電気の森 The Forest Of Electric + Electronic Technorogy by Otoshibumi Craft Lab [Official] [2000]

 

電気用図記号 ZukgA-004

JIS C 0617 「図記号の使用方法」

Ver.1.1  2000/09/01版

to Denko


 IEC規格に整合化したJIS電気用図記号。何が知りたいのかといわれれば、その使用方法です。JIS C 0617シリーズを眺めたとき、JIS C 0301-1990とは全く違っている表記に迷い、自分の使いたい図記号がどれに相当するのかを悩むことになります。
 しかし、これらの問題も図記号の使用方法がわかれば、解決します。ということで、この節では、図記号の使用方法について考えます。
 注意があります。この説の内容は、あくまでも私の私見です。


 それでは、JIS C 0617の使用方法について、順をおって考えていきます。

1. JIS C 0617シリーズは、ピュアなIEC規格である

 JIS C 0617シリーズを使うにあたって、「今回、制定された日本工業規格の電気用図記号JIS C 0617シリーズは、完全なIEC規格である。」という認識が必要です。我が国独自のものでなく、国際規格なのです。
 日本で作る規格であれば、日本の有識者の方に集まっていただいて、日本社会とって有意義な内容に仕上げていただくことができます。JIS C 0301-1990まではそうしていました。しかし、今回の制定のもとは、国際規格であって、各国の代表者が、各国のお家事情を考慮しながら検討されていく規格ですから、融通の利かないものになることは予想できます。もし、JIS C 0617の中に必要とする図記号がなければ、日本を代表する方にIECにいって検討していただいて図記号を新たに加えてもらわなければなりません。
 いろいろな問題が生じることを覚悟の上で、日本工業規格は、IEC規格のIEC 60617シリーズを日本のJIS電気用図記号として採用したのです。そして、重要なことは、JIS C 0301-1990が廃止になったのです。

 

2. JIS C 0617の使用方法

 JIS C 0617シリーズでの図記号の使用方法については、「JIS C 0617-1:1999 電気用図記号 第1部:概説」の「7.図記号の使用方法」に記載があります。この中に、次のような記載があります。

図記号要素、限定図記号及び一般図記号のリストは、可能な限り完全なものにしているが、組合せ図記号の例示数は、わずかである。特定のデバイス又はデザインを表示する図記号が、この規格に見当たらない場合は、この規格に公表されている図記号を適切に組み合わせて、必要な図記号を作成することが望ましい。

という記載があるものの、これ以上の記載がありません。工業技術院の担当の方に確認させていただいたのですが、上記以外の場所で、図記号の使用方法について述べているところはないとのことです。また、このことに関する特別な解説した出版物も現在(2000/8/25)のところないそうです。

 JIS C 0617においては、一般図記号に図記号要素を組み合わせることによって、必要とする図記号を作成します。しかし、その方法の詳細については述べられていないのです。組み合わされた図記号も用意されているので、ある程度の傾向は知ることができます。しかし、組み合わせた図記号の例は多くありません。組み合わせた図記号の例の中に使用したい図記号があればラッキーですが、もし、自分の必要とする図記号がなくて、傾向にもとずいて新しい図記号を作ったとき、その図記号が本当に正しいかどうかという確信が得られないのです。ここで、どうしたらいいのか?という疑問が生じるのです。

 

3. IEC規格への整合化に向けての検討はなされていないのか?

 日本のJIS電気用図記号が変わる。このとき、IEC規格への整合化に向けての検討はなされていないのか?と言いたくなります。私は、JISの制定に携わっているものではないので、どのような検討がなされてきたのかを知ることはできません。また、詳細な資料を入手しているわけでもありません。素人的な取り組みとしては、過去のJISを調べることしかできません。

 私の基本的な意見として、「IEC規格への整合化に向けての検討はなされていないのか?」という問いに対して、「検討はなされている」と答えてよいと思っています。
 JIS C 0301-1990では、IEC規格への整合化が行われています。IEC規格へのJIS C 0617-1の基になっているIEC規格は、IEC 60617-1:1985ですから、JIS電気用図記号が大幅に改定された1990年、JIS C 0301-1990の中で、上記の解釈を行っているはずです。
 つまり、1990年以前の日本の現状とIEC規格への整合を考えたのがJIS C 0301-1990だと考えたのです。だとすれば、その解釈が、今後、日本でJIS C 0617シリーズ使用方法の1つの指針となると考えています。「一つの指針」といった理由は、JIS C 0301-1990が廃止されているわけですから、1990年当時の思想が、今のJIS C 0617に反映されているわけではありません。

 

4. JIS C 0301-1990におけるIEC規格への整合化

 話を1990年に戻します。現在のJISではないという認識をお願いします。
 JIS C 0301-1990では、IEC規格との整合化を図るために、多くの工夫がなされています。今までのJIS電気用図記号をIEC規格に導く方法として、図記号系列1(IEC系列)、系列2(我が国独自のもの)を用意しています。また、我が国独自の図記号をきちっと定め、その利用を許可しています。つまり、従来の慣習上削除すると不都合のあるものは残す処置がなされたのです。そして、完全整合性について猶予期間を考慮しているのです。

 JIS C 0301-1990には、IEC規格との関連性について、以下のような記載があります。

(2)各図記号には、IEC規格との関連を次のようにまとめた。
 (a) IEC規格に完全に一致している場合。
      図記号の下にIEC No.を表示してある[ただし、IEC No.は、図記号ではない。]。
 (b) IEC規格の許容範囲内で図記号の一部を変更している場合。
      図記号の下にIEC No.を括弧付きで表示してある[ただし、(IEC No.)は、図記号ではない。]。
 (c) IEC規格の記号要素と、基本図記号を組み合わせて図記号を作成した場合。
      図記号の下に(IEC)と表示してある[ただし、(IEC)は図記号ではない。]。
 (d) IEC規格になく我が国独特のものは、図記号だけとしてある。

この記載とともに、その例が挙げてあります。

以後の説明で、上記4つのタイプの図記号を個々に考えていきます。上記の表現の仕方ですと煩雑になりますので、ここで用語の定義させていただきます。以後(a)に相当する図記号をタイプA(又は、Type-A)、以下、(b)がタイプB(又は、Type-B)、(c)がタイプC(又は、Type-C)、(d)がダイプD(又は、Type-D)とします。

 

5. JIS C 0301-1990の図記号は、
          JIS C 0617のどの図記号に置き換えればいいのか

 JIS C 0617を使用する場合での疑問の一つとして、「今まで使っていたJIS C 0301-1990の図記号が、JIS C 0617シリーズのどの図記号に相当するか?」と言うことを考えます。
 この場合、JIS C 0301-1990に記載されているタイプA、タイプBが参考になります。タイプA、タイプBについては、図記号のNo.が記載されていますので、これらを手がかりに、JIS C 0617の図記号をピックアップすればいいのです。

 このとき、第1の注意点として、両JISの用語に注意すべきです。JIS C 0301-1990に記載されている「名称」とJIS C 0617の名称は異なるのです。例えば、JIS C 0301-1990のII.3.1.2に記載されている「単相変圧器(2巻線)」は、JIS C 0617-6の06-09-01に相当します。「2巻線変圧器」と名称が変わります。日本での名称と交際規格での名称の違いです。IEC規格の用語(名称)が、どれくらいの分類範囲を示すかわわかりませんが、少なくとも今まで使っていた図記号をJIS C 0617の図記号に置き換えることはできるのです。あわせて、「名称」も変更し、英語も覚えれば国際人になれます。

 第2の注意点は、JIS C 0301-1990のタイプA、タイプBの図記号でも変更があることです。
 1996年5月、IEC 60617は、2値論理素子、アナログ素子を除く主要部品の全面的改正が行われていることです。JIS C 0301-1990は、80年代のIEC規格をベースにしていますから、変更を考慮する必要があります。1996年の変更は、現在のIEC 60617シリーズです。
 図記号をチェックするにあたって、ちょっとした形の変更にも注意が必要なようです。図記号のコンピュータ支援製図システムへの対応もしていることから、積極的にCADを利用してはどうでしょうか。

 

6. 我が国独自の図記号が消える

 JIS C 0301-1990では、IEC規格との整合化を図るために、多くの工夫がなされています。今までのJIS電気用図記号をIEC規格に導く方法として、図記号系列1(IEC系列)、系列2(我が国独自のもの)を用意しています。
 JIS C 0301-1990の廃止によって、系列2は消えることになります。系列1(IEC系列)に一本化されたのです。
 JIS C 0301-1990において、系列2の図記号だけが存在するケースは、ざっと見たところありません。系列2の図記号が存在する場合、必ず系列1があり、タイプA、タイプB、タイプCの図記号(IEC規格対応)が用意されていますので、迷うことはないと思います。

 我が国独自の図記号は、系列2で示されているものと、そうでないものの2つのタイプに分かれます。問題になるのは、後者の場合です。つまり、こういうことです。
 「今まで使っていた図記号が、我が国独自のものだったので消えてしまいました。どうしたらよいでしょうか?」
という疑問になります。

 この質問は、次のような単純な質問に置き換えられますので、挑戦してみて下さい。

 以下に示す図記号は、JIS C 0301-1990において、我が国独自のものでした。JIS C 0617では、どの図記号に相当しますか?
II.3.1.2   単相変圧器、(単相3線式に用いるタイプ)
II.5.1(a)  計器用切換開閉器(電圧回路用)
II.5.1(b)  計器用切換開閉器(電流回路用)
II.9.1    進相コンデンサ
II.3.2.18  コンデンサ型計器用変圧器
II.5.3    試験用端子

私の推論による答えは、「解決法は、今のところない」です。
 理由を説明します。もし、これらの図記号に相当するものが、JIS C 0617にあるのなら、JIS C 0301-1990を作ったときに系列2として扱い、今回削除する方法を採られているはずだと考えたのです。JIS C 0301-1990を作った方々は、IEC規格の中に上記のような図記号に相当するものを発見できなかったということです。
 しかし、JIS C 0301-1990を作ったときのIEC 60617が、1996年に全面的な改訂をしています。かすかな期待としていえることは、上記の図記号に相当するものが追加されたのではないか?ということです。この件に関しては、今のところ全くわかりません。

 この疑問についての正式な答えが是非ほしいのです。今のところ、方針が示された文献は見たことがないのです。この問題の解決方法をご存じの方は、是非、ご連絡下さい。よろしくお願いします。

 

7. JIS C 0301-1990の思想は生かせるか?

 JIS C 0617においては、一般図記号に限定図記号などを組み合わせることによって、必要とする図記号を作成します。しかし、この方法は詳しく示されていません。この問題の解決策をJIS C 0301-1990に求めてみてはどうでしょうか?
 JIS C 0301-1990は、IEC規格への整合化へ向けて取り組んだ規格であり、日本のお家事情を反映させたところに注目しました。JIS C 0301-1990のタイプBとタイプCに注目して、組合せ方法を考えていきたいと思います。

 

 最初に、タイプBの図記号について考えます。タイプBの図記号は、「IEC規格の許容範囲内で図記号の一部を変更している場合」の図記号です。JIS C 0301-1990では、図記号の下にIEC No.を括弧付きで表示してある図記号です。

 JIS C 0301-1990では、多くの「基本図記号」が用意されています。基本図記号に、「特性量記号」や「補助記号」を組み合わせていろいろな機器、デバイスを表すのです。基本図記号は、それ自体で一般的に使用される図記号です。特性量記号や補助記号は、基本図記号と組み合わせて使用し、基本図記号の意味を補足する図記号です。

 JIS C 0301-1990では、多くの基本図記号を作るため、「IEC規格の許容範囲内で図記号の一部を変更して」図記号を作っています。この図記号がタイプBです。
 例えば、変圧器の単線図用図記号は、JIS C 0617の「第10節 個別の巻線を使用する変圧器の例」から、導体数をはずしたものを用意し、これをJIS C 0301-1990の基本図記号としています。(詳しくは、「ZukgA-005 変圧器に関する図記号」を参照して下さい。)

 JIS C 0301-1990の特徴は、基本図記号を数多く用意したことにあります。多くの基本図記号を用意したことは、機器装置を明確に分類したこと、図記号の組合せ方のルールもシンプルにしたことなどから混乱を避けることができ、親切な規格であるといえると思います。

 

 次に、タイプCの図記号について考えます。タイプCの図記号は、「IEC規格の記号要素と、基本図記号を組み合わせて図記号を作成した場合」の図記号です。JIS C 0301-1990では、図記号の下に(IEC)と表示してある図記号です。

 図記号の組合せ方は、タイプCを参考に行うというのはいかがでしょうか?我が国独自であるかのしれませんが、当時、JISの制定に携わった方のアイディアだと考えるのです。
 ただし、条件があります。タイプCの図記号より、タイプAの図記号を優先して使用することを忘れてはならないと思います。いくらうまく組み合わせてある図記号でも、JIS C 0617の図記号を優先するのは、将来に向けての当然なことと解釈しています。

 例として、II.3.2.2 単相計器用変圧器(2巻線)の単線図用図記号についての考えを示します。この単線図用図記号には(1)と(2)の2種類の図記号が用意されていて、(1)がタイプA、(2)がタイプCです。このとき、(1)のタイプAを採用すべきだということです。JIS C 0301-1990でも以下のように明記されていました。

(3)2種類以上規定されている図記号の優先順位について。
 図記号中
  (1)、(2)と記載したものは(1)を推奨する。
  (a)、(b)と記載したものはいずれを使用してもよい。
 同一図面においては、同じ機能を表す図記号を混在して用いない。

 

 最後に、3つもタイプの関連性について考えます。
 タイプBは主に「基本図記号」を作成しています。そして、タイプCによって基本図記号に特性量記号や補助記号記号を組み合わせることにより、IEC規格の例で示されるようなIEC規格に完全に一致しているタイプAを作り上げているのです。
 非常にうまいできた原理だと思います。

 ここで述べてきた三つのことは、「JIS C 0617の使用方法がよくわからない。」という問いに対する解決法の一つです。JIS C 0301-1990はその改訂時に、IEC規格に歩み寄ったのです。ですから、今回の改訂においては、JIS C 0301-1990の思想が大変参考になるという前提での話なのです。「いや違う。JIS C 0301-1990は廃止されたのだ。」といわれれば、これまで述べてきたことは白紙に戻るのです。 

 


 Version情報

Ver.1.1   2000/09/01版 
 図記号の使用方法についてのみ独立させたコンテンツです。私の私案ですので、あくまでも参考としてご利用下さい。
Ver.1.0   2000/08/15版 
 とりあえず、作り上げることにしたコンテンツです。次回からは、今ページが分割されていきます。

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