府中の2000mで最初の1000Mを57秒台で走るということが、どういう意味を持つか騎手ならば皆知っています。ぼくらもまた、幾多のスピード自慢が前半の猛ペースがたたって、馬群にのみこまれていくところを目撃してきました。しかし、武豊は、57秒4という前半のペースを「楽なペースで逃げていた。」と言いました。前日のオープン・アイルランドTRで50キロのシーワンが刻んだペースが59秒1。それよりも1秒7も速いラップを58キロ背負って、持ったままで生み出す馬。それを「楽だった」と日本最高の騎手に言わせる馬。サイレンススズカは本当に奇跡の馬だったとしか言えません。レース直後のホームページで編集子は「故障したサイレンススズカに他の馬が追いつくのに、ずいぶん時間がかかったような気がする。」と書きました。今、天皇賞のラップを見ると、それは単に「気がする」というものではないとわかります。前半1000Mまではハロン平均11秒4。サイレンスがレースを去った後に残されたラップ、1200mから1400mまでの1ハロンが13秒4。この2秒の差こそが、彼が僕たちに残していった「謎」なのです。いつの日か、この1ハロンを失速することなく、11秒台で突っ走る馬に再びぼくらは巡り会うのでしょうか。冥福を祈ります。
さて、わずか1ヶ月前、サイレンススズカ・エアグルーヴ・スペシャルウィークと秋の主役を擁していたBRAですが、どうしたことか、サイレンスズカのアクシデントも含めて、何かにたたられているかのような受難つづき。ステイゴールドやエモシオンのように人気以上の健闘をしている馬もいるのですが、G1ラッシュを期待していた編集子としては、どうにも不満が残ります。G1シリーズも残すはあと4戦。どうなりますやら。
先月、ランキング上位陣の手駒がクラシック級とは思えないとして、11月・12月あたりにデビューする組から来年の主役が誕生するのではないかと分析しましたが、それに奮起したのか、今月は勝つわ、勝つわ。新馬・未勝利合わせて何と16頭が勝ち上がるという空前の初勝利ラッシュです。既にその勢いで2勝めをあげた馬もいますが、年末年始の開催で、この初勝利組から3〜4頭がクラシック路線で役をふられることになると思われます。順を追ってみていきましょう。
ダンシングキイ産駒に相性の良い浅井エアギャングスターがいちょうS勝ち。勝ちタイムは平凡ですが上がり34秒7でスパッと決めたあたりが良血のなせるわざか。飯田サリーレがデビュー戦快勝。高額馬だけにまだまだ、こんなものでは満足できないでしょうが、兄エモシオン以上の器という評価もあります。次は樅の木賞を予定。同じくブルーコマンダーはもちの木賞で猛然と追い込んで2着。芝・ダートどちらもこなすというのは、今後のローテが楽。五十嵐兄の話題馬スリリングサンデーは断然人気の白菊賞で5着。まだ馬が若い印象。五十嵐弟はコンバットスズカの代替馬アランダ(ファレノプシスの妹)が2戦めで初勝利。次が試金石でしょう。デイリー杯でよもやの惨敗を喫した石黒ロサードが京王杯で見事に復活。大外強襲のウメノファイバーの鬼脚に屈したものの、レースの流れの中で勝ちにいって2着であれば、まずは十分。朝日杯では強敵も多いようですが、期待は大きい。BASSIダンツバクシンオーが未勝利脱出。ノーザンカピタン休養の分も頑張ってほしいところ。今月好調な及川はリメインフラッシュ・サクラフューチャーが勝ち上がり、ラバーズミスが黄菊賞2着と一気に上が狙える駒が揃いました。
光田俊太タヤスブルームが久々のファンタジーSで3着。復帰戦としては100点をつけられる内容。タヤスアゲインのような印象のある馬です。ロードウィステリアも勝って、ようやく2毛作体制。首位を行く奥山は久々のステファニーチャンが赤松賞で2着と好走。穴をあけました。函館チャンピオンのリザーブユアハートは京王杯で5着。着順以上に印象の悪いレースで、もしかすると期待ほどの成長はないかも。金光アサクサキーマン未勝利勝ち。まあ、弟の値段からして、この程度は当然でしょうか。
思わぬ不調にあえいでいた喜多マチカネテルテルが東スポ杯3着で、やや上昇ムード。次は朝日杯か、ラジたんか?絶不調のクリスSダルタニアン登録抹消。早く代替馬選抜されますことを期待します。元の価格からして、サンデーだろうが、G1馬の下だろうが取り放題です。今月最も好調だったのは鈴木。スティンガーが新馬・赤松賞を連勝。岡部も相当な器とコメント。タイムが今一つなことだけが、今後の課題となるでしょう。フェスティブタイム未勝利勝ち。ラグタイムサンデーの500万条件3ー2着もあり、先月22位から一気にベストテン入り。マレータイガーの代替馬選びは慎重に、かつ迅速にしたほうが良いですよ。中嶋ナリタワールド・西原ヘリオスのトウカイヘリオスともに未勝利勝ち。西原ヘリオスはアイランドオオジャが折り返しの新馬を負けたため、まだ新馬戦連敗記録更新中です。野田ファイナルキスが500万下連続3着。素質からして平場狙いはちょっと寂しいですが、野田的には数出たほうが嬉しいかも。萩原カシマアルデルがいちょうS2着。勝った馬とは底力の差という感ありますが、もともとジリっぽい血統であり、今後相手が強くなっても、2・3着を稼ぐタイプか。深尾ドラゴンマリーンが黄菊賞勝ち。強くなっています。宮崎夫ヒシピナクル・宮崎妻マイネルリーダーが仲良く2戦めの新馬勝ち。妻のマイネルリーダーは中1週で果敢にG2挑戦で最下位に敗れましたが、夫のヒシピナクルは中1週でG1挑戦予定。常識では一銭もいらないローテですが、荒れる牝馬Sで武豊だけに、馬主は気合い十分です。(この原稿書いている時点で、明日なんだよなー。)
総合成績では上位陣は順位としては安泰でしたが、上位の伸びが今ひとつで、ベストテン近辺の会員にこれからという持ち駒が多いため、今月・来月あたりで順位大変動がありえます。チャンピオン五十嵐弟も代替馬でやや不本意ながら片目があき、本気を出してきたようです。一方藤原兄弟・キッズ姫・饗庭・梶川あたりはそろそろ2歳馬のカタログ検討始めた方が良いかも・・・。
ピックテン・コンテストは天皇賞で大爆発の五十嵐兄が、ダントツの5020ポイントでほとんど逆転の可能性は無さそうです。2位はここまでサイレンススズカ以外すべて3着以内の工藤2680ポイント、3着以下は猪口・宮崎夫妻・西原ヘリオス・めいりん・深尾と続きますが、大混戦という状態です。
次号は3歳重賞4鞍の結果と、ピックテン表彰、新年会案内を入れて1月7日頃発行予定です。新年会は日付だけ1月14日で確定。場所は次号で連絡します。では皆さん良いお年を。
代替馬:五十嵐弟コンバットスズカ>アランダ牝(サンデーサイレンスxキャットクイル)15000BCU(9000BCUアップ)
鈴木さん・クリスSさん、早く代替馬選んでください。1月末までですよ。