民法90条,91条関係
Q 遺言というのは死ぬときにするものなのだから、不倫関係の継続を目的とする遺贈というのはありえないのではないか? (97年度)
A 60歳を過ぎてはいるが元気なオヤジが20歳くらいの女性にそういう遺言をかいて見せて、どうやったって、自分はおまえより先に死ぬのだから、行く行くは財産はおまえのものになるのだよ、だから今は一緒にいようといって口説く場合を考えてください。


Q 動機の不法が存在することはどうやって証明するのか? (97年度)

A 人の内心のことですから、その存在そのものを証明することはできません。様々な状況証拠から推測することになります。但し、手続法ではなく、判断基準を示す法、即ち、民法をはじめとする実体法の議論をする場合には、人の内心も明らかであるとして、という、仮定に基づいて議論します。したがって、例えば、「Aが善意の場合にどうなるか」という設問があった場合には、Aが善意であるという前提で議論を組み立てねばならず、善意であるかどうかはわからない、という答案は零点です。

Q 動機の不法の他の例 (97年度)
A 人殺しをしようと思って、包丁を買った場合などが典型です。

Q なぜ、契約の一方当事者にのみ動機の不法があった場合には、契約は有効なのか? (97年度)

A それを無効とすると、取引の安全が著しく害さされるからです。刃物の売買なら、売る方もいつも気を付けろといえそうですが、夜道で変態さんをするつもりでレインコートを買った場合に、その売買を無効といってしまったのでは、取引にかかる手数が増えすぎて収拾がつかなくなってしまいます。

Q 動機の不法は契約当事者間に共有されているが、悪性は共有されていない場合、結局、結論はどうなるのだ。 (97年度)

A 判例ははっきりしません。学説は教科書に載っている考え方(相関関係説)が主流です。つまり、いくつかのファクターを勘案してここの事案ごとに決めるほかない、という考え方が主流です。

Q 単なる取締規定の「単なる」とはどういうことか? (97年度)

A 取締規定という言葉を教科書でいう禁止規定という意味に使う人もいるので、混乱 が生じないようにつけています。比較的一般的な用語法です。

Q 一般条項の解釈の仕方と日本人の法意識とは関係あるのか? (97年度)
A 川島説自体が再検証を要すると考えます。詳しくは研究室に来てください。資料を貸 す用意があります。

Q クラブホステスの売掛金の保証契約とはどういうものか? (97年度)
A クラブでの飲食客の料金支払いをホステスに保証させる契約です。しばしば、店の 経営者が自己の優越的地位を利用して、本来店の経営者が負担すべきリスクを弱い立 場にあるホステスに転嫁する目的でなされます。

Q なぜ、競馬は賭博にあたらないのか? (97年度)
A 公営だからです。それ以上は私にも説明できません。

Q 手切れ金と慰謝料の違い (97年度)
A 別れる条件として金銭を提供する場合が手切れ金、慰謝を目的とする金銭の提供が慰謝料です。要するに手切れ金というのは悪いことをやめる見返りとしてお金を支払 っていることになる、悪いこととというのは、お金をもらうまでもなくやめなければならないのだから、そういうお金のやりとりに法的な効力を認めるわけにはいかない、というこ とです。それに対して、慰謝料というのは、今まで悪いことに巻き込んでいてすまなかっ た、という趣旨のお金だからよいのだ、ということです。

Q 譲渡担保とは何ですか? (97年度)
A 担保物権法の教科書を読んでください。

Q 経済的に自立した妾に対する遺贈の効力は? (97年度)
A 難しい問題です。一概には答えられません。

Q 白タク運送の過程で事故が起きたらどうなるのか?(97年度)
A 通常の運送契約の場合と同じです。安全に運ぶという契約上の義務違反に基づく (債務不履行)に基づく損害賠償責任を運送者は負います。

Q 故意に原始的物理的不能を生じさせた場合、それでも契約は無効か? (97年度)
A 契約自体は無効になりますが、故意にそのようなことをした者は「契約締結上の過失」と呼ばれる一種の不法行為責任を負います。詳しくは、債権各論の教科書等の索 引から「契約締結上の過失」という言葉を探して勉強してください。

Q 取締法規に基づく取締を行うのは、警察だけか?
A そのほか、国税庁査察官、麻薬取締官等いろいろいます。刑事訴訟法で勉強してく ださい。

Q 事実問題と法律問題の違い (97年度)
A 裁判をするときの裁判所の作用に関係する問題です。裁判をする場合裁判官は、事 実を認定し、それに法規を当てはめることになりますが、前者の間違いを理由としては 第二審から第三審に上訴することはできませんが、後者を理由とする場合には、それ が可能です。


Q 公法と私法の区別はどうやるのか? (97年度)
A 難しい問題です。行政法の教科書を開いてみてください。

Q 「善良の風俗」とはどういうことか?(97年度)
A 内容のあることばではありません。だからこそ、類型化が必要な訳です。

Q 契約の解釈のところで強行法規違反という項目があり、契約の無効の原因のところでも強行法規違反という項目があるのはなぜか? (97年度)

A契約の一部分だけが強行法規に違反する場合(例 利息の制限)にはその部分だけ の無効ということになり、運送業者の名義貸しの契約のように全体として強行法規に反
するといわざるを得ない場合には、契約全体が無効になる、ということです。

Q法律的不能がよくわからない(98年度)
A強行法規違反と重なる場合が多いですが、たとえば、電気の供給業者がそもそも一定量以下の供給しか認められていない場合(供給契約の締結が禁止されているわけではない)に、それを超える供給契約を結ぶと、これにあたるといわれます。

Q特定の営業を行うことを一定の資格者以外の者に禁止する場合に、この禁止に反する取り引きをしてもその取り引きは私法上有効とはどういうことか。(98年度)
A文字どおりなのですが、民事裁判を通じて契約上の責任を追及できるということです。

Q原始的不能とは(98年度)
A契約締結の時点ですでに不能が生じていた場合です。

Q一般条項だと、どのような価値観でも条文の中に比較的簡単に持ち込める、ということの意味がわからない。(98年度)
A具体的な意味を持った言葉で条文が構成されていると、その言葉の本来の意味とは違うものをその条文に当てはめるためには、かなりの技巧を要します。それに対して条文の言葉が漠然としたものなら、漠然さに付け込めるということです。


Q後発的不能の意味が分からない。(98年度)
A契約締結後に契約の履行が不可能になった場合です。

Q取締法規の分類がわからない(98年度)
A公法的取締法規の中に、単なる取締規定と効力規定がある、ということです。


Q単なる取締規定たる法令に違反する場合であっても、事案の事情により90条違反に
 より無効とされるというときの事案の事情とはどういうことか?(98年度)
Aさまざまですが、不法原因給付の条文の適用が望ましい場合、たとえば、単なる取締規定違反の契約を契約当事者が通謀のうえ締結した場合などです。我妻民法講義266頁等を参照してください。判例としては繭の取り引きに関するものがあります。

Q名板貸し契約が無効ということの意味ががわからない。(98年度)
A名前を貸してやる代わりにお金を払えという契約が無効ということです。

Q公の秩序に関せざる規定に異なりたる意思を表示するとはどういうことか?(98年度)
A任意規定の規定内容と異なる意思を表示した場合ということです。