しかし、めでたくBRA会員も20人を超え、おかげさまで事務局はてんてこまい。とりあえず、遅くなりましたが、1991年度の登録馬一覧を発表いたします。
さて、タイトルにもありますとおり、既に北の地では闘いは始まっていますが、今回は各会員の指名状況を中心にレポートしていきましょう。
今年の特徴は会員の増加に伴い、また今年はブック誌に掲載された名簿が例年より少数だったためもあり、登録馬の指名/入札をめぐって様々な権謀術数、悲喜劇が見受けられたことでしょう。
まずディフェンディングチャンピオン中西祐、及び不肖の父中西昌氏。6月の打ち上げにおいて「圧倒的な資金力でクラシック総なめを目指す」と宣言したにもかかわらず、入札は完敗でした。中西祐氏はシャダイアイバー産駒オークツリー(ちなみに中西昌氏はこの馬の兄ポールポジションで大西氏に競り負けた経験を持つ)の指名には成功したものの、自信を持って選んだディスコホール/ワンステップアップが取れず、不本意極まる状況。しかもディスコホールは芝氏と全く同じ入札額だったため、規約第5条第4項の規定で芝氏に優先権が与えられるという結果となっています。一方中西昌氏も当初から目当てにしていたチョウカイステージで競り負けるまど、ラインアップとしてはかなり寂しくなった感があります。また、マティリアルの弟エアサヴァリンが無競争だったあたり、本人は逆に気弱になっているご様子。
抱負:ニホンピロで桜、オークツリーで樫の女王を狙う。かかってきなさい(中西祐)
子供に全て託します(中西父)
立川氏はハギノトップレディ産駒、ワンステップアップというあたりで負け、結局牝馬ばかりのメンバーとなりました。こんなことならエアジョーダンをもっと上位にしておけば良かったと後悔しているところだそうです。
抱負:タカラファンタジーで絶対桜花賞を取りたい。宮崎さんのハイエルプスとはいずれ安田記念で決着をつけたい。
BRAのご意見番、大西氏。宣言通り負ける勝負はしませんでした。しかも強烈なブラフをかませてのものだけに喜びもひとしおでしょう(詳しくは田中氏の解説を見よ)。しかし、昨年の暴挙に恐れをなしたのか、今年の重複馬はハギノグランドール、レオサリュートの2頭のみ。本人は安い買い物だったと言っています。
抱負:今年もルドルフの仔でダービー制覇を目指す!!この血統がいずれ日本で、世界の主流であるノーザンダンサー系に取って代わるその日まで、ルドルフ命!!
川桐氏は英国へ長期遠征のため当分の間、お休みです。
抱負:しばらくの間、本場で馬を見る目を養ってきます。洋行帰りはこわいぞよ。では、皆様お元気で。
五十嵐氏はワンステップアップで負けたため、奇しくも5頭全て5500BCUの馬となりました。それにしても、母馬の名前がやたらかっこいいことにご注目。マーメイドタバンは宮崎氏に競り勝ったものです。ノーザンテースト、スリルショー、リアルシャダイ。相変わらずダイナース血統へのこだわりが感じられます。
抱負:もし、希望通りに取れたら、関東が牡2頭、関西が牡1頭、牝2頭と完璧なライン。希望通りじゃなかったら、でも、まあいいか。
広瀬拓氏は、自分のことより、ほとんど全権を委任されて馬を選んであげた田中氏の完敗が気にかかっている様子。本人はこれでBRA開始以来、競合して負けたことは一度もないそうですが、すっかり気を落としています。登録馬に関して言えば、タクノキングのロイヤルタタンはともかく、現在勢いのある種牡馬産駒がバランスよく指名されていて好感が持てます。
昨年入札過程で4敗し、悲しい思いをした工藤氏。今年もかなりの激突をしましたが、予定通りの5頭を確保。持ち馬全て勝ちあがりの記録をどこまで伸ばすことができるでしょうか(ちなみに彼女のリストアップ馬−補欠を含めて−は過去9頭中8頭が勝ち上がっています。天才です!今年もランディーバーン/レオサリュート/モンドあたりを指名した人はかなり期待できそうです)。個人的にはニホンピロジョージを500アップで指名できたのはラッキーという感じでしょう。
抱負:ブっちぎりか、ボロ負けか。
毎年、なんでこんな馬が活躍するんだという西山氏。彼も馬を見る目には定評がある一人ですが、今年は思い切って社台のオーソーリアルを指名。吉と出るか、凶と出るか。カルメンシータには本人かなり自信を持っていたようですが、残念ながら宿敵佐々木氏に持っていかれてしまいました。
昨年度、最大被害者乙川氏。今年はサクラユタカオーと心中を決め込んだようです。しかも指名馬全て、オープン馬を兄弟に持つという、言ってみればミーハー的作戦。残念なのは、大学の後輩広瀬拓氏にサクラバクシンオーを取られたことでしょうか。注目は、ビッグファイトの妹、ルビーパッション。これは速そうだ。
抱負:一頭でもクラシックに乗せたい(乗ったら走ってもらいたい)。トータルでプラス決算になるようがんばる。新潟競馬観戦ツアーを大々的に行う。
宮崎氏は今年は復活をかけています。アラブに遅れたといわれるハイエルプスを中心に、柔軟性のある配合(悪く言えば、思想のない配合)を揃えました。チョウカイステージは覚悟の敗戦とは言え、マーメイドタバンを軽く見ていたのが悔しそうです。モンドは荻野調教師のラッパに乗ったようですが、あの人は生涯最高のデキが年間何回もありますからねえ。
抱負:ホクトビーナスの悔しさは今も忘れない。今度こそ善臣とホクトヒショウの仔で桜をもらう。ハイエルプスは愛する女性の子供のようなもの。無事でいてくれれば、それで結構。
打ち上げでさんざんウンゼンは私のものよ、と牽制していたキッズ姫。おめでとうございます。心配なさらずとも誰も指名なんてしませんて。果たしてその名のとおり爆発するでしょうか。5頭ともすんなり決定ですが、注目はこの兄弟初の牝馬ハートフルスピーチ。切れ味が売り物の血統だけに楽しみです。無競争だったゆえ、経費にもお手頃感が漂っています。
抱負:持ち馬が全部出走し、そのうち何頭かが重賞レースを賑わしてくれれば、それ以上言うことなし。
本年度最高落札馬は高橋功氏が勝負を賭けたワンステップアップ。驚異の2億円アップ。総勢7名の競合にあっさりとケリをつけてくれました。毎度ありがとうございます。パープルティアラが無競争だったのは意外と言えば意外。たいしたスピードだと思いますが・・・。
萩原氏は、恒例の中国遠征(年間4ヶ月ぐらい行っているのではないかしら)。ただ本人やる気は十分だったようなので、事務局が特例を認め、帰国後、相談の上指名馬を決定する権利を与えます(つまり、「その馬は取ったらアカン」ぐらいは言うつもり)。
今年の驚きは大西氏より、むしろこの人かも。芝氏、勝負に出ました。昨年まで、なんてシブい馬を・・・という感想を持たれていましたが、今年は一気に大衆激突路線。本指名馬が他人と競合するという経験は4年目にして初めてのことです。しかもよりによって、本指名4頭全てが競合するという間の悪さ。そこを2勝2敗で乗り切ったのだから、まあ良しとしますか。ディスコホールはラッキーの一言です。トップレディ産駒にはダイイチクルスの分も頑張ってもらわなくちゃね。
抱負:「何とかしたい」と思います。
毎年稼動数が著しく悪い広瀬泰氏。今年は名付けて、「馬を見る天才」マイネルの岡田さん作戦。しかしミスワキっていったいどんな種馬だ?加えてドウカンヤシマ!・・・ドウカンヤシマ・・・。別に悪いとは言わないけど、補欠馬の金額合計が、本指名馬の合計の倍以上というのは前代未聞ではないかい。まあ、タマモクロス、ホウヨウボーイの甥にあたるドラゴンダンサー、ウイニングカセットあたりは、当たればシブイと言われるのでしょうね。
抱負:頭を絞り、買い目を絞ってビシッと当てる。
悲劇で言うと、中西親子と並ぶのが佐々木氏。昨年の屈辱を晴らすべく、過去の所有馬ライトアート、フォークダンサーの兄弟から遂に現れた勝ち馬ディスコホールを落としてまで、勇躍揃えたラインアップがボロボロになってしまいました。カルメンシータを西山氏との競り合いで勝ち取ったのは良しとせよ、本指名、補欠指名合わせて6敗とは・・。一発の期待は、ニッポーテイオーの弟(ノーザンテースト産駒)。ただ一体どこにいるのやら。どなたか情報を知っている方は事務局までご一報ください。
天国と地獄を見た男、篠原氏。今年も少数精鋭。仕上り優先の2頭です。ニホンピロジョージなんて600万アップで取れたのに、淡白な性格が災いしましたかね。ヒデノリードの母サンエイホープは桜花賞シリーズで、サーペンスールのハナを叩いた馬。いかにも平坦スピード血統です。
さて新入会員組ですが、浅井氏、きっちりした性格です。エントリー用紙に想い出の馬ギャロップダイナの写真が貼ってあります。ところが、ラインアップにはギャロップダイナの産駒がいません。どういうこっちゃ。五十嵐氏と同じくダイナース色の指名ですが、注目はグランドリアル。母は早熟且つ息の長い成長力を見せた名牝。リアルシャダイのスタミナがどんな活力を与えてくれたでしょうか。
高橋誠氏。なぜか関西馬ばかりの指名です。まあ、最近は関東のレースでも関西馬が勝ちまくっていますから寂しくはないでしょうが。アテネはダイナオリンピアの弟で、父ブレイヴェストローマン。ダートの鬼という感じですが、いかがかな。想い出の馬はミスターブランディ。
ハッピースズランにいったいどんな想い出があるのか、是非聞いてみたい多田氏。まるで、ありし日の芝氏のようなラインアップです。昨年クラシックを席巻したイイデ軍団ですが、今年2匹目のどじょうがいるでしょうか。
新人会員ながら、強敵相手に堂々と戦った田中氏。競馬暦ゼロからのスタートです。作戦参謀に広瀬拓氏を迎え、ワンステップアップでは敗れたものの、チョウカイステージでは昨年チャンピオン中西祐氏を撃破しました。ハギノグランドールについては、相手を大西氏一本に絞り、1億5千万アップで挑戦しようと構えていたところ、気をきかせた広瀬拓氏が、隠密裏に大西氏へ接近。「大西さん。田中氏の代理人として正々堂々たる勝負を申し込みます。」と宣言したところ、あっさり、「ハギノグランドールなんてとらへんで。」というブラフをかまされ、急きょ入札を変更。見事に足下をすくわれてしまいました。まあ、薩摩の次元流と同じでかわされると腰がくだけちゃうというのが、若さでしょうかね。スピード型から、万能、スタミナ型と3頭ながらバランスが取れたラインアップです。
佐々木氏紹介の福田氏は、新人ながらかなり鋭い。それぞれ、人気の盲点的馬を揃えました。中でもキャノンボールラグは東京マイルをレコード勝ちした母にクラシック向きモガミの配合。距離が持つかどうかが鍵ですが、魅力たっぷりです。
詳しい血統、価格の情報は付表を見ていただくことにしましょう。大まかな今年の特徴は次のようなものです。
1.札幌組が大人気。1回札幌デビューがなんと8頭!この勢いで札幌3歳S上位独占も。
2.メジロ/サクラの不人気。メジロ2頭/サクラ1頭のみ。
3.どこへいったのトウショウボーイ。指名ゼロ!シービーも1頭だけ、マルゼンスキーもゼロ。
4.お馴染み血統の売れ残り。トウショウデュオ/ニホンピロテイオウ/メジロカイモンetc。
さて、ここまできて、タイトルの意味がわかっていただけましたでしょうか。そうです。なんと本年度高額落札馬1位、2位がいきなり新馬でぶち当たってしまいました。しかも伊藤雄/修調教師の親子対決、河内/豊の兄弟対決も加わって、まあ盛り上がったのなんの。レースはもう1頭の有力馬タイガーエースを加えた3頭の激戦となり、勝ちタイムもレコードにコンマ1秒という優秀なもの。結果、タイガーエースをつかまえたワンステップアップが抜け出したところを、グランドールが凄まじい末脚で突き抜けるということになりました。とにかく現時点での完成度ではグランドールが完全に上という感じ。ただ、ワンステップアップもレースに勝って、勝負に負けたという印象でしたから、この2頭の今後には目が離せません。
その他の馬のレポートは次号でまとめて行います。
今年は、昨年中西祐氏がオークス出走/重賞2勝の記録を作ってくれましたので、とりあえず久々にクラシック制覇が見出しになることを祈っています。では来月は、昨年やれなかった馬名解説がやりたい、やろう、やれればいいなあとフェイドアウトしながらさようなら。