楽器紹介








ポルトガルギター/Guitarra Portuguesa


ポルトガルの首都・リスボンのアルファマ地方で生まれた民衆の歌・Fado(ファド)に用いられる6コース12弦のギター。
Fado(ファド)という言葉は、ラテン語のFatum(ファトゥーム/運命・宿命を意味する)に由来し、その言葉の通り、Fadoは、人生につきまとう深い感情を表現する音楽である。
ポルトガルギターは、そのFadoに不可欠な楽器。独特のボディーの形状は涙の形をしているといわれ、その哀愁に満ちた音色は、聴くものの魂を深くゆさぶる。また、Fadoを、そしてポルトガルギターを演奏する際に最も重要な感情を「サウターデ(哀愁・郷愁などと訳される)」といい、Fadoを表現する者は、その「サウダーデ」を如何に深く表わせるかで、その力量が問われる。

写真の楽器は、湯淺隆が現在メインの楽器として使用している1990年製、ジルベルト・グラッシオ作の屈指の名器。製作依頼から完成して手元に届くまでに4年を要した。現在、新品を手に入れることはほとんど不可能。運がよければ、中古を手に入れられる可能性もあるかも…。湯淺の師であるアントニオ・シャイーニョも愛用している。湯淺曰く、作りはやや華奢であるがバランスは抜群とのこと。






マンドリュート/Mandolute


マンドリン属の楽器で5コース10弦。リュート・モデルノ、リュート・カンタービレとも言う。
古楽器「リュート」のイメージをもとに19世紀末頃ナポリのマンドリン製作家が、その現代版として開発したもの。
深い低音と、微妙にエキゾチックな高音が魅力である。
チェロと同じ調弦の楽器(マンドロンチェロ)に高音弦を付け加えることにより、約5オクターブの広い実用音域(c→b4)を実現し、独奏楽器としても使えるようになった。

写真の楽器は、吉田剛士が使用している、1909年製、フランスの製作家、ルシアン・ジェラ作。フラットバックで、表面板が2重になった独特の構造を持つ変わり種。マリオネットの演奏で聴かれる魅力的なマンドリュートの音は、ジェラならではのものである。

マンドリン/Mandolin


17世紀ごろ、イタリアで生まれた撥弦楽器。金属弦の可憐な音色は悲喜こもごも。
弦は4コース8弦で、2本ずつ同音に、ヴァイオリンと同じ様に調弦される。
歴史的にはイタリアの準民俗楽器的な位置にあるが、その後アメリカ、南米など世界各地で独自に発展し、様々なかたちで演奏されている。日本では大人数での合奏がポピュラーで、愛好者も多い。

写真の楽器は、1912年製、ドイツ系イタリア人の製作家、ルイジ・エンベルガー作。ネックの裏側がすべてべっ甲で覆われている。吉田剛士が以前メイン楽器として使用していたものだが、現在はほとんどコンサートでは使用していない。
因みに、現在のメイン楽器としては、マンドリュートと同じルシアン・ジェラ作の1932年製で、同じく特有の2重表面板を持つものを使用している。