BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第47話:あ、写真を撮ってしまった。

National Museumは、なかなか個性的な博物館だった。中央には先史からのミイラや船や黄金。左は独立の歴史的遺品とビジュアル。そして右にはアイルランドが誇る宝物が展示されている。ちなみに上階は古代エジプトとヴァイキングである。

タラのブローチタラのブローチ

中世ケルト工芸品の傑作《タラのブローチ》は、個人所有のものだったが、19世紀に複製品のブローチが圧倒的人気を博し、折からのケルト・ルネサンスの風潮に乗ってあっと言う間にアイルランド文化の象徴の位置を占めてしまった。いまはこの国立博物館の所蔵になっている。

タラの丘で出土したのではないのだが、商売上手な宝飾店がつけた名前がそのままいまも使われている。まあ、来歴はともかく、細部の意匠と細工はまさにケルト文化の結晶である。形、バランスとも優美にして強靱、精緻にして大胆。

コングの十字架コングの十字架

この十字架はコングの出土。。金だからでもなく、貴石を使っているからでもなく、ここに彫り込まれた紋様の執念がこの迫力をもたらしている。

しかし、デジタルはいいねえ。暗いところでもフラッシュなしでいろいろ露出を変えてトライできるから。フィルム代も現像代もかからないし、だいたい予備のフィルムを持ち歩かなくていいのが素晴らしい。ただし、予備の電池はつねに必要だけど。

そのとき、初めて私は掲示に気がついた。ここは「フラッシュ禁止」ではなくて「撮影禁止」だったのだ。ありゃま。罪の意識がないからか、あまりにさりげなかったからか、誰も注意してくれなかった。う〜ん、しかし撮ったものは仕方がない。いくばくかを寄付して埋め合わせよう。

そういうわけで、よい子のみなさんは、真似をしないように。

(第47話:あ、写真を撮ってしまった。 了)

text and photography by Takashi Kaneyama 1999

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