BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第51話:こういうエレベーターは、少なくない。

ヨーロッパのホテルに泊まっていると、エレベーターが手動のドアというのは珍しくない。その例を以下に示そう。

まず、私の泊まっている3階から。このドアはもちろん3階のフロア・ドアである。このドアを、手前に引く。

すると、

こういう無骨なスチールドアが現れる。このドアがエレベーターのドア、つまり上下するハコのドアである。

こいつを真横に引っ張って(アコーディオン式なのだ)、めでたくハコの中に入る。

ハコに入ってドアに向き直る。すでに3階のフロア・ドアはバネで閉まっているが、エレベーターのドアは人力で閉める。そうしないと、いつまでたっても動かない。万が一、開いたまま動いたら大変である。

なので、この古風な取っ手を握りしめて、

エイヤッとドアを閉めると(けっこう力がいるのだ)、次のようなメッセージが書いてある。

"PLEASE CLOSE DOOR ON LEAVING"

すなわち、着いてから出るときにも(もちろん乗客が手で開けるのだが)、このエレベーターのドアは自動的に閉まらないので、出るときにキチンと閉める必要がある、ということだ。

ちなみに、このOrmond Hotelはミシュランがダブリン市内の項で紹介しているわずか39軒のなかでも、割合高い評価を受けている。すなわち、エレベーターが手動だってくらいでジタバタしてはいけないのだ。タクシーのドアさえも乗客の手をわずらわせずに開閉する日本では信じられないかもしれないが。

なお、日本人が「エレベーターのドアがすべて自動で開く」と信じきっていることは有名で、ジョークの対象にまでなっている。

(第51話:こういうエレベーターは、少なくない。 了)

text and photography by Takashi Kaneyama 1999

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