BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第69話:「いいクリスマスを!」

朝、部屋の電話が鳴った。フロントのフレディからだった。

「あー、昨日ツーリスト・オフィスから電話があって、今日来てくれ、ってことだったよ」

もちろん、朝食のあと、すぐに出向いた。列に並んでいたら、昨日の彼女が向こうから呼んでいる。

「ここのホステルよ。1泊に3食付きで35ポンド。4泊だから140ポンドね。いいかしら? いい? ここはね、とっても評判いいのよ。埠頭から歩いても近いし。20分くらい。でも、迎えの車が来ているはずだから。さて、1割のデポジットと手数料1ポンドで15ポンド。

バレン高原へのツアーは予約した? まだ? ここで予約できるから、好きなツアーのパンフを持ってきて。あ、これね。じゃあ、10ポンド。バスはすぐそこから10時出発。船は予約した? そう、それならよかった。じゃあ、いいクリスマスを!」

完璧であった。ホステルの予約確認書には、ちゃんと朝食・昼食・夕食がつくことが明記され、先方で誰が予約を受け付けたか、ツーリスト・オフィスの担当者は誰か、デポジットでいくら支払ったか。すべてがきれいに記載されている。

これだけの手際のよさと、事務的でないホスピタリティが両立するのはまったく珍しい。ゴールウェイのツーリスト.オフィスは、私の知る限り最高のうちのひとつである。

ちなみに、島には少ないながらもレストランがあるが、冬期・クリスマスはもちろん閉まるので、食事は宿泊先でアレンジするのが常道なのである。だいたい、雪や嵐のときに外に出る気にはなれないだろうし。

かくしてクリスマス・プランは一挙に具体化し、なんの憂いもなく浮き浮きと出かける・・・はずだった。

(第69話:「いいクリスマスを!」 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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