競馬というのは判らないもので、BRA史上最強の布陣とも思われた今年の3歳馬ですが、札幌のチャンプ・テイエムハリケーン、そして函館のチャンプ・マザートウショウが両方とも惨敗してしまうというのも何かの因縁でしょうか。
今月その両馬を上回る活躍を見せたのが福田勝氏のガレオン。新馬勝ちした時にシャダイアイバー産駒ならではの成長力に期待すると述べましたが、昇級2戦目であっさりと勝利を収めました。怖い関西馬シュアリーウインを抑えての勝利、おめでとうございます。また、昨年のゴールドディスク、一昨年のサクラヤマトオーとBRAにはゲンの良いこのレースには、同馬の他にもミスターチアズ、マジックナイス、サクラポイントオーとメンバーが揃い、全馬が掲示板を飾るという快挙を成し遂げました。たいしたものですね。
一方函館以来のマザートウショウですが、昨年のサンエイサンキューのようにいちょうSに朝鮮、期待を集めたのですが4着。敗因についてはっきりしたことは見当がつかないのですが、いきなりの速い流れにとまどったのかもしれません。アイビーSで2着のシュアリーウインがこのレースで5着。アイビーS3着のミスターチアズが11着。タイムからしても、いちょうSの方がレベルは高かったといえるのではないでしょうか。そういう意味では7着のパープルマジックもこの後に期待はつないだと言えそうです。
かたやテイエムハリケーンも伝統のもみじSに登場。人気ですら3番人気であったあたり、やはり久々で本調子でなかったもよう。6着に惨敗しました。札幌でマイネルキャッスル(いちょうS3着)をねじふせた力強さは全く見られませんでした。もっともこちらも勝ったビワハヤヒデがマイル34秒3ではついて行けなかったのも無理はないかも・・・。
いずれにせよガレオン、マザートウショウ、TMハリケーンの3頭が中心となって今年の冬は動いてゆきそうなBRA軍団です。そしてこの3頭の中で速い時計に対応できたものが、クラシックへの挑戦権を獲得することでしょう。
さてその他の馬ではサンエイエンドレスが依然として好調(成績のことではない)。またまた連闘を敢行し、現在11走。ルーブルシンザンの記録も楽々と超えるのではないかと噂されています。ここまでのローテーションはデビュー以後、連闘−中1週−中1週−連闘−連闘−連闘−中2週−連闘−中1週−連闘。走っていない週のほうが少ないという凄まじさです。中3週あけたら「ポン駆け」と言うのでしょうか。今一番怖いのはタイムオーバーによる出走停止かもしれません。お体を大切に・・・。
広瀬拓氏はサクラポイントオーが未勝利をスカッと快勝。サクラチトセオーも新馬を勝って年末が楽しみ。中西父は突然クリスタルベストが激勝。2着が本命馬で馬連は66倍の大穴でした。広瀬泰氏はポセイドンシンボリが岡部の年間100勝のメモリアルホースとなりました。五十嵐兄氏、ストライプブルーが復帰しましたが、さえません。浅井氏サマーワインが中山、福島と7頭、6頭のレースで堅実に稼いでいます。ユニバーサルマシンは人気はあるのですが、もう一息というところ。大西氏シンボリズルムーがこれまで4着以下無しなのですが、なんとなくこのクラスに居付いちゃったというムード。多田氏のイイデケーオーが初めて関西に登場。初めての坂で、コンマ9秒差なら悪くないかも・・・。宮崎氏は代替馬のリファールトウコウが新馬でタイムオーバー。ノーコメント。田中氏はビッグジョージが復帰。さすがにオープンの6ハロンではついていけなかった。佐々木氏コシノリュウオーがマイルの黄菊賞でしぶとく伸びて3着。セキテイリュウオーのようなタイプか。福田氏スイートルノワールは豊で人気は高いのだが、さっぱりです。キッズ姫氏テキサスローズはサフラン賞で6着。でも2ヶ月ぶりでマックスジョリーから1秒ならまずまずか。ちなみにある雑誌の「競馬関係者に聞いた史上最強馬」というアンケートでテキサスローズに1票入っていたのには驚きました。工藤氏はラグナロックが福島のきんもくせい特別で1番人気ながら4着。どうもこのレースは、ノーモアスピーディ以来BRAには鬼門となっている感あり。アロートゥスズカがデビュー。追わせるタイプで勝機は近そう(もっとも南井が乗れば皆そうなるけど)。乙川氏、タマグロスがデビュー。福島の新馬から東京の未勝利という怪奇なローテーションだが、もうひとふんばりが足りない状態。西山兄氏は久々のナリタタイシンが未勝利を快勝。とりあえず一安心か。ベストホープが新馬1800mを50秒切って、楽しみな存在でしょう。大上氏イノクエストが取消です。残念でした。萩原氏ジュエルバンダムが2戦目で初勝利。おめでとうございます。
以上駈足のレポートでしたが、やはり会員が増えただけあって、賑やかですね。
さて今月は第2回ピックナイン・コンテストの集計発表と関西会員の藤原弟氏の凱旋門賞レポートです。コンテストは五十嵐兄氏の大爆発(レッツゴーターキン)により、ほとんどその意義を失いつつありますが、最後まで希望を捨てずにがんばりましょう。では、寒くなってきましたが、風邪などひかれませんように、お気をつけください。
このたび長年の夢がかない、凱旋門賞観戦のためにロンシャンへ行って参りました。その話を宮崎氏にしたところ、私なりの感想を書いてみないかと言われ、新会員としては大変あつかましいかなとも思ったのですが、ご厚意に甘えてペンをとらせていただきます。申し遅れましたが、「ほとんどの皆さん、はじめまして。関西で打ち上げをやってほしいと願っている藤原です。」
さて去る10月4日、私、夢にまで見たフランスはロンシャンの競馬場に立っておりました。思い起こせば1986年競馬中継のレースの合間のコーナーで、あのダンシングブレーブのこの世の「馬」とは思えぬ豪脚を見た時から私の心はいつも、このロンシャンに翔んでいたのです。3年前にほとんど凱旋門賞だけのためにBSチューナーを導入してからは、キャロルハウスやスワーヴダンサーのレースを楽しんでいたのですが、根っからの競馬好きにとっては、やはり生で絶対見たいという気持はつのる一方。今年は正月前(ということは去年か)からフランス行きを決心し、ようやく夢を現実のものにすることができたという次第です。
前置きはさておき、ロンシャン競馬場の正面の門をくぐると、あの名馬グラディアトゥールの銅像が建っています。さしずめ京都のシンザン像、東京のトキノミノル像みたいな感じですが、この馬はフランスの馬でありながら英国で三冠馬となり、今でも英国人はこの像の前では記念写真は撮らないとか・・・。グラディアトゥール像に向かって右側の道を少し歩くとパドックがあります。日本のパドックとは違い、木がポツリポツリと植えてあり、なんともなごやかなムードをかもしだしています。優勝馬の騎手や馬主の表彰台もパドックの中央にあります。
驚かされたのは、やはり本馬場の広いこと。バックストレッチははるかかなたで、目をこらしてみても馬の識別は容易ではありません。霧でもかかったらどうなるのかしら・・・などという疑問はきっとフランスの人々にとってはどうでも良いことなのかもしれませんが・・・。
今回凱旋門賞が行われるのが第5レース。その前の2レース(ロンポワン賞GU)に昨年の3歳チャンピオン、あのアラジが出走するということで話題になっています。私もこれは儲かったという気分。今年に入って準重賞をひとつ勝って以来スランプに陥り、「堕ちた偶像」的な発言も見られていましたが、パドックで見る限り、小柄な体ではありますが、まさに全身の筋肉がぴんと張り詰めているという印象。決してスランプに苦しむ馬の体とは見えませんでした。レースでは鮮やかすぎるほど鮮やかに復活をアピール。直線だけで他の馬とのエンジンの違いを証明してみせました。私もG(単勝)JU(連勝)ともに的中させていただいて、アラジ様、感謝しております。
第4レースはアベイユ・ド・ロンシャン賞(3歳上/5F/GT)このレースはレスター・ピゴットを買いたかったのですが、次が凱旋門賞ということでパドックに居座り、結果的にミスターブルックスで見事に勝ったピゴットの表彰式を、間近に見ることになりました。アラジもミスターブルックスも次はブリーダーズカップ。楽しみです。
いよいよ凱旋門賞。さすがに世界中の名馬が集まっているだけのことはあり、馬体も毛ヅヤも歩様も思わずため息がもれるほど。イレこんでいる馬が1頭もいないのも凄い。オークス・セントレジャーを含めて6連勝のユーザーフレンドリー、ザ・ダービー馬のドクターデヴィアス、昨年の2着馬マジックナイト、仏ダービー2着「いぶし銀」のスボーティカといったそうそうたるメンバー。鞍上もアムスッセン、P・エデリー、S・コーセンという世界の名手たちですから、個人的にも、回りも盛り上がる一方でした。
私は仕上がりを確認して、予想通りキングジョージ馬のセントジョーヴァイトから。ファンなのです。額草の真中からハミのリングにかけての頭絡の付け方が、9月に亡くなったトウショウボーイそっくりだというのも泣かせます。
さて肝心のレース結果ですが、詳しい結果はブックや優駿に載っているので敢えて省きましょう。一旦は4歳牝馬のユーザーフレンドリーが先頭に立ったところを、残り2ハロンぐらいで外からスボーティカが合わせ、クビ差の体勢のままゴールに飛び込むという際どい勝負でした。私の応援したセントジョーヴァイトは大外17番枠から先行し、直線を向いて先頭だったのですが、不良馬場が響いたのか、伸びを欠いて4着でした。とにかく直線の攻防は圧倒的な迫力で、レースが終わってからも、自分の手がまだ小刻みに震えているのに驚いたほどです。
手の震えが収まったころ、馬場ではスボーティカのウィニングランが始まっていました。ジャルネ騎手が手を挙げると、歓声と拍手が大音響となってロンシャンを包んでいきます。そして表彰式がパドックでなく本馬場で始まりました。授賞式とインタビューが終わり、ラ・マルセイエーズが流れ、興奮の一日が終わるころ、私は、もし日本の馬が勝ったら君が代が演奏されるのだろうかなどと、ぼんやりと考えていました。そして、いつか各国の強豪を蹴散らし、この芝深いロンシャンの最終コーナーを、日本の馬が先頭で駆け上がってくる姿を夢見て「また来よう、必ず。」と心の中で確かめながら、競馬場を後にしました。
(終わり)