ささやかな奇跡の御裾分け

マリオネット 湯淺 隆(ポルトガルギター)

2008年 7月19日
マリオネット・マンドリンオーケストラ2ndコンサート
当日パンフレットに寄稿


約一年前、この会場から順風満帆に出発したマリオネット・マンドリン・オーケストラが、再びこの場所で二回目のコンサートを開催する。まずは、この一年間の活動の着実な成果として、心よりお祝いを申し上げたい。マリオケの皆さん、本当におめでとうございます!◆マリオケは言わずもがなマンドリンとギターと音楽をこよなく愛するメンバーで成り立っている。そして周知の通り、演奏曲目は「マリオネット」の楽曲のみ。私の立場から言えば、ポルトガルギターと不即不離の自身の楽曲がアレンジされ、100人近いギタマンオケと50人のコーラスで演奏されるだけで驚きなのに、今日の会場メイシアター大ホール約1400の座席は、(この原稿を書いている1ケ月前の時点ですら)ほぼ満席と聞く。それだけ多くの人々が、各々の貴重な時間を割き、今日ここに一同に会するのだ。さてもこれは、ほとんど奇跡的な事としか言いようがない。再度、溢れる思いを込めて申し上げたい。マリオケの皆さん、今日は本当におめでとうございます!!◆「二回目のコンサートの開催」という事…。つまりマリオケは、今日から名実共に「公」の歴史を歩み始めたわけだ。歴史の創成期は、今後発展するであろう未来図を孕んで、その現在がある。一年前の初舞台と今日の舞台を結ぶ導線は、今後マリオケが歩むであろう歴史の重要な指針だが、私は今回のプログラムの充実ぶり(内容・構成・演出すべて確かな進化を遂げている)を見て、マリオケの歴史がさらなる発展を遂げることを疑わない◆話題が横行し恐縮だが、音楽の「芸」という「術」は、いささか気まぐれで不完全なタイムマシンのような機能を持つのではないかと思う。音の中で遊び、音の行方に身を投じれば、今の自分からかつてあった過去の自分へ、あるいは、将来の自分へと、束の間「ここ」ではない「どこか」を彷徨うように旅する事ができる。また、まだ見ぬ故郷を懐かしむように、その孤愁(サウダーデ)に満ちた旅情に身を委ね静かに黙すれば、私たちは音楽を愛する未知の友たちと、あるいは見知らぬ隣人とですら、特別な「時」を共有することも可能となる。そして、「ほとんど奇跡的な事としか言いようがない」今日の日、私はその「時」がこの会場全体に出来(しゅつらい)するのではないかと、今から心ときめいている◆「今日の朝の目覚めは奇跡です」(マザー・テレサ)まさにその言葉通り「今日」は奇跡の一日。だが、この福者の言葉の真意は、私たちは日々生きているだけで、無数の奇跡的な尊い命と共にあるということ。今日のマリオケのささやかな奇跡も、言わばそれらの日々の奇跡と何ら変わりはない。この公演が終われば、この会場の全員が日常に戻ってゆく。願わくは、マリオケのささやかな奇跡が各々の日々と共振し、日常に溢れる奇跡を今一度見つめなおす機会となれば、今日の日はさらに意義深いものとなり得るのだが◆最後になりましたが、コーラスの助演を快くお引き受けいただいた「YWCA千里合唱団」の皆様に深く感謝致します◆そして、ご来場いただいた皆様方、今日はお忙しいところ本当にありがとうございました。どうぞ、ごゆっくりとお楽しみ下さいますよう◆さあ、マリオケの皆さん、準備は整いましたか?では、奇跡の演奏をよろしくお願い致します!!!