マリオネット ツアー日記1

(98年5月23日〜6月2日)


マリオネットは、5月23日から、関東方面のツアーを始めました。
このツアーの様子を掲載いたします。


5月23日(土) 晴れ

 ニューアルバムの録音も終了し、いよいよ今日から、パントマイム清水きよしさんとのジョイントのツアーが始まった。
 午前8時に海井宅に集合、湯淺の車に楽器と10日間の荷物を積み込み、一路東上。初日の今日は山梨県の河口湖円形劇場での公演。名神高速から中央自動車道というルートを交代で運転し、午後2時に劇場に到着。
 この河口湖円形劇場では、昨年夏にも清水さんと公演を行い、今回は2回目となる。ここは現在は自治体が管理運営しているが、元々は個人が御自分の敷地内に建てた小規模ホールであり、これを市に寄贈したといういわくがある。ところが、残念ながらこのホール、ほとんど活用されていない。数年間は殆どほったらかし状態だったとのこと。本当にもったいない。
 清水さんやスタッフの皆さんは既に会場入りし、照明のセッティングなどを行っている。照明は、清水さんの公演をずっとやっておられる辻本さんが、今日も東京から器材持ち込みで来られている。辻本さんはその世界では大変有名な照明家で、いつもすばらしい照明を作っていただき、勉強させていただくことが多い。
 4時からゲネプロ(通しリハーサル)を行い、5時終了。本番前に、劇場スタッフ心尽くしのカレーで夕食。6時半開場。狭いスペースでもあり、この日は約50名の観客。さすが観光地ということもあり、わざわざ遠方から来られた方も多い。7時開演。途中ティータイムの休憩を挟み、午後9時20分、無事に終演。
 終演後、会場にて関係者・スタッフで打ち上げ。その後、全員で温泉に入ってお開き。清水さんと辻本さんは東京へと帰られ、我々はその日は河口湖のホテルに宿泊。


5月24日(日) 曇りのち雨

 今朝は朝からどうも天気がすぐれない。10時にホテルをチェックアウトし、横浜へと移動。ところが、やはり御殿場へ出たあたりから雨が降り始めた。東名高速を走っている間、かなり激しく雨が降るも、横浜市内に入る頃には一応雨が上がり、ほっとする。
 向かう場所は、新横浜駅そばのOMという印刷工房。ここの一角をお借りして、横浜在住の知人であるS氏夫妻の主催で、マリオネットのプライベートコンサートを開いていただくのである。12時過ぎに会場入りし、荷物の搬入後、近くのうなぎ屋で昼食。1時半頃からセッティングとリハーサルを兼ねた練習を行い、2時半開場、3時開演。コンサートは和やかに進み、5時15分終演。お世話になった工房のスタッフや関係者を交えて、会場で簡単な打ち上げ。
 ところでこの工房の代表の尾崎氏は、みずからを刷り師と称する職人肌の方。お父さんが木版画家だった影響で、幼少から版画に親しみ、この道に進まれた。特にリトグラフやエッチングに力を入れておられ、若手の版画家や愛好家に、工房の設備を提供したりもしている。いろいろと版画に対する熱い想いなどもお聞きする。最後に仕事としてやっておられる、平山郁雄画伯の複製版画を拝見する。複製とはいえ、買えば1枚100万ではきかない代物。絵はもちろん、複製技術が何とも素晴らしい。その仕事の精密さに、驚きと感動を隠せない。良い体験であった。
 コンサート中にかなり激しく雨が降り始める。雨の中、荷物を車に積み込んだり運んだりは、本当にいやな作業だ。その後、S夫妻とその友人たちと共に、自由が丘の中華料理屋(上海料理)へ移動し、夕食。この間から上海づいている。神戸の愛園は、家庭料理の素朴さだったが、こちらはレストランの料理という感じ。やはり美味しく、満足する。夕食後、S夫妻と別れ、新宿のホテルへチェックイン。


5月25日(月) 曇りのち雨

 12時にホテルを出て、近くのとんかつ屋で食事をする。その足で、渋谷へ出向き、打ち合わせ。3時に打ち合わせを終え、吉田は弦を買いに行くということで別れ、湯淺と共にホテルへと戻る。
  6時半、再びロビーで待ち合わせ、ホテルを出る。実はこの日は、新宿ゴールデン街の「石の花」という店で、お忍びのライブなのだ。マリオネットがいつもライブをやる同じ名前の店が新宿3丁目にあるが、ここはそことは別の店である。このお店はそもそもライブをやるように出来ていない。何せ10人も入れば満席になってしまうのだ。東京に来たときにちょくちょくよる店で、マスターとの冗談話から、それならせっかく今日はオフだからということで、やらせていただくことになった。今回は、そういうわけで、店の常連さんの中で、マリオネットのファンや音楽好きの方だけにマスターが直接声をかけてお客さんを集めた。
  7時半頃、お客さんもぼちぼちそろい始め、ライブ開始。その後もお客さんがやってきて、結局座りきれず、立ち見も出ての盛況となる。私は店の中に入れず、店の入り口当たりでビールを飲みながらということになってしまった。
 終了後はお客さんも交えて、お決まりの飲み会となる。吉田がウォッカをぐいぐい飲んで、ブレーク。やたら陽気に喋りまくり、最期にはつぶれて寝てしまった。酒の強い彼には珍しい。とにかく楽しい一夜であった。


5月26日(火) 雨

 今日はオフ日。各自自由行動である。吉田は昨日の反動で昼過ぎまで寝ていたようだ。湯淺も昼はのんびり過ごしていたとのこと。私はといえば、昼間に2件ほど打ち合わせを済ませ、後はホテルで少々休憩。夕食後は、アンケートのデータ整理などをしながら時間をつぶす。
 9時半頃、湯淺から電話。某新聞社の記者とモツ料理屋にいるが、出てこないかとのこと。どうも料理を頼んだのはいいが、量が多すぎて食べきれず、助っ人がほしかったらしい。場所は、新宿5丁目の「赤提灯」というお店。行ってみると、なるほどすごい量。味は大変美味しい。しかしいかんせん量がすごすぎた。やはり食べきれず、残ってしまった分は、持ち帰りにしてもらった。皆さんも、もしモツ料理がお好きであれば、4〜5人で行かれることをお勧めする。
 その後、新宿3丁目のほうの「石の花」(昨日のお忍びライブとは別の店)に行き、持ち帰りのお土産をマスターに。マスター、モツが好物とのことで、おおいに気に入ってもらう。深夜1時半、ホテルへと戻る。


5月27日(水) 曇り

 午前10時にホテルを出発。車で横浜へ移動。
 吉田は、昨夜は大学時代の友人と、ホテル近くの私たちなじみの沖縄の料理とお酒の店「ぶうげん」へ飲みに行ったとのこと。つぶれた翌日にもかかわらず、元気である。それでも、一昨日の記憶はあまり定かではないようだ。
 さて、今日は3日ぶりに清水さんとのステージ。会場は、横浜STスポットという小さなアートスペースである。横浜駅のすぐ側、地元では小規模演劇や舞踏、パントマイムなどのメッカ的な所らしい。
 11時半に会場入りして、荷物を搬入後、軽く昼食。1時から軽くリハーサル。今日は2回公演で、午後3時に1回目のステージが始まった。5時15分終演。弁当で夕食の後、午後7時、2回目の公演が始まる。9時20分終演。バラシの後、引き上げ。
 ホテル到着後、ラーメンと餃子で一杯。


5月28日(木) 晴れ

 午前中は、各自、自由行動。私はといえば、午前11時、人形劇団プークの演出家・井上さんがホテルへ訪ねてくる。年内にプーク人形劇場でマリオネットのコンサートなどが出来ないかということで打ち合わせ。決定したら、このホームページでご案内します。
 昼食後、午後2時半、ホテルを出発して中野へ。今日の会場は、中野ZERO小ホール。さて、会場へ到着したところ、何と音響担当者がいないことが判明。仕方なく、私が会館担当者に器材等の確認をしながらセッティング。ところが、さらにリバーブ(残響装置)がないことが判明。明らかに主催者の手落ちである。会館の担当者と交渉して、大ホールにあるリバーブを借りることで話をまとめるが、あってはならない手違いに困惑、事無きを得てほっとする。
 いずれにしても、私がPAを担当することとなった。事前に事態を把握していなかったため、会場入りが遅く、初めての会場で慣れないこともあり、セッティングにも時間を要したが、何とか無事にサウンドチェックとリハーサルを終了。マリオネットのCD販売は、清水さんのスタッフにお任せすることになる。
 6時半会場、7時開演。9時15分、何とか無事に公演を終了し、肩の荷を下ろす。
 バラシ後、10時に会場を出て、ホテルに戻る。近くの韓国家庭料理の店に3人で食事に出る。大変美味しく、しかも安い。感激して店を出る。その後、近くのショットバーで一杯飲んで、帰りにゲーセンでゲームを楽しんだ後、お開き。


5月29日(金) 雨

 午前10時半、ホテルを出て、西新宿にある東京オペラシティーホールへ向かう。今日は、こちらにお勤めの知人S氏のご厚意で、ホールを見学させていただき、舞台で楽器を弾かせていただくことになっている。実際に演奏してみると、観客の入っていないホールは残響も深く、大変響きが美しい。キャパシティーが千六百人という大きな会場ゆえに、音量的にどうかと思ったが、撥弦楽器の小さな音でも充分な鳴りである。さすがに低音は少々淋しいが、高音の美しさは特筆すべきものがある。ポルトガルギターもマンドリンも思わず違う楽器かと思うほどで、楽器の魅力を再発見した思いだ。
 S氏と昼食を共にした後、江東区へと向かう。今日は深川江戸資料館小ホールでの公演。今日の公演は私設の福祉作業所であるネットワーク夢工房の主催で、売り上げの一部が、作業所建設の資金となる。会場となる江戸資料館そのものは、時間の都合で見学できなかったが、機会があれば、ぜひ見学してみたい。
 セッティングの後、午後6時半開演、8時半頃、終了した。バラシの後、主催者・スタッフと簡単な打ち上げ。その後ホテルへと引き上げ、近くの「ぶうげん」へと飲みに行く。深夜まで痛飲。


5月30日(土) 曇り

 午後2時、清水さんとスタッフが、ホテルまで迎えに来る。今日は千葉県の八千代市でのコンサート。場所が遠くてわかりにくいため、一緒に行くことにしたもの。首都高速から京葉道へと出て、午後3時半、目的の八千代に到着。
 今日の会場は、パフォーマンス21という小スペース。梶本さんという方が経営している学習塾の一角に設けられたアートスペースで、随分色々な公演をしてこられたそうだ。今日の公演はワインのサービス付(ポルトガルワイン)。ゆったりとした雰囲気で楽しんでもらおうという趣向である。入り口から会場までの館内にランプを配置して、暗くて幻想的な雰囲気の中を入場してもらうという心配りも嬉しい。少し遅い目に午後8時開演。10時終演。
 バラシの後、近くの居酒屋で打ち上げ。今日で、今回の清水さんとのツアーは終了のため、お疲れ様と反省会も兼ねている。来年はぜひ新作にチャレンジしたいとのことなので、乞うご期待。
 清水さん一行と別れて新宿へ引き上げ。近くの居酒屋で一杯。


5月31日(日) 晴

 本日はオフ。全員フリー行動。各人友人などと会ったりして過ごす。マリオネットの行動は把握していないが、どうも吉田は知人と八目鰻を食べに行ったらしい。ちょっと癖は強いが、慣れれば病みつきとなるとのこと。
 何はともあれ、ライブの疲れを各人癒す一日であった。


6月1日(月) 曇り

 夕方まではフリータイム。午後3時半、集合して出発。今日は西新宿のホテル・センチュリー・ハイアット27Fにあるラウンジ「ラプソディ」での演奏。今回は、我々がCDや著作権管理でお世話になっているジュンアンドケイと小澤音楽事務所のブッキング。ラウンジ演奏のテストとプレゼンのための出演である。
 午後8時から40分のステージを3回。今日は関係者も多く訪れている。ジュンアンドケイのスタッフとは、CDジャケットに関する打合せも行なう。
 11時終了。終演後、ジュンアンドケイ・原澤氏と小澤音楽事務所・石井氏と共に四ツ谷の中華料理店「融城飯店」で打ち上げ。原澤氏の通っていた店だったのだが、行ってみたら何とオーナーが変わっていて新装開店の日であった。こわごわ店に入り、注文するも、料理も遅くスタッフも(人はいいのだが)慣れていないため不安に襲われる。しかし、出てきた料理はなかなか美味い。この間から中華料理には当たりが多い。東京最後の夜に、大変満足して店を出、原澤・石井両氏と別れ、ホテルへと引き上げる。


6月2日(火) 曇りのち雨

 午後10時半にホテルをチェックアウト、東名高速を一路大阪へ。
 午後6時、ようやく吹田インターを出て、千里ニュータウンに入る。ようやく大阪へ戻ってきた。さすがに緊張が一度に解けて、ほっとした気分で嬉しくなる。
 しかしこのまま解散とはならない。7月10日にジョイントでディナーショーをすることになっている中国古筝奏者・伍芳と打合せがあるのだ。待ち合わせの新大阪・ワシントンホテルへと向かう。
 関西の方は伍芳をご存知の方も多いだろう。近頃はタレントとしての活動も多いが、若くて実力派の美人音楽家である。中国の上海出身で、お姉さん(残念ながら、阪神大震災の犠牲となられた)と共に来日。先年、立命館大学を卒業し、東芝EMIからメジャーデビューしている。彼女とマリオネットは6年ほど前からの知り合いで、過去2回ほど、共演したことがある。今回もホテル側からの依頼で、3年ぶりの共演となる。今日はジョイントする曲目選定の打合せ。6曲ほど候補を挙げ、後日リハーサルをすることとなる。
 7時半、伍芳と別れてようやく帰路へとつく。8時、海井宅で解散、お疲れ様でした。