ベルガマ 大人の会話
おじさんの名はイスマイル。ひげが立派なトルコの紳士で、クズルアヴル(赤い館)と名付けられた遺跡の管理人。館の前で休憩していた私に、「(管理室の)中にお入りなさい」と声をかけてくれた。
オフシーズンで観光客がほとんどいないから暇、という理由もあるだろうが、小さな日本の娘!に、トルコの大人たちはいつも優しく手をさしのべてくれる。
おじさん「すごく寒そうに縮こまっているから呼んだんだよ。」
私「アクロポリスに行ってたんだけど、風が強くて冷えちゃった。」
私の記憶ではこのように会話したことになっている。
が、英語名詞をほんの少し交えたトルコ語で話すおじさんと
本当にわずかなトルコ語名詞を交えた英語と日本語で話す私。
形容詞や動詞はすべてジェスチャーであった。
それでも2人はチャイ(トルコ紅茶)を飲みながら、家族やベルガマの歴史などをアクティブに語り合った。
そろそろお昼の時間だった。おじさんは「一緒に食べよう」と、自分のお弁当をわけてくれた。大きなプラスチックのタッパウェアには、ジャガイモとトマトと豆の煮込み。小さなタッパにはオリーブ。ビニール袋から出てきたのはフランス風のパン。チャイは飲み放題である。
チャイスプーンで豆をよけながら(きらいだから)食べたジャガイモとトマトは、オリーブオイルがきいててうまい。奥さんの手作りなのだろう。
トルコのパンは、いつ焼いたのかわからないものでも実においしいので、バターやジャムは必要ない。
食べている間はジェスチャーができないので静かなものである。それでも同じタッパの飯を食えば、会話しなくてもいい親近感がわくものである。
あたりまえだがあっという間にお弁当を食べ尽くし、「おじさんは足りたのだろうか……?」と心配になりながらも、それを説明できないまま、食後もチャイをさんざん飲んで話していた。
そのとき、おじ…お兄さんは私より1歳年下であることが判明した。
トルコ人は年より老けて見えることが多く、日本人はとんでもなく若く見られることが多い。
私もびっくりしたけど、彼は死ぬほど驚いていた。
1995/1/1