「秩父神社神楽」(国の重要無形民俗文化財)は、現在、一幕一座形式で三十五座を演目とし、秩父神社の附属芸能として神代神楽と称され、主に、神社境内にある神楽殿で上演されます。

 この神楽は一般の里神楽と同様、黙劇ですが、演目の中に演劇的な表現が多いのが特徴となっており、関東一円に分布する江戸神楽とは異なる構成と系統を示しており、高天原神話から出雲神話に至るまで、古典神話を題材にきめ細かく組み立てられています。


 寛永年間(1624〜43年)、江戸の能役者によって舞のくずれを正してもらったと伝えられ、静的で優雅さを保ちながら、軽妙な滑稽味を含んでいます。
 使用する楽器は、大太鼓、小太鼓、鞨鼓、笛からなり、大太鼓、小太鼓は一人で交互に打ち込み、鞨鼓は一人で打ち、笛は二丁から三丁で演奏します。

 演目は、第七座「天岩屋戸開き」を中心にして三十五座。曲目は、「出」、「神コウラ」、「大内」、「能サガリ」、「岡崎」、「祥殿」、「神祥」、「力太鼓」、「両国ハヤシ」、「カマクラ」など19曲からなります。

 また、演目のうち第十八座「代参宮」は、夏の秩父川瀬祭りと冬の秩父夜祭で、それぞれの御旅所で演じられます。これは、面をつけない二人舞で、古風を残す代表的な神楽といわれています。

 秩父神社神楽の上演の期日は、2月3日(節分祭)、4月4日(お田植祭り)、7月19・20日(秩父川瀬祭り)、9月27日(番場諏訪神社祭礼)、12月2・3・6日(例大祭)です。

 秩父神社神楽も、明治初期に中断した時期がありました。明治14(1881)年、
日野沢神楽団 が秩父神社直属の神楽団として発足。秩父神社の祭礼に年3回奉仕していました。昭和4(1929)年、秩父神社に神楽団が復活して今日に至ります。

秩父神社神楽の三十五座
第1座 天安河原集議 第13座 御神酒献饌 第25座 国平の槌(動画)
第2座 日矛御鏡造 第14座 養蚕指導 第26座 榊の舞
第3座 御玉造 第15座 稲作 第27座 魚釣り(釣こみ)
第4座 鹿骨の占岩戸装飾 第16座 四方堅 第28座 根付榊の舞
第5座 岩屋の御前四方国堅 第17座 磐鏡 第29座 対扇の舞
第6座 湯笹の清め 第18座 代参宮神楽奉仕 第30座 二本幣の舞
第7座 天岩屋戸開き(動画) 第19座 罪穢は祓い清む 第31座 一本幣の舞
第8座 祝詞奏上拝札献饌大麻行事 第20座 御多福舞 第32座 八握の斂
第9座 御神前二本榊の舞 第21座 弓矢四方堅 第33座 八握斂の舞
第10座 斂鍛 第22座 武威を示す 第34座 酒を醸る
第11座 国家の安寧を祈る 第23座 鉾舞 第35座 大蛇退治
第12座 四方堅 第24座 二本太刀の舞
☆ 曲目は、@「出」、A「神コウラ」、B「大内」、C「能サガリ」、D「岡崎」、E「祥殿」、F「神祥」、G「力太鼓」、H「両国ハヤシ」、I「カマクラ」、J「三楽奉奏」、K「四方堅」、L「十二神楽の出」、M「オカグラ」、N「十二神楽」、O「道化祥殿」、P「日祭神楽」、Q「能カガリ」、R「能ヅクシ」で、演目ごとに演奏される曲目の組合せが決まっています。
(2004年1月20日 中村 知夫)
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