93条、94条関係

Q無効を「対抗する」ことを得ずとは、どういう意味か? (97年度)
A94条2項に即していえば、真の権利者AはBと取り引きして登記名義を得たCに対して、自分が権利者であることを法律上主張できない、という意味です。この場合、逆にCの側から、あえてAの権利を認めることは法律上許されます。「対抗要件」というのとは 少し意味がちがうことに注意してください(もっとも、この点に関しては、本当はかなり厄介な議論があります)。

Q94条二項によって保護される第三者は登記を備えていることを要しないというが、そういってしまったのでは、第三者の立場が強くなりすぎないか? (97年度)
A真の権利者Aとの関係では、確かにそういうことはいえるかもしれません。しかし、A がうまく立ち回って登記名義を取り返した(回復した)後に、その権利をまったく別のEに譲渡し、Eが登記を備えると、CはEには負ける結果となります。したがって、いずれにせよ、Cは登記名義をとっておかなければ安心できないことに変わりはありません。もっと も、この点については微妙な問題もあります。四宮先生の教科書の94条に関する部分の注を読んでみてください。

Q94条2項によってCが保護される場合、Bはどのような立場に立つのか? (97年度)
A通常は、Aに対して不法行為または債務不履行により損害賠償責任を負うことになります。

Q善意の第三者Cが悪意のDに不動産を譲渡した場合、AはDに対して権利を対抗でき る(=法律上主張できるのか?) (97年度)
A難しい問題ですが、一般的にはDの権利取得が認められると解されています。四宮先生の教科書の94条2項に関する記述の中の部分を読んでみてください。

Q一般給付不当利得法とはなにか?また、94条の場合に708条が適用されないのは納得できない。 (97年度)
A708条が適用されない、一般の契約関係の巻き戻しの関係をいいます。94条の場合 に708条が適用されるかについては議論のあるところです。判例は、708条の準則を あまり適切でないと考えている節もあります。

Q「善意」「悪意」とはなんのことか?(97年度)
A「事情を知っている」=「悪意」、「事情を知らない」=「善意」です。諸君が知っている 用語法とは違います。いま、しっかり覚えてください。

Q「悪意の第三者」という者はあり得ないのか? (97年度)
A当然ありえます。ただ、そういう人は通常は保護されないというだけのことです。

Q放置型の場合、真の権利者に落ち度は少ないといえるのか?(97年度)
A実体に合わない登記をそのままにしておくことに積極的に加担したり、承認した場合よりは少ないといえます。だから、判例は、この場合には第三者に善意だけではなく無過失も要求しているわけです。

Q放置型の場合第三者C(プリントに引用した判例ではD)が保護されるためにはCはなぜ単に善意であるだけでは足りず、無過失であることも要求されるのか?(98年度)
A真の権利者の帰責性の度合いが他の場合より小さいからです。

Q仮登記とはどんな制度か? (98年度)
A本登記の順番をあらかじめとっておくことなどに使います、具体的には物権法の教科書を開いてください。

Q他人外形作出型中のの二つの区別が付かない? (98年度)
A現実には微妙なので、そう感じるのかもしれません。Bが勝手にした登記に気づいたAがそれを承認したか、あえてほっておいたかの違いです。

Q「何らかの意味で真の権利者に起因する」とはどういうことか? (98年度)
A虚偽の登記が世の中に出ることに、何らかの点で真の権利者も絡んでいたということです。

Q「無過失」とはなにか? (98年度)
A落ち度がないということですが、難しい問題です。不法行為の教科書を開いてみてくだ さい。

Qなぜ93条但書の場合に94条2項を類推適用するのか? (98年度)
A実体法上の権利状態と違う登記が世の中にあるということに、真の権利者の行動が 寄与しているという点で両者が共通するからです。

Q外形他人作出型のβにおいてBの本登記に改めたことはAの承諾を得なくても有効なのか? (98年度)

A無効です。ただし、94条2項類推適用により善意無過失の第三者に対してはAは無効を主張できなくなるということです。

Q心裡留保但書のと虚偽表示の違いがわかりません。また、実際の裁判ではどうやって証明するのか? (98年度)
A真意と異なる意思表示を一人がして、相手が真意と違うということに気づいていたまたは気づいてしかるべきだった場合が93条但書の場合、最初から通じ合っていた場合が 94条の場合です。もちろん、実際の裁判の場合は、事実認定は微妙です。

Q教科書128頁の2例外のところで乙に悪意がなく偶然聞いて知ってしまったときはど うなるのか? (98年度)
A善意悪意という術語を正確に理解してください。偶然聞いても悪意です。

Q善意と善意無過失の区別がわからない。(98年度)
Aただ善意というときには、事情を知らないことをいいます。事情を知らない理由は問われません。善意無過失というときには、果たすべき注意義務を果たしたにもかかわらず、事情を知ることができなかった場合を指します。善意という概念は善意有過失と善意無過失の両方を含むと考えてください。

Q94条2項の類推適用のところに出てくる無過失とはなにか(98年度)
A注意義務を尽くしたことです。この場合には不動産売買に際して買主がなすべき調査を買主がきちんと行ったということです。

Q外形他人作出型のうち、第三者が信じた外形に真の権利者による承認が与えられていない場合、なぜ第三者が保護されるために善意だけでなく、無過失が必要とされているのかわからない。(98年度)
Aこの場合には、真の権利者は虚偽の外形を作出することには関与しているものの、第三者が信じた外形そのものの作出には関わっていないので、注意を尽くした第三者のみが権利を取得する、即ち、そのような第三者が登場した場合だけ、真の権利者は権利を失うことになる、とすべきだということです。

Q無効と取消可能の実質的な意味の違いがわからない。(98年度)
A本当は難しい問題ですが、無効の本来の意味は、「問題の法律行為はそもそも存在しない→利害関係を有するものは誰でもその法律行為の無効を主張できる」ということであり、取消可能の意味は、「取消可能な法律行為は法律が特に定めた取消権者が取消権を行使しない限り、有効に存在する。従って、取消権者が取り消さない限り、他の者は、その法律行為を有効な者として扱わなければならない」ということです。但し、錯誤のところで説明したとおり、解釈上、無効の一部が取消に近づけられてきていることに注意すべきです。

Q94条2項によって第三者が権利を取得する場合、仮装譲渡人は仮装譲受人に損害賠償を請求できるか?(98年度)
Aやや微妙な問題もありますが、一応できると思います。

Q外形自己作出型と外形他人作出型の違いがわからない。(98年度)
A第三者が信頼した虚偽の外形(真の権利者以外の名義の登記)を作り出したのが真の権利者自身かそれとも他人かということです。

QBの信用増大のためAの不動産についてAがBにB名義の仮登記をする事を許したところBが勝手に本登記をなしたというのは、なぜ94条に当たらないのか?(98年度)
A仮登記に関してはまさに94条にいう通謀があったことになりますが、Aは本登記を許したわけではありませんから、本登記に関してはAとBの間に通謀があったとはいえないからです。

Q例にあがるのは不動産ばかりだが、動産はどうなるのか?(98年度)
A動産の場合には、善意取得と呼ばれる動産のみに適用される特別の規律があり、ほとんどの場合にはそれによって処理されます。詳しくは物権法で聞いてください。

Q外形とか作出とかいう言葉の意味が分からない(98年度)
A94条2項の類推適用の場面では、外形とは虚偽の登記のことであり、作出とはそのような登記をすることです。

Q執行回避のための不動産の仮装譲渡の例で仮装譲渡の譲受人の気が変わって、債権者に不動産を引き渡してしまった場合、この不動産は本来債権者の手に渡るべきものなので有効になるのでしょうか?(98年度)
A債権者が提起したBに対する所有権不存在確認・移転登記抹消請求においてBが請求を認容した場合には、登記名義はAに戻り、それを執行裁判所を通じて債権者が差し押さえることになります。

Q履行義務消滅とはなんだ?(98年度)
A契約上負っている義務を果たさなくてよくなったということです。


Q94条2項が問題になる場合に、仮装譲受人は罰せられないのか?(98年度)
Aたぶん罰せられることになると思いますが、詳しくは刑法各論で聞いてください。

Q強行法規の意味?(98年度)
A当事者の取り決めに優越する法規です。利息制限法1条が典型です。

Q仮装譲渡の目的物が金銭だったらどうなるのか?(98年度)
A金銭は財産としては特殊で、占有者が常に所有者として扱われます。

Q94条2項によって第三者が保護される場合、仮装譲受人が第三者から受け取った金銭はどうなるのか?(98年度)
A不当利得として、Aに返還されることになります。

Q設問における「信頼すべき外観」はなにか?(99年度)
A「信頼すべき外観」とは、権利がそこにあるという信頼を呼び起こす見かけ上の状態のことです。この場合には、登記名義が乙にあることがそれにあたります。

Q善意無過失とはどういう意味か?(99年度)
A事情を知らないし、かつ、知らないことに過失がないことです。過失の有無の判断は個々の場合で異なりますから一概にいえません。

Q丙が権利取得を保護されない場合、丙にはどのような保護が与えられるのか?(99年度)
A乙に対して契約不履行に基づく損害賠償を請求できます。

Q甲が放置していたということは、本当に帰責性ありと評価されるべきことなのか?(99年度)
A実は難しい問題です。単純な放置の場合は、なお帰責性に乏しく94条2項の類推適用の場合にはならないという考え方も可能だと思います。

Q丙が乙に支払った代金は誰のものになるのか?(99年度)
A乙のものになります。この場合、甲は乙に対して所有権侵害に基づく不法行為による損害賠償請求権を取得します。

Q乙が無断で甲の実印と登記を持ち出して名義を書き換えたことは犯罪行為にならないのか?(99年度)
Aなります。

Q丙が善意か悪意か問題文に書いてなかったので困った。(99年度)
Aそういう場合には、場合分けしてください。

Q類推適用の問題を解く場合には、適用にあたるかどうかは触れずにいきなり類推適用の可否の問題に入ってしまった方がいいのか?(99年度)
A簡単に適用の可否の問題に触れてから、類推適用の問題に入るのが一番いいと思います。


Q94条2項類推適用における帰責性の大小は何に影響するのか?(99年度)
A判例においては、第三者が保護されるべき要件として善意のみで足りるのか、それとも善意無過失まで必要なのか、という点に影響する。

Q虚偽表示と隠匿行為は区別されるべきなのか(99年度)
A基本的には別々のものですが、場合によっては同じ事柄の裏表であることもあります。

Qこの場合は他人外形作出型にあたるのか?(99年度)
Aあたります。