その四(阿木燿子の巻/詩)

湯淺隆

 かねてより、我がオリジナル曲には、詩を提供して頂けそうな気配は、何とはなしにあるのだが、今回は制作の性格上、最も重要な押さえの役割として、いわゆる「FADO」の訳詩をお願いした。曲は「BONS TEMPOS」英語だと「GOOD TIMES」カルロス・ラモスがふところ深い燻し銀の声で歌う「FADO」だ。この曲を阿木燿子さんの訳詩で、新井英一さんにぶつける・・・。

 無謀なオファーとは、重々承知の上。交渉はまず海井が、阿木さんのマネージャーの橋爪さんに、電話をするところから始まるのだが、誤解を恐れずに言うのなら、オフィシャルな仕事関係も多々ご尽力頂いていることもあり、いっそうの緊張が走る。海井、曰く「いったん連絡を取ると、後戻りできないよ」と。まさに、その通りだ。人に何かを頼むとは、受けてもらうにせよ、断られるにせよ、そういう事なのだ。

 結果、数日後連絡が入り、訳詩は快く受けて頂いた。阿木さん、曰く「FADOもいいかしら・・・。」と。ものづくりの大先輩にして多岐にわたる活動、その唯一無二の天賦の才を分けて頂いたことに深く感謝する次第である。

 さて、特上別格の日本の新しいファド詩がもうすぐ生まれる。あとは、中身だ。


その伍(マキ凛花の巻/歌)