浄水器 その2

■夕方、外出先から帰って来たら、電話が迎えてくれました。
 幼児と乳児連れての外出に疲れ果てていたところでもあったので、カンペキに不意打ちを食らってしまいました・・・。
 
私 「(慌てて電話に走ったので、ちょっと肩で息をしながら)はい」
女 「もしもし、奥様ですか。私どもはSと申しまして、この度、新たに新大阪を中心に販路を拡大することになりまして、その記念に無料の浄水器をプレゼントさせていただいているんですが、お宅には浄水器はありますか?」
 
 あー、えー、おー、あー、
 ・・・なかなか頭が「勧誘電話撃退モード」に切り替わらない、ヘタレな私。
 もう夕食の準備せにゃならんしー、ネタも思いつかないしー、さっさと断ろうかー
 
私 「浄水器ですか? もう有ります」
女 「あ、でも、お風呂場や洗面所、他の蛇口は空いていますよね」
私 「でも」
女 「当社の宣伝ということで、小さな、ホントに小さな浄水器なんですけれど、サンプルをお配りしているんです」
私 「あー」
女 「お風呂場でしたら、塩素が抜けて柔らかい水になりますから、髪にもお肌にもいいですよ〜」
私 「あの」
女 「蛇口の先にちょっとつけるだけですから、手間もかかりませんし」
私 「え」
女 「使い捨てなので、お気軽にご利用なさってください」
 
 ああああ! いいかげんこちらに喋らせろ!
 
 ・・・よし、わかった。戦おう。
 
女 「それでー」
私 「あの! もう一度会社名をお願いします」
女 「え? あ、はい、Sと申します」
私 「エスエフ○ー? 略称ですか?」
女 「(ちょっと怪訝そうに)・・・Sです」
私 「正式名称がエスエフ○ーなんですね?」
女 「・・・あの、何か・・・」
 
 ふう、これで少しは相手の勢いを削げたかな。
 
私 「ええ、お気になさらないで下さい。趣味ですので
 で、その浄水器は無料で使い捨てなんですね?」
女 「はい、お使いになられたあとは、燃えないゴミとして捨てていただけたら・・・」
私 「燃えないゴミって、荒ゴミのことですか?」
女 「は? アラゴミ?」
私 「神戸は「家庭ゴミ」「荒ゴミ」「リサイクルゴミ」なんですけど」
女 「え、あの、燃えないゴミで・・・」
私 「「燃えないゴミ」ってカテゴリは無いんですが」
 
 よーし、調子が出てきたぞ(笑)
 
女 「あの、燃えるゴミじゃないゴミとして捨てていただけたら・・・
 それで、(お、立ち直り早っ)当社の方から勧誘などはいたしません。あくまでも当社の宣伝なんです。
 サンプルをお使いになられて「良いな」と思った方は、名刺にあるフリーダイヤルの方に電話していただいたら、購入もできます。強制は致しません。
 浄水器を売りつけようというわけじゃないんですよ」
 
 そこまで先回りして弁解されたら、余計にアヤシイんですけど。
 
私 「その浄水器は、付け外しは簡単なんですか?」
女 「ええ。誰にだって簡単に外せますよ。特別な道具も要りません」
私 「取付けが大変ってことは・・・」
女 「ありませんよ。工事の必要はありません。それじゃあ、明日の朝十時半ごろはご在宅でしょうか?
 
 さらりと、それでいて畳み掛けるように話を進めようとする。これがテレアポ職人芸か。
 
私 「仕事があるのですけど(嘘)」
女 「え? お仕事していらっしゃるんですか?」
私 「はい」
女 「あー、夕方の五時、六時まででしたら、お伺いできますが、どうですか?」
私 「それはちょっと無理ですね」
女 「じゃあ、土曜日は」
私 「出勤日です」
女 「今日のように早く帰宅なさる日は・・・」
私 「今日は体調が悪くて早引けしたので」
女 「・・・そうですか。それでは、残念ですがまたということで」
 
 おいおい、「当社の宣伝」はどうなったの?
 
私 「あの、郵送していただくわけにはいかないんですか?」
女 「へ? あ、いや、郵送はちょっと・・・料金もかかりますし・・・」
私 「営業さんの出張費の方が高いと思うけど?
女 「いえ、あの・・・、只今、当社の社員が神戸市の○○区を廻っておりますので、お伺いする方が簡単なんですよ」
私 「じゃ、ポストに入れておいてくださいな」
女 「は? いや、それはちょっと・・・
 社員の方から説明がありますし、取付けの際に水漏れがあってはいけませんので、きちんと当社の方で取付けさせていただいておりますので」
私 「え? 工事の必要がなく、誰にでも簡単に付けられる浄水器じゃなかったんですか?」
女 「あ、いや、」
私 「そんな、取付ける時に水漏れするかもしれないような、コワい浄水器なんですか?」
女 「いいえ、簡単に取付けることができますよ。面倒なことはございません」
私 「じゃ、自分で付けますんで、ポストに入れといて」
女 「いえ、ですから、水漏れが・・・」
私 「しないんでしょ?
 
 そうだろうとは思っていたけれど、どうしても家に入りたいらしいな・・・
 
女 「あの、今回のキャンペーンは主婦の方を対象にしておりますので、残念ですが・・・」
私 「私も主婦ですが」
女 「いえ、専業主婦でご在宅の方を対象にしておりますので」
私 「でも、会社の宣伝なんでしょ? 兼業主婦には宣伝しないんですか? 兼業主婦が浄水器を使わないっていうなら別ですけど〜」
 
 ここぞとばかりに攻勢に出るワタクシ
 
女 「当社の社員の説明を受けないと、サンプルはお渡しできないことになっているんです! 奥様は平日の日中にご在宅ではないんでしょ!」
私 「あ、でも・・・(思わせぶりに)そうだ。
 社員さんの説明だけ受けて、取付けはこちらで、となったら、短時間で済んだりしませんか? それだったらなんとか・・・」
女 「そうですね! (パァッと声の調子が明るくなる)ほんの五分程度ですので、奥様の都合の良い時間にお伺いいたします」
私 「説明だけ聞いたら、取付けは後で自分でしてもいいんですね?
女 「はい。それでは、いつがよろしいでしょうか」
私 「そうじゃなくって、説明だけなら電話でもできますよね。電話でしてもらえませんか? で、浄水器はポストに・・・」
女 「あ〜そうなんですか〜残念ですね〜それでは失礼します!」
 
 ものすごい早口でまくし立てたと思ったら、電話を切られてしまった・・・

■とりあえず、社員の目的が「サンプル取付け」でも「説明」でもなく「家を訪問すること」なのは確実のようでした。
 
 あくまでも「当社の宣伝」というなら、絶対に郵送した方が安くつくと思うんだけどなあ。人件費ってバカにならないもんねえ。いちいち訪問してちゃ、数もこなせないだろうし。
 高い人件費使って、一軒一軒じっくり訪問して、それでこそ利益が出る・・・というわけですな。
「浄水器を売りつけようというわけじゃない」って台詞が本当か嘘かはともかく、幾らのモノを買わされるところだったんでしょう・・・。ドキドキします(笑)。

(2004.3.6)

■「投稿!電話勧誘」に、irikoさんという方からSの浄水器についての投稿がありました。
 テレアポを承知したら、一体どうなるのか。詳しくは「30万円の浄水器!」をご覧下さい。

(2004.6.8)