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99.01.26

教科書の活字

 ご存じの方も多いかもしれませんが、中学校の国語教科書では、明朝体活字のデザインを修正して使用しているようです。
 僕が初めてこれに気づいたのは1994年のことでしたが、もっと以前から行われているのかもしれません。ただし、僕の習っていた東京書籍版は、今も昔もふつうの明朝体のままです。
 明朝体活字というのは、手書きの文字とはかなり異なっています。そのままの形を筆写すると誤字になってしまうことがあるため、教育的配慮からデザインを変えたものと思われます。たとえば「糸」という字は、明朝体では上半分がチョンチョンと点を継いで書いたようになっていて、全体では8画に見えますが、手書きでは上を「く」の字のように続けて書き、6画になるのが正しいのです。小学校の教科書は教科書体活字を使っているので問題ないとしても、中学校では明朝体活字を使うため、指導上問題が出てきます。
 そこで、たとえば「線」の字は糸ヘンの上を「く」の字のようにデザインを改めることにしたようです。右の図に示した2社の教科書の字体と、MS明朝体を比較するとよくわかります。
 この修正のしかたは、教科書会社によって若干異なるようで、教育出版では「北」の字の第2画は第3画に突き当たっていますが、三省堂では逆に第3画が第2画に突き当たっています。教育出版のほうが手書きに近いのです。
 また、「女」の第1画は、教育出版ではMS明朝と同じく二筆で書いたように見えますが、三省堂では「く」の字のようになっています。三省堂ではさらに、第2画が第3画の上に突き抜けています。これは三省堂のほうが手書きに近いのです。
 上記2社の教科書をぱらぱらと見比べると、全体的に三省堂のほうがより手書きふうです。「出」という字にしても、わざわざ横棒を斜めにして、「山」の左の縦棒が下に出ないようにしています。ちょっと見ると異様なほどです。
 明朝体活字を手書きに近づけるというのは、美観の問題もあって、かなり難しいんじゃないかと思います。ところが、お隣の中国でもこのようなことを実施しており、香港ではもっと過激に修正しているようですね。また機会があればそのことを書こうと思います。

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