その弐(新井英一の巻/歌)

湯淺 隆

 曲作りは言わずもがな、「ALGO」にふさわしい内容の模索が始まる。今回は大阪日本ポルトガル協会の全面的な協力故、我が思いもひとしおである。悩むのはやはり「FADO」とどう向き合うか。しかも「マリオの湯淺」が、である・・・。

 「FADO」は歌だ。そこで10年前、リスボンで交わした歌手・新井英一さんとの切り札の約束を使うことに決めた。約束は「いつか、日本のファドを創るときには声を貸して下さい・・・」

 9月3日「B-Roxy」新井英一ライブ。久しぶりに聴いたが、存在を共振させる声は健在。新井さんの歌は、いわゆる音楽表現の範疇を越えている。響いてくる部位が違うのだ。いわば、骨に響くのだ。会場には「ルル」の3人や、ミナミの古い友達ら、また、地方で出会うマリオと共通のお客さん等なども。レコード大賞特別賞から10年余り。いい風情で、円熟みを増されてきた。

 終演後、楽屋にて録音の交渉。やはり、ふたつ返事。「あなたが言うのなら、そういうことなのでしょう」と。打ち上げの席では、「きみはたまに俺に爆弾を投げるなぁ・・・」と談笑も。

 さて、特上別格の歌の準備は出来た。あとは、中身だ。


その参(日色ともゑの巻/朗読)