BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第13話:ロンドンの秋葉原に潜入する。

12月15日朝。現在の最優先課題は、「電源の確保」である。ACアダプター用の電源プラグと、電源プラグ変換アダプター。来年のMac EXPOがついに中止になってしまった英国で、Macintoshはどういう扱いを受けているのだろうか?

ロンドンの秋葉原、トッテナム・コート・ロードへ。地下鉄から地上に出る。磁石で方角を確かめて北へ。ウィンドー・ディスプレイでは判別がつかないので、しらみつぶし作戦を発動する。要するに、見つけた電器屋には全部入ってみて聞く、というだけだが。

1軒め。「ああ、ここにはないよ。29番地のうちの別の店に行ってみな」。よく見ればそこは「Hi-Fi」、つまりAudio専門のようであった。

「twenty-nine, twenty-nine, ....」と口の中で呪文をとなえる。しかし、そこまで行かないうちに別の店を発見。ここはComputerがメインだ。さっそく店員をつかまえて説明に入る。

こういう場合、むしろ専門用語の方が同じ穴のムジナで通じやすい(こともある)。まあ、今回はpower plug、ってだけだが。で、めでたくブツはあったのだが、念のため「PowerBookなんだけど、オッケー?」って聞いたら話がややこしくなってきた。

店員同士で「Macintoshに使える、使えない」で意見が分かれてしまったのである。で、そこは任せてサスコムでは対応できなかったBritishタイプの電源から各国のプラグにつなぐアダプターの購入に回る。こっちはカウンターが別なのだ。

さて、さっきの店員が呼んでいる。議論の決着がつき、「使える」ことになったようだ。う〜む。一抹以上の不安があるが、やってみるしかあるまい。12ポンド94ペンス(約2329円)の忘れもの代になった。

道すがら、大きなショーウィンドーに、iMac DV Special Editionが飾ってあった。店の中では、品のいい中年婦人がiBookの箱を傍らに置いて、嬉しそうに座っていた。

私は思わず、「Best choice! Nice selection!」と叫んで握手したい衝動にかられた。「あなたの買ったiBookは、ただのマシンではなく、あなたのパートナーになるんですよ」

しかし、もちろんそんなことはしなかった。私の理性が勝ったわけではない。彼女の幸せそうな笑顔が、そんな言葉を必要としていなかったからだ。

(第13話:ロンドンの秋葉原に潜入する。 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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