番外編2(灰谷健次郎の巻/拝啓、太陽の子)

湯淺隆

灰谷健次郎様

拝啓

 初めてお便り致します。・・・とは言うものの、先生には十数年前、明石・魚の棚での講演会終了後、親しくお話をさせて頂いたことがあります。私は、先生の作品の「太陽の子」の中で「ふうちゃん」が「オジやん」話す「ぞうとのみ」を、豊中市立蛍池小学校・滝口豊一学級の2年生のときに書いた、湯淺驍ナす。

 突然のお便りで、驚かれると思います。申し訳ありません。実は今回、先生にお願いしたいことがあり、不躾ながらご連絡させて頂きました。

 現在、私はポルトガルギターという楽器を弾いて生活をしているのですが、今、新しいCDを制作している最中です。実は、そのなかに「ぞうとのみ」に題材をとった自作曲を収録しようと考えております。CDの解説には「ぞうとのみ」の本文も載せようと思います。そこで、ご相談というのは、その解説のなかで、「ぞうとのみ」が先生の作品の「太陽の子」に使われているということを、載せてもよいかどうかということです。私にとって「ぞうとのみ」が先生の作品に使われているというのは、堂々たる誇りです。また、「ぞうとのみ」は、無論自分が書いたもので、そのときの記憶もおぼろげながらありますが、しかし、それを書きえたのは、やはり「教育」があったわけで、「ぞうとのみ」は、ある意味でその時代の「教育」が「私」をして産ましめた結果だと思います。従って、私が滝口先生のクラスであったことも、明記しようと思います。

 私事で恐縮ですが、小学3年の時、母が亡くなり、それ以前、つまり私の小学2年までの時間は、その後の家庭環境により、いわば封印され「ぞうとのみ」が先生の作品にあることを、私が知ったのは二十歳を過ぎた頃でした。そのせいか、小学2年までの記憶は、私にとって特別な意味があり、私が今「ものづくり」を仕事にしているのも、その時代の影響が大きくあるように思います。

 通常、私は同封致しましたCDの「マリオネット」というマンドリンとのデュオ・グループで活動しておりますが、今回の新CD「ALGO(アルゴ/何かあるもの・英語ではsomething)」は、大阪日本ポルトガル協会の協力があるので、必然ポルトガルギターの比重が大きく、立場上、私の個人的色彩が濃くなる予定です。その意味でも、私の「ものづくり」の原点たる「ぞうとのみ」に題材を得ることが自然にできたのでした。

 また、参考までに申し上げると、新CD「ALGO」は、今まで色々とご尽力頂いた方々にもご協力を願い、詞を阿木耀子さんに、歌を新井英一さんとマキ凛花さんに、朗読を日色ともゑさんに、装幀を綿貫宏介先生にお願い致しました。発売は、まずは自主制作で、限定1000枚のプライベート版仕様からスタートするつもりです。

 以上、取り急ぎ要件のみの、誠に無作法なお便りで恥ずかしい限りですが、よろしくご検討下さいます様お願いする次第です。刷り物の入稿期限は今月末です。ご返事はそれまでにお願できれば、大変有り難く存じます。我が事情のみをあげつらい、重ねてお詫び申し上げます。よろしくお願い致します。まずは、書中にて失礼致します。

敬具

ポルトガルギター  湯淺 


その壱拾壱(マリオネットの巻/Dの練習曲)