95条関係
Q 要素の錯誤とは? (97年度)
A 民法95条にいう無効が認められるような錯誤ということです。講義で再三説明したように、どのような事柄が要素の錯誤にあたるかということ決めるための判断基準の立て 方に二通りがあるわけです。

Q 要素の錯誤と表示の錯誤、意思欠缺の関係は? (97年度)
A 意思欠缺というのは、意思教説を前提とする概念であり、表示行為にきちんと対応する効果意思が欠けている場合を指します。従って、表示上の錯誤と表示の意味内容の錯誤を包摂する概念です。要素の錯誤から、要素の錯誤性を認められる動機の錯誤を除いた残りの場合が意思欠缺の場合です。

Q 同一性の錯誤とは?同一性の錯誤の場合、契約の効力はどうなるのか? (97年度)
A あるものの性質を誤解したのではなく、そのものであるということそれ自身を誤解した ということです。典型的には同姓同名の人違いです。修正された伝統的通説は、これは動機の錯誤ではなく、表示の意味内容の錯誤であるとし、そのような錯誤がある場合には、表遺者に常に錯誤無効の主張を認めます。

Q 属性の錯誤とは? (97年度)
A あるものの本体部分について誤解はないが、そのものが伴っている性質の点に誤解がある場合を指します。伝統的通説は、これを動機の錯誤の一種と考え、原則として要素の錯誤ではないとします。他方で、伝統的通説、少なくとも修正された伝統的通説 は、あるものの本体部分についての誤解は同一性の錯誤として要素の錯誤であるとしますから、何が本体部分の誤解で何が本体に付属する部分の誤解かの判断が重要に なります。しかし、私はその区別は容易ではないと考えます。

Q 批判説においては相手方が表意者の錯誤に気づかなかった場合にはどんな場合で も「要素の錯誤」を認めないのか? (97年度)
A そうです。批判説は錯誤の種類はあまり気にしませんが、相手方の知不知は気にし ます。

Q 買主が心の中で勝手に「駄馬をナリタブライアンの子だ」と思い違えただけで相手に動機の内容が表示されていなかったとしたら、民95条は適用されないのか? (97年度)
A 伝統的通説によれば95条適用の余地はなく、批判説でもまあ、だめでしょう。

Q 結局どんな契約にも、我々が意識していないだけで、自然効力的に意思教説が働い ていると考えてよいのか? (97年度)
A そのように考えるのが意思教説という考え方です。

Q 意思欠缺の場合、結局契約は有効なのか無効なのか? (97年度)
A 伝統的通説によれば無効です。批判説によれば、無効なときと有効なときがあります。どうしてそうなるかは自分で教科書を読んで考えてください。

Q 貸し主借り主の同一性性状の錯誤とは? (97年度)
A 同一性の錯誤とは借主貸主がだれかということの誤解であり、性状の錯誤とは、貸主借主の人柄・財産状態を誤解していた場合です。

Q共通の錯誤とはなにか? (97年度)
A契約の当事者の両方が共通の思い違いをしている場合をさします。

Q同一性の錯誤の意味がわからない。(98年度)
A典型的には人違いのことです。

Q性状の錯誤(=属性の錯誤)の意味がわからない(98年度)
A取引の対象や相手方の性質に関して錯誤がある場合のことです。たとえば、中古のモーターが100馬力でると思っていたのに、実際には30馬力しかでなかったという場合やお金を貸す相手方が十分返済能力のある人だと思っていたのに、実際にはそうではなかったという場合です。

Q「要素の錯誤」自体はどういう意味か?(98年度)
A錯誤無効の原因になる錯誤としかいいようがありません。要は、条文の言葉として、「要素の錯誤」という言葉があり、どのような事態がその言葉に当てはまるかを判断する基準の立て方が二通りあるということです。

Qレジュメページ29ページの効果「無効とす」の無効を主張しうる者に関する鈴木・内田説は95条但書の場合にも表意者に無効の主張を認める趣旨なのか?(98年度)
A違います。いずれにしても表意者に重大な錯誤があった場合には表意者は錯誤無効を主張できません。また、表意者に重大な錯誤がある結果、表意者自身が錯誤無効を主張できない場合には、他の者も錯誤無効を主張できなくなり、その結果、実際にはだれも錯誤無効を主張できなくなるというのが、現在の通説です。

Q強迫の違法性に関する記述のうち、警察官の行動が手段として不相当と評価されている部分が納得できない。(98年度)
A警察官が刑事事件としての詐欺脅迫事件を捜査するために適正法定手続に従って被疑者を拘束したのなら、警察官は職務を適切に遂行したということになりますが、この事件の場合には、民事上の問題を処理するために警察官が介入しています。これは、警察官に許された職務ではありません。それゆえ、警察官の行動は手段において違法と評価されることになります。

Q無効にも取消権についてあるように消滅時効があるのか?また、追認のような規定はないのか?(98年度)
A無効には消滅時効はありません。また、追認ということも法文上はありません。但し、追認に関しては、無効な行為の追認とよばれる準則が判例上認められています。詳しくは、教科書の無効と取消の節を読んでみてください。

Q契約の締結を拒絶しようとして「いいです」「けっこうです」といって、両当事者間で意味の取り違えがあった場合、契約は無効か?(98年度)
A難しい問題ですが、そもそも言葉の解釈の側面でも問題になるでしょう。

Q瑕疵担保責任と錯誤の関係に関するレジュメの記述の意味がわからない。(98年度)
Aぼくが瑕疵担保責任を説明していないからです。契約法の講義で瑕疵担保責任に関する聴くか自分で勉強した後でもう一度レジュメを読んでみてください。

Q金銭消費貸借が詐欺・強迫により取り消されて遡及的に無効となった場合、どのような形で後始末がされるのか?(98年度)
A「借主」と「貸主」の間には給付不当利得関係が生じ、借主は貸主に対して即時に借りた金額に相当する金額を払わなければなりません。但し、契約は無効になっているわけですから、利率の取り決めがあったとしても、その取り決めは無効となり、即時に支払わない場合には法定利率による利息の支払いをすればよいことになります。


Q要素の錯誤が認められない場合でも、甲があえてこの取り引きは無効にしましょう、といってくれたら、取り引きは無効になるのか?(99年度)
A合意解約という形で契約上の義務は消滅することになります。

Q今回の問題は「代金を支払って手に入れたと」とあり、売買契約が締結されているわけですが、意思表示だけがある段階では、売買契約は成立したと言えるのですか?(99年度)
A売買契約は諾成契約ですから、「売る」という意思表示と「買う」という意思表示があれば成立します。

Q甲を保護するようなものはなにかないのですか?(99年度)
Aいずれの学説にしたがって考えるにせよ、結局のところ、「要素の錯誤」の有無の判断の中に甲の保護のファクターが読み込まれています。

Qレジュメで、無効に「なりやすい」というようにあいまいな言い方になっているのはなぜか?(99年度)
A要素の錯誤といえるためには、その錯誤が契約の締結を左右する重大なものかどうかが問題になるから、
 伝統的通説においても、表示の錯誤が即要素の錯誤とは言えないからです。

Q解答に条文を書いた方がいいですか?(99年度)
A余裕があれば書いた方がいいです。最低でも、条数は書いた方がいいです(例 ○○条)。

Q錯誤無効の効果は通謀虚偽表示の場合と同じか?(99年度)
A同じです。

Q錯誤の効果が無効ではなく取り消し可能になることはあるか?(99年度)
Aないです。

Q売買契約締結時に、あらかじめ甲が契約締結後はその無効は認めないと乙にいっていた場合はどうなるのか?(99年度)
A95条は強行法規と解されていますから、甲がそういったとしても、法的には効力はありません。

Q住宅の販売広告にて、近年電車が開通予定とあったので、家を購入したところ、確かに開通予定はあるが、5年後に開通予定であったので、家の契約を解約しようと考えた。これは、要素の錯誤にあたり、契約の無効を主張できるでしょうか?(99年度)
Aこの事案だけではなんともいえません。場合分けが必要です。