【コラム・5】 リールの位置


 釣具店で投げ竿を物色していると、数ある竿の中に「北海道専用」「北海道仕様」などと書かれたものを見つけることがあります。
 これらの竿の多くは4.2〜4.5メートル程度で、25〜30号くらいの穂先の柔らかいタイプが多く、カジカやアイナメ狙いのゴロ仕掛けやコマセネットなどに対応した竿ということのようです。
 ただ、このような規格の竿は、「北海道仕様」以外の製品の中にも数多くあるわけですが、もう一点特徴的な部分があるのです。
 それが、今からお話する「リールシートの位置」です。

 北海道仕様と呼ばれる竿の多くは「ローシートタイプ」と呼ばれるリールシートの取り付け位置が竿尻に近いタイプのもので、一般の標準シート(ハイシート)タイプの取り付け位置が80センチ程度なのにくらべ、ローシートタイプの場合は60センチ程度と、およそ20センチ程度低い位置に取り付けられているのです。
 これは北海道の投げ釣りが、砂浜よりも小さな漁港や岩礁地帯のようなフィールドをポイントとすることが多く、したがって遠投性よりもコントロールを重視することから生まれたものだと考えられています。
 実際、ローシートタイプの竿の場合、右手と左手の握りの位置が狭くなる分、オーバースローでコンパクトに振り抜くことができ、思ったポイントに打ち込むことが可能となります。

 個人的には昔からローシートタイプの竿を愛用しており、このタイプの竿が北海道で広く受け入れられてきた意味がよく理解できるのですが、近年、一部の釣り人の中には、ローシートタイプの竿を諸悪の根源のように悪しざまに言う方々がいらっしゃるようです。
 特に、遠投派のパワーキャスターにその傾向が強いようで、ローシートファンとしては少なからず心を痛めています。

 確かに、砂浜でのサーフキャステキングのように遠投性を重視する釣りでは、標準シートのほうが有利という場合もありますが、ローシートにはローシートのメリットがあるわけで、それを無視して持論を展開されては正直言って閉口してしまいます。
 もちろん「ローシート否定派」の方々の意見も全くの的外れということではありませんが、遠投性を重視する並継竿や、振出竿でも高級品は標準シートの製品ばかりですので、中級品までにしか存在しないローシート仕様の竿に対する蔑視が含まれているというという気がしないではないのです・・・。

 では、具体的にローシート仕様の竿のメリットを上げてみたいと思います。
 最大のメリットは、なんといってもキャステキングのしやすさです。
 人間が釣り竿を振り切るという動作を行う場合、右手と左手の握りの間隔は「肩幅」から「手の長さ」、日本人の成人男性でおよそ45〜65センチくらいがもっとも無理なく安定して動作を行うことができます。
 特に、コントロールを重視して剣道の面打ちのようなオーバースローで投げようとする場合、リールシートの位置が80センチ前後もある標準シートでは、両手の握りが手の長さを越え、少々無理な体勢となるか、もしくはフィニッシュの際に前方(リール側)の握りを前方に放り出すようなフォームになり、最後まで押し出す力が伝わりませんし、コントロールに問題がでてきます。
 スリークォーターでの投法や、回転投法などでは標準シートのほうが遠投に有利とは言われていますが、遠投だけが釣りの醍醐味ではありませんし、扱い易さではローシートにも分が有ります。
 中には、「シートの位置が低いため、キャストに余計な力が必要」「竿尻に近い位置を握るので実際以上にロッドが重く感じられる」などと少々的外れなご意見を展開されている方もいるようですが、正直言ってこれらの見解はあくまでも個人的なものとして認識していただきたいものです。

 もちろん、標準シート派を否定する気はありませんし、それぞれの釣り人が自分の使い易い道具を使えば良いだけのことですが、ローシート&ローシート派を頭から否定するようなご意見には、少々過敏に反応してしまうのが正直なところです。 



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