亀甲墓(きっこうばか)



 沖縄では、現在でも住宅地のすぐ間近にお墓が沢山みられます。
 これは、かつては集団墓地が無く、個人の敷地の中にお墓を作っていたためで、現在ではお墓の集中化(墓園化)を進めていますが、なかなか思うようにいかないのが現状です。

 本州でも、昔は民家の裏山、近隣の寺院の敷地内などにお墓が見られましたが、近年では郊外の墓園に移設され、特に街中ではほとんど見かける事がありません。
 しかしながら、沖縄では風習の違いや、お墓の形態などの違いによって「住宅のすぐとなりがお墓」などという事も珍しくありません。
 現に、私が住んでいるアパートのすぐ裏には小さな丘があり、そこにはいくつものお墓があります。
 4階に住んでいる私は、玄関出るとお墓を目にすることになるのです(笑)

 さて、沖縄のお墓は、本土でよく見られるそれとは、かなり異なった形をしており、「亀甲墓(きっこうばか)」と呼ばれる独特のものです。
 沖縄で「カメヌクー」と呼ばれ、大型のものが多く内部は小さなものでも6〜8畳もあるそうですが、戦時中には防空壕がわりにも利用されたということです。
 形が亀の甲羅に似ているところから「亀甲墓」と言われますが、実はこれは女性の子宮を模したもので、墓の入り口はちょうど産道に当たることになります。
  人は、母の胎内から生まれ、死ぬとまた帰ってゆく、という「母体回帰」の思想からくるものということで、全体の形を見ると、たしかに亀の甲羅というよりも子宮という感じがします。
 また、沖縄では「門中墓」と呼ばれる門中(一族)で所有するお墓が多くみられます。
 4月の「清明祭」や「旧盆」には 一族の者が集まって墓参りをし、お墓の前で持ち寄った料理を広げたりする光景が、ごく普通に見られます。
 中には、お墓の前が屋根付きの広場のようになっていて、雨天でも大丈夫なように作られているものもあり、本土の墓参りの光景からすると想像しがたいものではあります。



【 いろいろな亀甲墓 】
 墓全体が地中に埋まって、表面と入り口が地表に露出したものが一般的のようですが、中には全体が地面の上に出ているものも見かけます。
 もっとも最近では、墓地の確保や墓石の値段の関係もあるのか、普通の墓石の上部だけが「亀甲墓」の形をした小型のモノもあります。





【 そのほかの墓 】
 沖縄では「亀甲墓」のほかにも、「破風墓」「屋形墓」などと言われるお墓も多く見られます。
 本土で一般的に見られる「和型」と言われる角石を積み上げたような形のものはあまり多くはありません。
 また、亀甲墓の所でも書きましたが、一見は屋形墓のように見えて、上部だけが亀甲の形になったものも見られます。




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