BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第15話:ピカデリー・サーカス近くの怪しいチケット売り。

アイルランドに渡るフェリーについての情報の入手、あるいはチケットの手配を求めて、今度はバスに乗った。もらった住所によれば、ピカデリー・サーカスのひとつ手前のバス停がいちばん近そうだったが、せっかくなのでピカデリー・サーカスまで行って、おのぼりさんをする。

いやはや、まったくここは観光客のメッカである。Tower Recordsはあるし、日本語で「チケットあります」という看板まであった。

それには「チェルシー対リーズ」「アーセナル対ウィンブルドン」「ウェストハム対マンチェスター・ユナイテッド」という垂涎のカードも含まれている。それは私が昨日まで狙っていたカードでもある。もっとも、私は「リヴァプール対コヴェントリー」をリヴァプールで見て、そのままアイルランドに渡ろうと思っていたのだが。

「サーカス」というだけあって、交差点は円形をなしており、歩行者もROUND ABOUTをしてめざす道へと折れていくようだ。そしていつものように、私は道を間違えた。

いつまでもめざす通りに着かず、間違いに気づいて引き返そうとした時だった。

「LION KING TONIGHT AVAILABLE → HERE」

これが、West Endのチケット・エージェンシーならわかる。ただのアクセサリー・ショップに、この→は向いていた。怪しい。いかにも怪しい。どれくらい怪しいんだろう?

店の中に入って、店員に「今夜のライオン・キングってまだあるの?」と聞いたら「ちょっと待って。係を呼ぶから」と奥へ消えていった。

そして現れたのは、典型的なゲイ・ファッションに包まれた男だった。彼はもみ手をし、「今日のライオン・キングね、待ってね、チェックするから」と、腰を振りながら私を先導した。

彼が言うには、マチネーはなく、35か40ポンド、40ポンドなら平土間の中央"nice view"、35ポンドなら平土間の左右"nice view"ということであった。本当なら、まあまあおいしい話である。結局35ポンドのの方にする、というと彼は電話をかけ、ほどなくして彼は「よかった、チケットはあるよ」と説明を始めた。

要するに、ここにはチケットはなく、コヴェント・ガーデンの「Rock Garden」に行ってこの支払い証明と引き換えろ、という話であった。現金と引き換えに頼りない手書きの伝票と、手書きの地図。う〜む、非常に怪しい。怪しいが、しかし、私は35ポンドを払った。いまだに、ギャンブル癖が抜けないらしい。

果たして、どれくらい怪しいのだろうか?

(第15話:ピカデリー・サーカス近くの怪しいチケット売り。 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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