BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第38話:どこで降りればいいのだろう?

バスは快調に夜の街を走る。そこで、はたっと気づいた。

どこで降りればいいんだろう?

もともと、バスに乗るのは得意だが、降りるのはいちじるしく苦手としているのだ。

とりあえず、西へ向かっているのはわかった。たぶん、オコンネル通りまではまっすぐ西へ行くだろう。そこから先は? だいたい、この街の中心はどこなんだろう? コノリー駅か? テンプル・バーか? セント・パトリックか? まさかギネス工場ではないだろうな?

"Central Post Office! Central Post Office!"

ドライバーが叫んだ。中央郵便局。1916年のイースター蜂起の舞台だ。すでにオコンネル通りまで来ている。しかし、降りる人は少ない。

"Central Bus Station! Central Bus Station!"

ここだ! 降りるという意思表示として"Yeah-ah"といううめきがあちこちであがる。明るくなった車内を見渡せば、私よりもみんな若いバックパっカーもどきばっかりだった。そうか、このへんで安宿を当たるのか。

連中と一緒には降りたが、方向は逆に分かれた。めざすOrmond Hotelは、リフィー川沿いに立っている・・・はずだ。距離は・・・不明。方向は・・・西へ。肩紐を調整し直して、私は歩き始めた。

(第38話:どこで降りればいいのだろう? 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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