BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第91話:風呂敷、手拭い、バンダナ。

実は、旅行のときにはプレゼント用に何か必ず持って行くようにはしている。

で、日本の風呂敷とか手拭いとか和菓子の包装(中身より箱とか紙。しかし、包装だけ渡す訳にもいかんのだが)がけっこう受けるのも知っている。しかし、今回はとくに準備する時間もなかったので、ザーーっと引き出しからかっこんできただけだった。もらったりした和風の風呂敷が3枚。東北地方あたりの雰囲気の紋様が入った手拭い(たぶん旅行先で買ったもの)。知り合いが真打ちに昇進したときの記念の手拭いが2枚。

これで6枚。他のゲストは7人、それにホストのジョエル。あと2枚。

結局、多めに持ってきた(なぜか4枚も持って来ていた)バンダナのうち、未使用のインド模様の2枚をプレゼントに当てた。12月26日はボクシング・デイでもあり、アイルランドではセント・スティーヴンズ・デイでもある。まだまだクリスマスは続いているのだ。

ジョエルには、安藤広重の東海道五十三次。

「おー、これは素晴らしい。この山のすその曲線と、イニシュモアの海岸と、ちょっと似ているねえ(注:まったく似ていない。だいたい、稜線と海岸線では全然違うと思う)。ほう、これで物を包むのか。なんかもったいなあ。いや、もちろん気に入ったよ。どうもありがとう」

イーナには東北紋様。

「まあ、これはステッチワーク? 日本のどのあたりのもの? そんなに雪が降るの? 素敵な模様ねえ。ありがとう」

ターニャには抽象模様。

「あら、シルク? どうもありがとう。日本のものって、インテリアにとっても人気があるのよ。きれいねえ。どうもありがとう」

ニールには真打ち昇進記念。

「おお。これは君の友だち? あ、これが名前かな? あ、逆なのか。なんて読むの? Syun-pu-tei? そう、Spring wind houseね。いやあ、ありがとう。嬉しいよ」

リーズベスとエスターにはバンダナ。

「まあ、ありがとう。え、インド? なんかすっごいエスニック」

ブランドンには、鳳凰。

「え、なに、プレゼント? これは特別だって? これは鳥? 想像上の動物で、古代中国の伝説・・・(以下略。ブランドンは何でも詳しく聞きたがるのだ)。いやあ、きれいだ。ありがとう」

いつも朝食にいちばん遅く現われるモニクにも、真打ち昇進手拭い。

「ま〜、これってあなた? 友だち? 本当? え、スタンダップ・コメディアンじゃなくって、座るコメディアン? 本当? まあ、ありがとう」

というわけで、"Thank you"の響きが少し違って聞こえる朝なのであった。

(第91話:風呂敷、手拭い、バンダナ。 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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