「未知への旅人」

主演:三浦友和・原田美枝子・タカツカヒカル
監督:佐藤純彌
発売:東映株式会社

 これは平成6年6月の劇場公開作品で、高塚光氏のセミドキュメントです。彼は東急エージェンシーという会社に勤める平凡なサラリーマンでしたが、38歳のときに母親の危篤に立ち会ったときから人生が変わってしまいました。
 それまでに特に変わった体験をしたことのない彼でしたが、母親が心筋梗塞を起こし心臓破裂したときに、それを手をかざすだけで直してしまったのです。これだけならば単なる親思いの奇跡の息子ということで終わりでした。しかし母親を直した話が会社や友人に広まり、それを女性週刊誌のカメラマンが聞きつけて「再生不良性貧血を患っている姪を見てくれないか」と頼んだことから人生が一変します。 自分の能力に半信半疑ながらも高塚氏は試してみて、実際にこの現代医学では完治は困難という病気を治してしまいます。そのことが女性週刊誌の記事になってからは、毎日たくさんの人が彼のゴッドハンドパワーを求めて会社に押し寄せました。
「きた人を追い返すわけにもいきません。それで会社の片隅を借り、仕事の合間をぬって手かざし治療の真似事をはじめたんですが、そんなこんながまたマスコミに火をつけて、どんどんと患者が増えていったんです。」
「会社じゃどうしようもなくなって、だからといってほうっておけなくて、自分のお金で事務所を借りて、受け付けをおいて、ハッと気がついたら、自己嫌悪とカラッポのサイフだけ。何でこんなことをやらなければいけないのかと思いましたね。」
 彼は治療に対してお金をもらっていません。超能力は得たものの、それで手にしたものといえば、多忙な時間と、「何で自分にそんな能力が」という理不尽さからくる自己嫌悪だけ。それから逃れようとしてすさんだ生活が続いたといいます。そんな風に高塚氏が落ち込んでいたときに、奥さんが彼に同情するどころか、ふてくされるように言い放ったそうです。
「あんたの罰よ! いままでいいかげんに生きてきた罰が当たったのよ。」
 彼の人を直す能力が、映像や音にもある程度記録されるということが、いろいろな学者の実験によって明らかになっています。つまりこの映画は、現存する類まれな超能力者のセミドキュメントだというだけではなく、見る人の体にもよい映画だということです。


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