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網面積層数分布解析法 Carbon Analyzer H Ver.6 |
1. はじめに このソフトウェアは、炭素網面の平均積層数およびその分布を評価するために制作されたものです。 制作にあたり、以下の文献を参考にしています。 [1] P.B.Hirsch, Proc.Roy.Soc., A226(1954)143-169 [2] R.Diamond, Ph.D.Dissertation, University of Cambridge, England, 1956. [3] W.Ruland, Carbon, 2 (1965)365-370. [4] 藤本宏之、白石稔、炭素 No.167 (1995) 101-107. [5] 藤本宏之、白石稔、炭素、No.213(2004)123-127.. 2. 主な機能 ソフトウェアの主な機能は、以下の通りです。 (1) 実測強度の強度補正、バックグラウンド補正、002ピークサーチ (2) 補正強度のフーリエ解析 (3) 逆フーリエ解析による計算結果の検証 (4) 平均網面間距離、平均網面積層数、平均結晶子サイズLcおよび積層数分布ヒストグラムの算出 (5) 解析データの保存 出力フォーマット:Excel形式(*.xls)ファイルおよびPDF形式(*.pdf)ファイル 表計算ソフト「エクセル」およびAdobe Acrobatがインストールされている必要があります。 (6) 印刷機能 プリンタの機種およびAdobe Acrobatのバージョンによっては、印刷位置がずれたりすることがあります。 3. 解析用データ取得のための測定法 本ソフトウェアでは、解析対象となるデータをCuKa線をX線源として測定された炭素質材料の強度データに限定しています。 また、002バンドの解析を行うため、最小測定角度範囲として2θ= 10 - 35°を含んでいる必要があります。 この角度範囲が含まれていないと、解析ができません。表1に解析用データ取得のための測定条件を紹介しておきます。 データはできる限りS/N比の高いデータを得るようにしてください。 平滑化補正を必要としないようなデータが理想的で、数十回程度の積算を行えば、そうしたデータを得ることができます。 |
反射法 | 透過法 | |
測定角度範囲/° | 2θ=約10-40° | 2θ=約2-40° |
サンプリング間隔/° | 0.05°程度 | 0.05°程度 |
発散スリット/° | 1/2° | 1°程度 |
3.1 反射法(簡便法) 最も簡便に測定でき、比較的良好な結果が得られます。 この測定法の場合には、小角領域(およそ10o以下の角度領域)を測定できないので、20Aバンドの解析は行うことができません。 解析対象は002バンドのみとなります。より低角側の強度データを測定したい場合には、発散スリット幅をより小さなものに変更してください。 3.2 透過法 Hirschのように、002バンドおよび20Aバンドを含む回折角度領域における散乱強度を定量的に扱う場合、 およそ2q=1-40oの領域の強度を測定する必要があります。そのためには、透過法で測定を行うか、 あるいは透過法と反射法を併用するしか方法がありません。透過法で測定する場合には、 試料に自己成型性がないとサンプルホルダーに充填できないという欠点があります。 |
4. 網面積層数分布解析法の概要 4.1 強度補正 まずはじめに、「強度補正」ウィンドウで強度補正、バックグラウンドの補正、002ピークサーチ(図1)を行った後、 「網面積層数分布解析」ウィンドウでフーリエ解析を行います。 |
![]() 図1 「002ピークサーチ」実行時のウィンドウ 4.2 網面積層数分布解析 この解析ウィンドウでは、実測002回折プロファイルの強度をフーリエ変換し、平均網面積層数、平均網面間距離、平均結晶子サイズLcおよび網面積層数分布を算出します。 また、得られた結果を逆フーリエ変換することによって解析結果の妥当性の検証も行います。 上記の処理を以下の手順に従って行います。 (1) フーリエ解析条件の設定(パターソン関数の計算距離、002回折プロファイルの積分範囲の決定および被積分関数形の選定) (2) フーリエ変換 (3) 得られた結果の逆フーリエ変換 (4) 平均網面積層数、平均網面間距離、平均結晶子サイズLcおよび網面積層分布の評価 本ソフトウェアでは、(1)の解析条件の設定を行えば、(2)〜(4)のステップは自動計算されます。 4.2.1計算空間距離および積分範囲の設定 (1) パターソン関数計算時の計算空間距離 デフォルト値は7nmとなっています。本ソフトウェアで計算可能な最大空間距離は5nm〜10nmです。 (2) フーリエ積分を行うための積分区間の設定 積分開始角および終了角のデフォルト値はそれぞれ10°, 35°です。開始角、終了角はそれぞれ1〜20°、30〜50°の範囲で設定できます。 4.2.2 被積分関数形の選定 本ソフトウェアでは、Hirsch型、Ruland型、Diamond型の3種類の被積分関数形を用いてフーリエ解析を行うことができます。 コンボボックスより、いずれかの関数形を選定すると、ウィンドウ右上部の実測強度データが選定された関数型に応じて変換されます(図2)。 |
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図2-1 Hirsch型被積分関数 | 図2-2 Ruland型被積分関数 | 図2-3 Diamond型被積分関数 |
4.3 フーリエ解析 フーリエ解析を実行すると、ウィンドウの左下部、右上部および右下部のグラフ領域にそれぞれフーリエ変換結果、 逆フーリエ変換結果および網面積層数分布ヒストグラムが表示されます。また、「解析結果」フレームには、 002ピークサーチより見積もられた網面間距離、フーリエ振動の平均周期、平均網面積層数、平均結晶子サイズLcの値が表示されます。 |
![]() 図3 フーリエ解析終了後のウィンドウの状態 |
4.4 解析データの保存 解析終了後は、表計算ソフト「エクセル」を起動して、xlsファイル形式で解析結果を保存することができます。 3つのワークシートとグラフシートを作成し、解析結果の書き込みを開始します。それぞれのワークシートには (i) データの解析条件、平均網面間距離、網面積層数分布表(図4-1) (ii) 網面積層分布ヒストグラム(図4-2) (iii) パターソン関数計算結果とそのグラフ(図4-3) (iv) 実測002バンドと逆フーリエ解析曲線の重ね合わせのグラフ(図4-4) などが書き込まれます。 表計算ソフト「エクセル」がインストールされていないと、保存ができません。 |
![]() 図4-1 保存データの1枚目のシート |
![]() 図4-2 保存データの2枚目のシート |
![]() 図4-3 保存データの3枚目のシート |
![]() 図4-4 保存データの4枚目のシート |
![]() 図5 解析結果報告書の印刷例 |