第38話:どこで降りればいいのだろう? |
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バスは快調に夜の街を走る。そこで、はたっと気づいた。 どこで降りればいいんだろう? もともと、バスに乗るのは得意だが、降りるのはいちじるしく苦手としているのだ。 とりあえず、西へ向かっているのはわかった。たぶん、オコンネル通りまではまっすぐ西へ行くだろう。そこから先は? だいたい、この街の中心はどこなんだろう? コノリー駅か? テンプル・バーか? セント・パトリックか? まさかギネス工場ではないだろうな?
ドライバーが叫んだ。中央郵便局。1916年のイースター蜂起の舞台だ。すでにオコンネル通りまで来ている。しかし、降りる人は少ない。
ここだ! 降りるという意思表示として"Yeah-ah"といううめきがあちこちであがる。明るくなった車内を見渡せば、私よりもみんな若いバックパっカーもどきばっかりだった。そうか、このへんで安宿を当たるのか。 連中と一緒には降りたが、方向は逆に分かれた。めざすOrmond Hotelは、リフィー川沿いに立っている・・・はずだ。距離は・・・不明。方向は・・・西へ。肩紐を調整し直して、私は歩き始めた。 (第38話:どこで降りればいいのだろう? 了) text by Takashi Kaneyama 1999 |
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