BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第17話:人はいかにしてロンドンでトイレを見つけるか。

「LION KING」のチケットを引き換えに、コヴェント・ガーデンに向かった。簡単に「Rock Garden」も、そこにいるチケット売りのおねえさんも見つけたのだが、そこで激しい衝動に襲われたのである。

「ううっ。トイレにいきたい」

これだけ飲食店があるのだからどこでもいいのだが、貧乏性なのでタダで大丈夫そうなデパートへ行った。しかし、そこは小さなブティックの集合体のようだったので、あきらめて外に出た。ちいとは気兼ねもするのである。妙なもので、ここで大道芸をしばらく見ていると、差し迫った緊急事もしばし忘れてしまうのだ。

いや、そんな場合ではない。マクドナルドのようなセルフサービスのチェーン店が、トイレを借りるには好都合なのだが。う〜む、どうしよう。

ロンドンなんだしなあ。あ、そうか。

というわけで、さっさとパブに入ってギネスを頼んだ。まだ余裕があるので、ハーフ・パイントほど流し込んでからトイレに行こうという魂胆である。トイレに行こうというときに、ビールってのもどうかと思うが。

来ない。いくらギネスでも出るのが妙に遅いなあ(ギネスは一度注いでから泡が落ち着くまで2分程待ち、最後にグラスの1割ほど注ぎ足してふち一杯にするのが流儀)。そう思っていたら「ゴメンね、いま地下とのコネクションがおかしくなっちゃって。もう少し待ってね」ということなのであった。

もちろん、にこやかに「かまわないよ」と言ってはみたものの、そういうことになると猛然とあせるのである。カウンターでキャッシュ・オン・デリバリーなのだから、注文の品が出て来るまでは、普通、カウンターを離れられない。

う〜〜〜〜〜〜む。トイレは地下かな。あ、あの階段だ。おお、やっとギネスが来た。慌てない、慌てない。ちびちび。いや、ゴクゴク。やっぱりちびちび。さて、さり気なく行くか。トイレが掃除中だとイやだな。お、大丈夫だ。

(以下省略)

かくして人はパブでいい気持ちになれるのであった。

(第17話:人はいかにしてロンドンでトイレを見つけるか。 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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