クラシック開幕直前
BRA戦力分析

 春眠暁を覚えずというものの、ちょっと眠っている間にもう桜ですよ。クラシックですよ。去年の9月ぐらいに、リッチマン・プアマンもうすぐ出すからね、と言ってもう半年ですよ。えらいこっちゃ、えらいこっちゃというわけで、クラシック開幕直前の展望大特集です。まあ、この半年間に中国に3回、ロンドンに2回、サンフランに1回、国内出張数知れずと、生活そのものがえらいこっちゃではありますが。

 全体的にみると、今期のBRAは一握りの上位がクラシックでも最有力といわれる一方、中堅以下はほぼ壊滅状態。特に牝馬。おそらく近年になくクラシック戦線に登場するBRA所属馬の数は少ないと思われます。


 桜― オークス路線は、テイエムプリキュア・フサイチパンドラという2歳実績組が年明けて今ひとつ伸び悩んでおり、その間に各トライアルで新興勢力が台頭を果たしているわけですが、BRA勢でもっとも注目されるのは、五十嵐弟アドマイヤキッスでしょう。昨年9月の未勝利勝ちから、チューリップ賞まで間があきましたが、大外一気の快勝。一躍桜花賞有力候補となりました。復帰戦でも2番人気という高評価で、素質の高さは衆目の認めるところだったわけで、なによりヤネに武豊確保というのが心強い。

 一方、小倉から連勝街道を突き進んできた金光アルーリングボイス。ファンタジーSの勝ちっぷりはまさにモノが違うという感があり、阪神JFでは惨敗しましたが、スイープトウショウ・ラインクラフトのように、年明けの巻き返しが大いに期待されました。しかし、結果はフィリーズレビュー4着。こうなると、アルーリングアクトが3歳以降まったく活躍しなかったというファクターが気になりはじめます。

 むしろ金光所有ではフィリーズレビューで粘りに粘ったエイシンアモーレに一発があるか。エイシンワシントン産駒で距離が1ハロンのびることは不安には違いないですが、桜は最終的には駆け引きなしのスピード勝負になることも多く、勝つまでは無理でも3着までなら、過去底力の足りなそうな馬もずいぶんもぐりこんでいます。鞍上が福永ならなお良し。

 チューリップ賞2着の深尾シェルズレイ。深尾にとっては久々のクラシック候補で力もはいっていることでしょう。クロフネ産駆にしては、まとまりのよいタイプで混戦になればうまく立ち回る可能性もあります。エルフィンSですさまじい切れ味を見せ、トライアルで人気となった五十嵐兄サンヴィクトワールは、末脚不発で、本番は見送り。おそらく東京を一度使ってオークスへという路線か。赤松賞を勝った猪口アイスドールも中途半端な競馬が続いていることもあり、実績ある東京一本となりそう。今期の牝馬戦線は桜とオークスでがらりと上位陣が入れ替わる可能性もありそうです。


 牡馬路線は、牝馬路線にくらべて何頭か、クラシックの主役をはれる候補がそろっています。筆頭は及川夫アドマイヤムーンか。エンドスゥイープで札幌デビューと早熟の可能性も十分でしたが、復帰初戦こそサクラメガワンダーに不覚をとったものの、共同通信杯、弥生賞と王道路線を連勝で、6戦5勝。ほぼパーフェクトな成績で本番ではおそらく1番人気となるでしょう。昨今流行の母父サンデーサイレンスで、もはや短距離型とは言えない父。これは楽しみ。

 2歳チャンピオンの広瀬フサイチリシャール。4連勝で朝日杯を勝ち、年が明けても連続2着で本番はおそらく2番人気か。東京スポーツ杯、朝日杯は自ら動いて驚異的なタイムをたたき出しており、脚質的にも大崩れはなさそうで、アドマイヤムーンと再度一騎打ちとなるでしょうか。今年にはいって負けた2回とも、展開のアヤとも言える負け方で、特にスプリングSはいったん差されてからもう一度巻き返しており、思った以上に根性のあるタイプかもしれません。広瀬はアグネスタキオン産駒ロジックもシンザン記念3着、アーリントンC2着と安定した成績で、こちらはおそらく母父ユタカオーでマイル路線か。これまで4位が最高順位の広瀬にとって、時は来たという感じでしょう。

 スプリングSでフサイチリシャールに迫ったのが及川妻ドリームパスポート。きさらぎ賞を含めて2勝で、やや勝ち味に遅いタイプでもありますが、スプリングでインをつけることが証明されたのは本番では心強い。

 実は、リシャールよりも大物かと言われているのが福田フサイチジャンク。TVでも有名になりましたが、サンデー最後の世代の最高価格馬です。デビュー戦以降4連勝で、毎回、この勝ちっぷりでは、相手が強くなったら通用しないのではと言われ続けながら、とうとう無敗で本番に臨むことになってしまいました。重賞を経験せず無敗で望む皐月賞となるとトウカイテイオーが思い出されますが、いまだに「これは強い!」という瞬間がないのが気がかり。とはいえ、素質だけで戦っているとも言え、本気を出したらどれほど強いのかという楽しみもあります。

 それにしても今年は、フサイチとアドマイヤの当り年で、さしもの金子さんも苦戦しているわけですが、BRAにもアドマイヤ軍団がまだまだそろっています。金光アドマイヤカリブは短距離路線でしょうが、現在骨折で休養中。マイルCに間に合う可能性は残されており、バクシンオーは早熟ではないので、復帰すれば楽しみか。ファルコンSあたりだったら楽勝してたでしょうに。当初アドマイヤ軍団の2番手といわれた五十嵐弟アドマイヤメインが毎日杯を勝って、3勝め。逃げに徹して、ケタはずれの強さを発揮するようになっており台風の目となりそうです。大田光アドマイヤディーノは軍団の中では安いほうだったと思われますが、こちらもさわらび賞を逃げて圧勝。こちらはむしろマイルか。

 このところ低迷の続く宮崎夫妻の持ち馬では唯一宮崎妻のニシノアンサーがオープン勝ちがあるので本番出走と思われます。逃げ一手のため、アドマイヤメインが控えた場合は妙味がありそうですが、ムーンがいる以上、アドマイヤメインはぶっとばすだろうなぁ。

 すみれSを勝って4戦3勝とまったく底をみせていないにもかかわらず、ものすごく地味で本番でも10番人気以下と思われるのが飯田ナイアガラ。同じ別路線組でフサイチジャンクがいるだけになおさら目立ちません。血統的にはJC出走馬同士の配合でむしろダービーか。そういえばリンカーンのようなイメージもあるので、菊花賞あたりで素質開花かもしれませんが。金子オーナーの3連覇ってありえるのかしら。

 昨年チャンピオンの天宝院透は、キャプテンベガが若葉S2着でぎりぎりで出走権確保。これで勝ったら、まさにメイクミラクルですが、アドマイヤベガやアドマイヤドンの下だけに、ありえないことはない。ちなみに天宝院透はオンファイア以下のサンデー軍団が、ほとんど稼動していないため、キッズ姫(テューダーローズの未勝利脱出が最後の望み)、大野(マツリダゴッホが青葉賞を予定)、宮崎夫(タキオン10頭選んで、8頭未勝利。統計学的にありえない)らと激しく最大被害者を争っています。


 これらとは異なる路線での活躍馬はDフラッグ・フラムドパシオン。年末のダート平場戦を2秒4という父クロフネ並のぶっちぎりで勝った後、ヒヤシンスSも楽勝。勇躍ドバイのUAEダービーに挑戦しました。結果は3着。おしいです。国際G2で、勝てば5万BCUだったのに。一方五十嵐兄ハーツクライは有馬記念勝利に続いて、シーマクラシックにも優勝。この後はキングジョージという話もあります。

 軍団戦は及川夫妻と広瀬のプロ軍団改が大野というハンデをものともせず独走。一方ここまでのレポートで、まったく名前が出てこないことからもわかるとおり、アットホーム隊が、今年度は軍団史上に残るほどの不振。一昨年43勝・昨年33勝に対して、ここまでわずか14勝。しかもこの14勝がすべて単発。えらいこっちゃ。

 では、また。