、十分な説明があるもんですよね」
女 「いえ、その、ですから、私は、電話で案内をするだけでして、商品の説明は、現場の社員からさせていただきますので・・・」
私 「商品? 掃除機? お掃除屋さんじゃなくって、掃除機屋さん?
 
女 「あっ!」
 
 ・・・一呼吸の沈黙の後、観念したのか今までと違う静かな声で話し出すお姉さん・・・。
 
女 「・・・はい。ええ・・・当社は、家電販売店でして、スウェーデン製の100年以上も伝統のある掃除機のよさを、皆様に知っていただこうと、この度キャンペーンで・・・」
 
 いきなり、ハウスクリーニングは嘘だと認めてしまってます。
 
私 「掃除機の宣伝に来る、と。で、300円払え、と」
女 「いえ、あの、テレビや新聞などの広告費を削減して、より安く商品を提供させていただこうというコンセプトで、こうやって皆様にご案内させていただいているんです」
私 「300円払ったら、宣伝してやる、と」
女 「・・・その・・・、300円は、福祉の方に回して・・・あの、聴導犬ってごぞんじですか? 聴導犬の育成には非常にお金がかかるんですけれども、その聴導犬にわが社は寄付しているんです。皆様から預かった300円は、耳の不自由な人の大切なパートナーを育成するのに使われるのです」
 
 掃除機の宣伝するから家に入れてくれ。ついでに募金も徴収していくぞ・・・じゃあ誰も承知しないだろうなあ。
 
 特商法違反のトークは会社が用意したマニュアルだろうし、あまりいじめるのもかわいそうなんで、もうおしまいにしておこう。
 
私 「ええと、掃除機は間に合っていますんで・・・。また、必要になったら、こちらから問い合わせさせてもらいますね」
女 「はい、それでは、失礼いたします」

■テレアポさんが「あっ!」と叫んだ瞬間、空いている方の手でガッツポーズしてしまいましたよ。
 ちょっぴり幸せな気分になってしまった、夏の午後でした。

(2004.9.17)

■「投稿!電話勧誘」に、あぷりこさんという方から、同じ会社に関する投稿がありました。詳しくは「300円でお掃除♪」をご覧下さい。

(2005.2.18)