第74話:「もう、戻って来たよ」 |
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バスが連なるあたりには、昨日のツアーガイドのモロイがいた。
そこにたむろしていたオヤジたちが、何かをモロイに言っている。
たしかに、そう聞こえた。 バスのチェックをしている青年に聞いても、
やがて船会社の女性も出てきた。
へなへなと腕から力が抜けていった。ま、物事はそうそううまくいくものではないのだ。また、出直すか。 たったいま別れてきたフレディのいるホテルへと戻る。ドアはロックされている。今日からクリスマス休業だからだ。ブザーを鳴らしても、誰も出てこない。ようやく、昨日の朝食の席で見かけた客が部屋に戻るところだったので、合図して錠を指差す。彼が右手を挙げて「わかった」という仕種をして、奥に消えていった。 やって来たフレディに「もう、戻って来てしまったよ」と軽口をたたくつもりだったが、やはりまず、事情を説明した。
甘んじてその好意を受けることにした。雨はますます強くなっていた。 (第74話:「もう、戻って来たよ」 了) text by Takashi Kaneyama 1999 |
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