BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第79話:MAINISTIR?

船が接岸した。イニシュモアだろうか? そのはずだ。とにかく降りる。迎えに来ているという車を探すが、他のホステルの車しか見当たらない。もちろん、バスとかタクシーはないので、ここで乗りはぐれると雨のなかを荷物を持って歩くしかない。

「どこに行くのかね?」

「Mainistir houseなんですけど」

「これに乗れよ」

よくわからないが、とにかく乗る。道は埠頭から西端へと伸びるメインロードが1本。ほとんどすべての家はこの道沿いのどこかにある。

ミニバス、というか、15人乗りくらいの車にバックパッカーばかりが乗り込んだ。雨で外は見えない。やがてどっかに着き、何人かが降りた。運転手も降りてしまったので、回りの連中に

"Mainistir?"

と声を張り上げて聞くが、首を振るばかり。要領を得ないので、降りて運転手をつかまえようとしたら、降りた乗客から集金の最中だった。とにかくここらしいので1ポンドを払って、いまはじめて同宿だとわかった人々と歩き出す。

先頭の大柄な女性が向かった先は、どう見ても裏口だった。いったいどんなところなんだろう? 見回すと、一緒に降りた他の人々はすでに楽し気に笑いながらゆっくりと歩いていた。

ここでもひとりか。

暗い気持ちで裏口らしきところに向かったら、大柄な女性(顔も目も口も大柄であった)がずっとドアを押さえたまま、待ってくれていたのであった。

広いキッチンを過ぎ、暗い廊下を抜けると明るいリビングのようなロビーに老婦人が座っていた。奥から出てきた黒人とミズ大柄が派手なハグで再会を喜びあっている。やがて顔を揃えた人々がてんでに握手をしあいながら、Mainistir houseでのクリスマスは始まった。

Mainistir house
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(第79話:MAINISTIR? 了)

text, QucktimeVR and photography by Takashi Kaneyama 1999

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