■ペンネーム「魚の目」さんからの投稿です。
ちょっと古い話で恐縮です。
柄にもなく自分の書斎を持っていますが、そこにはインターネット接続(当時はADSL)の関係上電話親機が置いてありました。3年ほど前の土曜日の気だるい午後のことです。
電話が鳴りました。ナンバーディスプレーを見ると隣のT市の番号ですが、知らない番号です。そのころはもう非通知着信拒否にしていました。
「ご主人様ですか? こちらシスコムと申しますぅ。」
お、あのシスコムか(趣味の関係上、よく知っている会社です)。
「今日はご自宅のエアコンのお掃除を1台1,000円という格安でお任せ願いたいと思って、お電話しましたぁ」
あくまでも明るく健康そうな若い女性の声でした。
ちょうどいい暇つぶしが向こうからやって来てくれました。典型的なアポ取りパターンです。
「おお! あの有名なシスコムさんですか!」(演技たっぷり)
電話の向こうのお嬢さん、思わぬリアクションに感激したのか、いきなりハイトーンで、
「はい! あのダスキンさんとも提携していまして!!」
オレ、聞いていないよ、そんなこと・・・。第一、真に受けるなよな。
「あの、エアコン掃除が終わると40万円もする馬鹿でかい外国製の掃除機を持ち込んで売りつけるんですってね?」
早すぎる突っ込みにお嬢さんのトーンがとたんに下がりました。
「ハァ・・・、ご希望があればご紹介を致しますがぁ・・・」
「かなり強引なやり方でデモを見せて、契約を急がせることで有名な会社さんなんですって?」
ますますトーンダウンしたお嬢さん、まだテレアポを始めて間もないのでしょうか、早くもうなだれている様子が(見えないけど)分かります。
「あのぉ、そのお話はどこでお聞きになったのでしょうか」
「先日行政側から業務改善勧告が出ているのを知らないんですか?」
これは本当です。T都生活文化局のサイトに社名入りで出ていました。これはすぐに当時悪徳商法マニアに知れ渡ったニュースです。
「あなた、ご希望があれば掃除機の紹介をする、って言いましたよね? あの掃除機はエアコン掃除とは全く関係ないものですが、お家の人がその場にないその馬鹿でかい掃除機にどうしたら興味を持つんですかね?」
「うーん、そうですね・・・。取り合えず持ち込むんだと思います」
取り合えず、ではなく最初から意図的に、なんですがね。
そりゃ外に止めた車に置きっぱなしじゃしょうがないけど、あのデカイ機械をエアコン掃除と称して居間等に持ち込むのはもともとかなりの無理がある。それとも主婦が、「この機械、まったく使わなかったけど、何に使うものですか?」って質問をさせるためかい?
「まだ同じ事をやっているんですか、ん? あなたの会社は」
「どーも失礼しました・・・」と、さらに萎えた声で電話が切れました。
テレアポ電話があったらあれこれいじってやろうと考えていたのに、いざ電話があるとなかなか思うようには出来ませんでした。反省。
今から考えると業務改善勧告が出た直後で、テレアポさんにはまだ徹底していなかったようです。ちなみにシスコム社のサイトには現在この掃除機(スェーデン製とか)は悪名高い浄水器と共にもう掲載されていません。
■結構なご趣味で(笑)。いや、思いっきり同好の士の私が言う台詞じゃありませんね(笑)。
■さてさて、先日ブログで「面倒なトラブルを避けたいので、社名は出しません」なんて書いてた私ですが、この記事に関しては、もうあちこちで公表されまくっている事実ですので、大手を振ってドーンと晒します。チキン野郎って呼んでください(笑)。野郎じゃないけど。
というわけで、東京都生活文化局の記事をご紹介。「訪問販売で高額な浄水器や掃除機を販売する事業者を行政処分」ですね。
って、あれ? おかしいぞ? 当時は確かに会社名がはっきり出されていたのに、イニシャルになっている。
そんな時の強い味方。Internet Archiveから引っ張ってきました。「Internet Archive版 訪問販売で高額な浄水器や掃除機を販売する事業者を行政処分」はい、こちらにはしっかりと該当会社名が残っています。
まあ、シスコム社は今年の三月に社名変更したそうですし(投稿の掲載が遅くなってスミマセン)、社名にこだわらずに手口で判断! ということなんでしょうけどね。
東京都のページには、行政処分の対象となった「不適正な取引行為」についての詳しい記述がありますので、以下に引用いたします。
【資料】
指示及び勧告の対象となる不適正な取引行為の例
(1)浄水器
・消費者の自宅に電話で「環境にやさしい洗剤を試してアンケートに答えてください。」「商品は販売していません」等と言って、訪問のアポイントメントをとった。
条例25条1項1号施行規則6条1号(販売目的隠匿)
・コップに水道水を汲み、その中に試薬を入れて水が黄色になると、「プールの塩素に近いですね。毎日、プールの水を飲んでいるのと同じです」等と言った。
・「このような危険な水道水を子供に飲ませると健康に良くない」等と3時間以上にわたり説明した。
条例25条1項2号施行規則7条8号(心理的不安にさせる)
・「カビキラーが入った水を飲んでいるのと同じです。カビキラーが入った水でお米や野菜を洗いたいですか。赤ちゃんに飲ませられますか」等と言った。
・試薬で黄色になった水に指を入れさせ、その水が透明になると、「手が塩素を吸収したからです」とか、「一番風呂には塩素がいっぱいあり体に吸収されている」等と言った。
・「トリハロメタンは沸騰しただけではかえって増えます。ポットに入れた水は沸騰すると保温になりトリハロメタンを増殖させているのと同じです。癌になる場合もあります」と言った。
・「今は販売していないが、特別に販売する。」と言った。
法6条1項(不実告知)
条例25条1項2号施行規則7条8号(心理的不安にさせる)
・「今日、契約したら2万円値引きしてシャワーヘッドも付けます。今日以外だと値引きはできない」等と言って、365,000円の浄水器の契約を締結させた。
法6条1項(不実告知)
条例25条1項1号施行規則6条4号(有利誤信)
(2)掃除機
・消費者の自宅に電話で「1,000円で4カ所掃除をするキャンペーンをしています。物は販売していません」等と言って、訪問のアポイントメントをとった。
条例25条1項1号施行規則6条1号(販売目的隠匿)
・掃除機のノズルに黒い布をつけて、吸引して黒い布についたホコリやダニを見せ、「ダニは人間の汗や皮膚のカスを食べているので毎日使う布団に一番多い。子供は体が小さいのでアレルギーを起こす確率は高い」「このままでいるとお子さんのアレルギーがひどくなります」等と言った。
条例25条1項2号施行規則7条8号(心理的不安にさせる)
・「特別に社員割引で販売する。今日契約する人しか割引しません、内緒ですよ」等と言って395,000円の掃除機の契約を締結させた。
法6条1項(不実告知)
条例25条1項1号施行規則6条4号(有利誤信)
「法」とあるのは「特定商取引に関する法律」のことで、「条例」は「東京都消費生活条例」です。元の資料は「不適正な取引行為」と「根拠法令」が表になっていたのですが、それを箇条書きに改めたついでに、赤字効果も追加しました。悪しからず。
たとえどんなに良い商品でも、売り方に問題があればこういう事になる、という良い例かもしれません。ひとえに、被害に遭われた方々が行政に働きかけたお陰だと思います。
やっぱり、悪いことは悪い(勿論、良いことは良い)と声を上げることは重要なんだなあ・・・と。
そんなこと言ったって、会社名変えて同じ様なことやってるんじゃないの? とお思いの方、仮にそうだとしても、ホラ、社名変えたら、パンフレットから名刺から判子から、色々と余計な出費が増えるわけですから、それなりに会社は痛手を受けることになるんです。
それで反省してくれたらよし、そうじゃなかったら・・・通報して、周りに警鐘を鳴らして・・・と、また同じことを消費者も繰り返すまでです。まさしく「蟻が一粒の砂粒を運ぶように」。・・・よし、キレイにまとまったぞ(笑)。