BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第16話:番地はあるのに店がない?

アイルランドに渡るフェリーについての情報の入手、あるいはチケットの手配ができるところを探していたのだった。めざす通りは、短い通りだった。しかし、旅行会社らしき店はない。私は、「マルタ:250ポンド」「カリブ海クルーズ:1200ポンド」などとウィンドーにペタペタと張られた普通のところを想像していたのだ。

番地は、と。14-15か。13。16。あれ、この間か。

そこにあったのはロックされたドアと、その建物に入っている会社名が書かれたプレートだった。その1階(日本風にいえば2階)に、めざす「エメラルド・トラベル」はあった。ありゃりゃ。全日空のおばさまは、一般向けではない旅行会社をわざわざ紹介してくれたのであった。

ま、行くしかない。「エメラルド・トラベル」の名の脇にあるベルを押す。ややあって、例のジーーーというロックの解除される音がしたので中に入り、エレベーターでひとつ上の階をめざした。オフィスに入っても一般向けにカウンターがあるわけではないので、ひとりの女性に視線を定めて「アイルランド行きのアレンジはできますか?」と尋ねた。

彼女がうなずいて席をすすめてくれた。しかし、フェリーは扱っていない、と言う。他にやってくれそうなところを知らないか? と聞くと、回りのスタッフに聞き回り、どうやらアイルランド関係のパンフレットからフェリー・サービスのページを見つけてくれた。しかし、それは宿泊やら車やらゴルフやら乗馬やらを手配してくれるところで、そのための飛行機や船をアレンジする、ということらしかった。パンフをもらって、礼を行って去った。

どうも、アイルランドへ船で渡るのはマイナーらしい。少なくとも、エージェンシーを通すような部類のことではないのだろう。それならば、行こうではないか、港へ。行けば、わかる。

(第16話:番地はあるのに店がない? 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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