仕事のセミナー?健康セミナー?

■ペンネーム「あるしー」さんからの投稿です。

 先日、たま〜に会うママ友から「小さい子のいるママでもできる仕事のセミナーにみんなで行きませんか?」というメールが来ました。
 ちょっと怪しいかも…とは思ったのですが、会場が公民館で託児室もあるという事だったので子供を遊ばせるだけでもいいかと思い参加をOKしました。
 
 そして当日、まともなセミナーだったらいいなあという私の期待はあっさりと裏切られました。
 セミナーの内容は「ナチュラリープラス」という会社のサプリメント「スーパールテイン」の販売について。私達以外は殆どがおじさんおばさんで、健康セミナーという話で参加しているようでした。
 
 セミナーは三部構成。(各1時間)
 第一部:「スーパールテイン」の効能について
 第二部:購入方法とキャッシュバックシステムについて
 第三部:是非やってみたいという人への詳しい説明
 
 「スーパールテイン」は緑黄色野菜に含まれる色素(カロテノイド)のサプリメントで抗酸化作用があり、免疫機能を高め病気を予防する効果があるということでした。ハウス栽培の緑黄色野菜は太陽光を浴びていないのでカロテノイドの含有量が少なく、日々体内で生まれる活性酸素を退治しきれない!というのがセールストーク。
 
 講師「活性酸素はいつまでできるの?」
 会場の人達「死ぬまで」
 講師「だからスーパールテインを飲む。いつまで?」
 会場「死ぬまで」
 
「死ぬまで」を十数回言わされて第一部終了。託児室に行ってみると子供は大泣きしていました…。
 しばらくあやして機嫌が直ったので第二部へ。
 
 第二部。「スーパールテイン」で収入を得るためにはどうしたらいいかの詳しい説明。手順は…
(1) 「スーパールテイン」を最低月1本買うと「ナチュラリープラス」に会員登録できる。
(2) 他の人に「スーパールテイン」を紹介し、その人が1万円買うごとに1万ポイントもらえる。
(3) 4万ポイントで5千円のキャッシュバック。
(4) 8万ポイントで1万円(=自分の分の「スーパールテイン」がタダになる)
 
 要は収入を得たかったら、9人以上勧誘しろ(月9万円以上売れ)という事みたいです。
 普通に考えたらかなり難しいです。少なくとも私には無理。
 50万ポイントなら月8万円の収入!!とか言っていましたが、そんなに勧誘するなら他の仕事の方が楽そうです。確かに、一度勧誘した人がずっと買い続けてくれれば何もしなくてもお金が入ってくるんでしょうけど。
 
 第一部はそれなりに面白い健康トークでしたが、第二部はお金の話のみ。第二部を最後まで聞いたら帰してもらえなくなりそうだったので、「子供の昼寝の時間だから」と会場を出て他のママ友と一緒に帰りました。
 
 強引な勧誘は無かったので嫌な思いはせずに済んだのですが、子供には可哀想な事をしてしまいました…。
 会場にはサクラっぽいおばさんも数人いたんですが、結局の所これってマルチだったんでしょうか?

■あるしーさんから、3回目の投稿です。ありがとうございました。
 
■とりあえず、ナチュラリープラスといえば、マルチ商法ですね。悪徳マニア的には有名な会社です(苦笑)。
 
 ただ、「マルチ商法」というのは通称で、特商法での規制対象としては「連鎖販売取引」と呼ばれています。以下、経済産業省のサイトより引用いたします。

特定商取引法では、連鎖販売業を次のように規定しています。
(1) 物品の販売(または役務の提供等)の事業であって
(2) 再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を
(3) 特定利益が得られると誘引し
(4) 特定負担することを条件とする取引(取引条件の変更を含む。)をするものをいいます。
 また、上記(1)〜(4)に該当する取引を連鎖販売取引と言います。
 
 具体的には、「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」とか「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料がもらえます」などと言って勧誘し(このような利益を「特定利益」と言います。)、取引を行うための条件として1円以上の負担をさせる(この負担を「特定負担」と言います。)場合であればこれに該当します。
 実態はもっと複雑で多様な契約形態をとっているものも多くありますが、入会金、保証金、サンプル商品、商品等の名目を問わず、取引を行うために何らかの金銭負担があるものはすべて連鎖販売取引に該当します。 (特定商取引とは 4.連鎖販売取引より

 で、「マルチ商法」という言葉は既に現在ではネガティブなイメージが纏わりついているため、従事者は「MLM(マルチレベルマーケティング)」「ネットワークビジネス」「ネットビジネス」などなど、一見そうとわからないような名前で呼びたがります。そこに「ねずみ講式販売方式」「マルチまがい商法」まで加わると、さっぱり訳のわからない状況になりますが、
基本的にすべて同じものを指すと考えて構わないでしょう。法律上の正式名称が、「連鎖販売取引」なんですね。
 法律によって、厳しい規制がかけられていて、きちんと法律を守って商売をする限りは殆ど儲からない、難儀な商法なんです。
 
 ちなみに、どのような規制がかけられているかといえば、
 
勧誘に先立って、事業者の氏名(名称)を告げなければない
勧誘に先立って連鎖販売取引の勧誘をする目的である旨を告げなければない
勧誘に先立って、販売しようとする商品(役務)の種類を告げなければない
・事実と違うことを告げてはならない
・わざと事実を伏せてはならない
・強引に脅したり惑わしたりしてはならない(←長時間の勧誘なども、これにあたります)
・勧誘目的を隠して呼び出した場合に、公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘しない
・広告をうつ場合は、商品(役務)の種類、特定負担の内容、特定利益の計算方法、大元の会社(統括者)の名前、代表者名、住所、電話番号、商品名を表示しなければならない
・電子メールでの宣伝は、上記に加えて統括者の電子メールアドレスを表示、相手方の承諾が無い場合はメールの件名欄の冒頭に「未承諾広告※」をつける
・誇大広告(「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」)は禁止
契約の締結前には、当該連鎖販売業の概要を記載した書面(概要書面)、契約の締結後には、遅滞なく、契約内容について明らかにした書面(契約書面)を渡さなければならない(書面の内容については連鎖販売取引 書面の交付を参照のこと)
* 消費者は、特商法的に正しい書面を受け取ってから20日間以内は、無条件解約(クーリングオフ)できる
* クーリングオフ妨害がなされた時は、20日間を過ぎてもクーリングオフできる
* 中途解約の場合、条件によっては商品販売契約も解除できる(条件については連鎖販売取引 中途解約・返品ルールを参照のこと)
 
 概要書面や契約書面に必要な内容まで書き出してしまうと、上のリストが二倍のボリュームになってしまうので、詳しくは「経済産業省」「特定商取引法とは」を見てください。とにかく、これでもか、これでもか、と細かい規制が設けられています。これだけの決まりごとを守らないとトラブルになってしまう、ということなんです。
 あるしーさんの仰るとおり「他の仕事の方が楽そう」ですよね・・・。
 
■「小さい子のいるママでもできる仕事のセミナーにみんなで行きませんか?」というメールでのお誘い、という時点で、いきなり法律違反のブラインド勧誘ですからね・・・。
 まぁ、でも、
「世間的にはマルチ商法って言われている連鎖販売取引の会社の、ナチュラリープラスの勧誘をしたいと思うから、皆で来てくれない?」
 なんて誘っても、まず承知する人はいないでしょうし、来て欲しいからって「絶対儲かるのよ」なんて言うのも法律違反だし・・・やっぱり「他の仕事の方が楽そう」です。
 
■ナチュラリープラスという会社やその商品については、「苦情の坩堝」というサイトに詳しい記事があります。
「苦情の坩堝」のメニューページの上部フレームから、トラブル・製品別の「な」をクリックすると、左フレームに「な行」の会社名一覧が出てきますので、そこから「ナチュラリープラス」を選ぶと、該当ページが表示されます。沢山の識者の方々の書き込みがまとめられていますので、是非ご一読ください。
 
■当サイトに寄せられた、マルチ商法ネタの記事の一覧は、「体験談総目次 マルチ商法」にあります。ご参考にどうぞ。

(2005.10.13)
(参考)
この他の、あるしーさんの投稿は以下の通りです。
ピロンちゃん特集・機械名、遂に登場!
新聞の勧誘・腹立つ切り返し