代理関係 |
Q代理行為における意思の欠缺の場合、基準になるのは誰か? (97年度) A原則は代理人です。 Q私的自治能力と事理弁識能力の関係は? (97年度) Aほぼ同じ意味で使っていますが、前者が法律行為の可能性を前提にしているのに対 して、後者は、事実行為の可能性をも前提にした用語です。 Q私的自治能力と行為能力と置き換えると問題はあるか? (97年度) A私的自治能力の方が概念としては広いです。意思能力と私的自治能力は置き換え可 能な場合もありますが、私的自治能力というのは、なるほど、ややあいまいな概念かも しれません。 Q代理権と他人効の関係如何? (97年度) A他人効を生じる法制度の代表が代理だということです。他人効を生じさせる制度は他 にもいくつかあります。 Q任意代理の場合代理権の範囲はどのようにして決まるのか? (97年度) A基本的には、代理権の授与の趣旨を含む事務処理契約の解釈によって決まります。 解釈の具体的な方法は契約法で聴いて下さい。 Q代理権が将来に向かってのみ消滅するとはどういうことか?(97年度) A代理権を前提にしてすでになされた行為の効力は代理権消滅の影響を受けないとい うことです。 Q白地補充権とは何だ?(97年度) A委任状の中の白紙の部分を埋める権利のことです。 Q本人にだまされて代理人になるというのは、具体的にはどのような場合か?(97年度) Aたとえばいんちき商法をやっている人の手先になってしまうような場合です。自分はよ いものを売っていると騙されて思い込んでいるが、実はとんでもないものを売っていた 場合を想定してください。 Q代理権濫用に関する学説の部分がわからない (97年度) Aこの点に関する学説にはさまざまなものがありますが、とりわけ重要なのは、相手方 は善意でありさえすれば保護されるという考え方です。これは、四宮先生が採られる考 え方ですが、93条の類推適用では、この結論は出しにくいので、信義則という一般条 項に頼ります。信義則については一番最後の講義で説明するつもりですが、さしあたり は教科書を読んでおいて下さい。 Q代理人が私腹を肥やすために行動していたことを相手方が知っていた場合にはどう なりますか? (97年度) Aどの説を採っても、代理行為は有効には成立しないということになります。要するに、 本人には代理行為の効果は及びません。 Q主観的態様という用語がわからない (97年度) Aたとえば、善意悪意・故意過失・害意等の事柄をさします。 Q復代理の場合、丙と乙の間の関係はどうなるのか? (97年度) A丙と乙の間には特に法律関係は生じません。 Q委任状は誰が交付するのか? (97年度) A本人にあたる者です。 Q法定代理人と任意代人の区別がわからない (97年度) A法律の規定によって選任されるのが法定代理人(未成年者に対する親権者等)本人 が選ぶのが任意代理人です。 Q代理権濫用のところで逃げた乙を探し出せば、丙は代金の支払いを求めることができ るのか? (97年度) Aできます。しかし、たとえば乙が破産していた場合は結局だめです。 Q復代理の場合のやむことを得ない事情とはどういうことか? (97年度) A重い病気で動けなくなった場合などです。 Q復代理人の選任はどういうふうに行われるのか? (97年度) A事実上本人の氏名がある場合もあれば、まったく代理人が選ぶこともあります。 Q双方代理を本人も相手方も承認している場合はどうなるのか? (97年度) A双方代理は有効です。 Q代理権を生じさせる事務処理契約の取消と代理権の消滅の関係が分からない (97年度) Aまず、契約の取消(精確には契約を構成する意思表示の取消)の効果は遡及的無効 (民121条)であることを思い出してください。その上で、代理権がその根拠たる事務処 理契約と同様に遡及的に消滅するとしたのでは、相手方丙の利益を害することになる ので、代理権は将来に向かってのみ消滅するとするわけです。 Q代理契約における意思の欠缺及び瑕疵の判断の基準であるが者が本人である場合、本人は自分の錯誤を理由に契約の無効を主張できるのか? (97年度) Aできます。本人が基準だというのは、まさにそういうことです。但し、言うまでもないこと ですが、本人の錯誤は要素の錯誤にあたるものでなくてはなりません。 Q「第三者」無過失でなければ保護されないのはきびしすぎないか?(98年度) A場合によると思います。条文も使い分けをしています。 Q本人が無権代理人に責任を追及することはできないのか?(98年度) A不法行為法に基づく責任追及は可能です。 Q教科書221頁の1行目から4行目は何をいっているのか?(98年度) A基本権限が「代理権」であることを要するか、必ずしも要しないとするなら、どのような基本権限が表見代理成立の要件としての基本権限たりうるのかということを議論しています。 Q受任者白紙委任状の「当事者の予定している範囲」というのは曖昧ではないか?(98年度) A少なくとも第三者の側から見れば非常に曖昧だと思います。だからこそ表見代理によって第三者を保護する必要が生じるわけです。 Q権限踰越ということがよくわからない。(98年度) A現在の通説を前提にすれば、「代理人」が現に為した行為に他人効をもたらす根拠は存在しないが、「代理人」は本人から何らかの事務を委託されていた場合だということになります。 Q無権代理の意味がわからない。(98年度) A広くは、代理権を授与されていない人が代理行為と称する行為をなした場合一般を指し、狭くは、そのような場合のうち民法113条から117条の規定のみが適用されうる場合を指します。 Q表見代理の根拠に関する、かつての通説と近時の有力説は具体的にどこが違うのかがよくわからない。(98年度) A本人に帰責性がない場合でも、表見代理が成立する余地があるかどうかという点で違いが生じます。もっと具体的にいえば、典型的には、法定代理の場合に表見代理が成立するかという問題について、かつての通説によれば表見代理の成立の可能性がありましたが、近時の有力説によれば、表見代理の成立の可能性はないことになります。 Q110条の説明のところで「本人にそれなりの理由がなくうばわれることがない」とはなにがうばわれないのか?(98年度) Aすみません。ことばがたりませんでした。本人に属する権利です。 Q有権代理と表見代理の区別がわからない。(98年度) A有権代理というのは、代理権を有するものが代理権に対応した代理行為をなす場合をさし、表見代理というのは、「代理行為」に対応する代理権が実はなかった場合であるにもかかわらず、特別の根拠に基づいて、本人の追認を要することなく、有権代理と同じ法律関係を本人と第三者の間に生じさせる場合を指します。 Q代理権濫用の問題で、相手方が代理人の真意を知っているだけでどうして悪意と評価されるのか?(98年度) Aくれぐれも間違えないでください。法律用語の悪意とは事情を知っているという意味です。 Q自己契約がわからない(98年度) A代理人自身が本人から見て相手方を兼ねることです。 Q代理人が禁治産者になった場合どうなるのか?(98年度) A民法111条1項をみよ。 Q代理権濫用の部分の学説がよくわからない。(98年度) Aぼくが説明していないからです。興味のある人は、四宮先生の教科書等を読んでみてください。 Q任意代理で復代理人の指名を本人が行った場合の代理人の責任が「無い」ではなく、「軽減」にとどまるのは、法定代理の責任関係からみると納得できない。どうしてか?(98年度) A本人が代理人の責任をなしとしたいのなら、自分でもう一人普通の代理人を立てればよいはずです。あえてそうしないのは、本人はやはり代理人にも一定の責任を残したいと考えるからであり、他方、代理人の側も一旦は仕事を引き受けたのだから、自分一人の都合で降りることは許されるべきではないからです。 Q相手方から本人への贈与で本人が代理人を立てるのはかまわないのですか?(98年度) Aかまわないです。 Q代理権消滅の場合には代理権授与の時のような形式はあるのか?(98年度) A普通はありません。 Q代理権の消滅原因の中になぜ準禁治産宣告がはいっていないのか?(98年度) A準禁治産者は禁治産者とは異なり、法律上は制限された形ではあるものの財産管理能力をもっているからです。 Q「役務」という言葉の意味がよくわからない。(98年度) Aホテルマンがが宿泊客にサービスするという場合のサービスとほぼ同じ意味です。 Q代理権の濫用が問題になる場合に代理人の意図を相手方が知っていた場合にはどうなるのか?(98年度) A判例の準則によれば、代理行為の効果は本人には帰属しないことになります。 Qなぜ移転登記申請時の司法書士への登記事務委任が双方代理の禁止にあたらないのか?(98年度) A登記事務委任の場合には、司法書士のなすべき事柄は法律上具体的に決まっており、いわば司法書士が頼まれた仕事にかこつけてズルをする余地がないからです。 Q「やむを得ない事由」とはなにか?(98年度) A場合によって異なりますが、復代理人の選任の場合には、代理人が急病で動けなくなった場合などが典型です。 Q自己契約・双方代理の説明のところで本人の利益のことだけがふれられているが、相手方の利益は考えなくてよいのか?(98年度) A自己契約の場合は、代理人自身が相手方になるわけですから、考える必要はないです。双方代理の場合には、相手方の利益は問題になりますが、相手方も相手方の立場から考えれば問題の取引についての本人ということになりますから、その平面で問題を考えれば足りることになります。 Q復代理人は何人でも選任できるのか?(98年度) Aできます。 Qなぜ、任意代理の場合には、行為無能力者も代理人になれることが認められているのか?単独で有効な法律行為をすることができない未成年者に代理権を授与することは妥当なのか?(98年度) A未成年者が自己の名において法律行為をする場合には単独ではこれをなしえませんが、 代理行為は単独で有効になしえます。これは、あぶなっかしいといえばあぶなっかしいのですが、代理行為の行為は代理人には帰属しませんから、もともと未成年者たる代理人の保護は問題になりません。問題は、本人が不当な契約に拘束されるのではないかということですが、これも、あえて本人が未成年者を自ら代理人に選任したのだから、本人がリスクを背負うのは当然と考えるべきです。 Q代理権の濫用の場合の代理人は罪には問われないのか?(98年度) A問われると思いますが、それは刑法の問題です。 Q任意代理と法定代理の意味が分からない。(98年度) A本人が自ら代理人を選任する場合が任意代理、本人のために法の規定によって代理人が選任される場合が法定代理です。 |