BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

CONTENTS

第73話:「今度は夏にまた来るよ」

船が出る朝が来た。

「今日は嵐みたいな風、そして雪。船は揺れるよ」

フレディは私のバッグを持って歩きながら、陽気に話しつづけた。

「ゴールウェイは楽しんだかい。そうか、そりゃあよかった。

そう、夏の方がずっといいよ。また来るって? もちろん、大歓迎さ。え? ファックス? えーと、ああこれだ。この番号だよ。いいかい?」

フレディと握手をして別れ、雨のなかを急いだ。船はロサヴィールから出る。そこに向かうバスは、やはりツーリスト・オフィスの前から出発する。もはや歩き慣れた道を、重いバッグを持って歩く。

今日の昼前には、アラン諸島にいる。風が雨粒を顔に叩きつける。あと数時間で、イニシュモアだ。なんの疑いももたず、私は期待に胸を踊らせていた。

(第73話:「今度は夏にまた来るよ」 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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