大豆の商品取引

 自宅で商品取引モノの電話なんてはじめて受けたよ。ダンナも私も歳をとったってことかな(笑)
 
女 「私、今度この地区の担当になったので、その御挨拶にと思って電話しております。奥様ですか?」
私 「はい、そうですが・・・担当って?」
女 「商品取引ってご存知ですか?
 とおみさんはおそらく現在、銀行や郵便局などの金融機関を利用していらっしゃると思いますが、今、超低金利時代と言われているのはご存知ですよね?」
私 「はい」
女 「金融機関にお金を預けても、殆ど利子はつかないですよね。
 ところが、確実にお金を増やす方法があるとしたら、いかがです?
私 「いかがですって言われても・・・」
女 「ええと、とおみさんは、株や証券取引をなさったことはありますか?」
私 「ないです」
女 「そうですか。商品取引、と申しましても何も難しいことはありません。
 我が社がお勧めするのは「大豆」でして、これは大抵の新聞でその日の値動きを見ることができます。とおみさんの資金が増えて行く様を毎日チェックできるのですよ。
 ところで新聞は何をとってらっしゃいますか?」
私 「日経です」
女 「は、日経ですか。(しばらく妙な間が・・・日経という答は想定していなかったようだ)はい、日経も大丈夫です。お手元に新聞はございますか?」
私 「ありません」
女 「・・・あの、新聞は・・・」
私 「主人が職場に持って行ってしまっているので、新聞は家に無いです」
女 「・・・では少しお待ち下さい」
私 「は?」
 
 電話の向こうがガサガサしていると思ったら・・・
 
男 「お電話代わりました」
 
 なんでそこで人が代わるんや?
 
男 「先ほどの私どもの社員の話は理解されましたでしょうか」
 
 「社員」って、んじゃアンタは何者やねん
 
私 「理解も何も、大豆の商品取引をお勧めしたいってことしか聞いていませんが」
男 「はい、お客様には大豆を買っていただいて、その値が上がったところで売って利益を得るという仕組みです。
 今丁度大豆が値上がりしているところなので、とおみさんがお手持ちの資金を増やすお手伝いが出来ないかと思いまして」
私 「儲かるんですか?」(と、ちょっと水を向けてみる)
男 「そうですね、今だと確実に値上がりいたしますから」(声が弾んでいるように思えるのは気のせいか)
私 「でも、お金がいるんですよね・・・」(大げさにガックリと)
男 「いいえ。そうですね、20万ぐらいからでもはじめられますし・・・」
私 「20万! そんなにお金ないです・・・」(人生に絶望したように)
男 「またまた〜、御謙遜を」
私 「いいえ・・・あの、身内の恥じをさらすのもナンですが・・・兄が借金を残して失踪してしまって・・・」(大嘘)
男 「は?」
私 「私、保証人になってしまっていたので・・・」
男 「あー、でも、そうですね、10万ぐらいからでも可能ですが」(口調に動揺がうかがえる)
私 「・・・そんな余分な現金は無いですね・・・。なにしろ新たにローンも組めない状態なので」
男 「あー、それはー、ちょっと・・・」
 
 貧乏くじを引いてしまった! ・・・という心境が手に取るようにわかるぞ(笑)
 
私 「無理ですよね」(ため息とともに)
男 「ええ、まあ、そうですね。それでは失礼します」

 それにしても、どうして最初の女の人は男の人に電話を代わったんだろう?

(2001.11.11)