ラマンスペクトル解析法
Carbon Analyzer R Ver.6
    

更新履歴


1.はじめに
 R seriesは、一般的な炭素のラマンスペクトルプロファイルに認められる3つのバンド、Dバンド(約1350cm-1)、 D’バンド(約1620cm-1)およびGバンド(約1580cm-1)を最小二乗法によって波形解析し、DバンドとD’バンドの Gバンドに対する比(R値およびR’値)を評価するために制作されたものです。制作にあたり、以下の文献[1]-[6]を参考にしています。
[1] G.Katagiri, N.Takeda, Int. Conf. on Coals and Organic Petrology, Fukuoka 1996.11.14-16.
[2] K.Kokaji, A.Oya, K.Marunuma, Y.Yamada, M.Shiraishi, “Carbonization and graphitization behavior of deacacyclene”, Carbon, 35, 253-258(1997).
[3] 片桐元、”炭素材料のラマンスペクトル”、炭素 No.183(1998) p168-172.
[4] 藤本宏之、”プロファイルフィッティング法による炭素のX線回折データの解析”、炭素 No.206(2003)2-6
[5] 藤本宏之、日本学術振興会炭素材料第117委員会第277回提出資料, 2006.4.21."
[6] 長田実、垣花眞人、”ラマン分光法による炭素材料の評価”、炭素 No.228(2007)174-184.

2. 主な機能
(1) 解析用データの読み込み
読込可能なデータファイルフォーマットは以下の通りです。
・ 本ソフトウェア指定のcsv形式ファイル
・ 解析ソフトウェアGRAMS/386で読み込み可能なprn形式ファイル

(2) 解析データの保存
出力ファイルフォーマット:Excel形式(*.xls)あるいはPDF形式(*.pdf)
表計算ソフト「エクセル2010」がインストールされている必要があります。
 
(3) 印刷
 プリンタの機種およびAdobe Acrobatのバージョンによっては、印刷結果の罫線位置がずれたりすることがあります。

(4) ラマンスペクトルの強度補正
・ データの平滑化
・ バックグラウンド補正

(5) 最小二乗法による波形解析  
炭素のGバンド、DバンドおよびD’バンドのピーク分離(最大6つのバンドを波形分離可能)
・自動ピーク分離機能
・手動ピーク分離機能

(6) R値およびR’値の算出、R/F値、Iv/IGの算出
・ 分離したGバンド、DバンドおよびD’バンドのピーク面積および高さ強度より、R値= Dバンド/Gバンド比、R’値=D’バンド/Gバンド比の算出
・ ラマンバンドの強度(R)と蛍光によるバックグラウンドの強度(F)の比R/FおよびGバンドとDバンド間の谷の高さ(V)とGバンドの強度比(Iv/IG)の算出

3.解析手順
3.1 強度補正

 本解析方法は、まず強度補正ウィンドウ(図1)でデータ平滑化、バックグラウンド補正を行った後、 プロファイルフィッティングウィンドウでピーク分離を行い、解析します。

図1 バックグラウンド作成例

3.2 プロファイルフィッティング
 強度補正を行った後、実測プロファイルをプロファイル関数を用いてフィッティング処理し、 各ピーク位置、半価幅、強度を自動的に読み取った後、R値およびR’値を算出します。フィッティング方法としては、
 (1) 手動モードによるフィッティング
 (2) 全パラメータの一括精密化
 (3) 位置・半値幅の精密化
 (4) 強度の精密化
 (5) ローレンツ率・非対称性の精密化
の5種類のフィッティング機能が搭載されています。手動フィッティングを除く(2)-(5)の方法は自動フィッティングモードです。

図2 波形解析例

3.3 解析データの保存
表計算ソフト「Excel」を起動して、エクセル形式で解析結果を保存することができます。1枚目のシートには
・データの測定条件
・プロファイル解析結果
・各プロファイルのピーク位置、強度、半値幅、ローレンツ率、非対称性パラメータ
などが書き込まれ(図3-1)、2枚目以降には、ベースライン補正モードおよびオリジナルデータモードでの プロファイル分離結果がグラフ化されます(図3-2,3-3)。 表計算ソフト「エクセル2010」がインストールされていないと、保存ができませんのでご了承ください。

図3-1 保存データの1枚目のシート

図3-2 2枚目のシート(ベースライン補正モード)

図3-3 3枚目のシート(オリジナルデータモード)
3.4 印刷
 解析結果の報告書を印刷することができます(図4)。 プリンタの機種によっては、印刷結果の罫線がずれたりすることがあります。

図4 解析結果報告書の印刷例

参考資料
読み込み可能なファイルは、以下の2種類です。
(1)本ソフトウェア指定のcsv形式のファイル
(2)解析ソフトウェアGRAMS/386で読み込み可能なprn形式のファイル
それぞれのファイルフォーマットを表1に示します。

表1 データファイルフォーマット
csvファイルフォーマット prnファイルフォーマット
ファイルフォーマット 説明 ファイルフォーマット 説明
Number, 185
1803.2, 185.983
1801.6, 156.04
1800.1, 178.608
1798.6, 175.2
1797.1, 184.45
1795.6, 183.247
   : ,   :
データ点数
ラマンシフト値, 強度データ
    :,         :
     :,         :
     :,         :
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1803.2,185.983
1801.6,156.04
1800.1,178.608
1798.6,175.2
1797.1,184.45
1795.6,183.247
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ラマンシフト値, 強度データ
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