第8話:やっぱり13年は長かった。 |
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牛肉野菜炒めと、北京ダック入り焼きそば、とメニューにはあった。たしか、そうだった。しかし、英語ではちいと違っていてfried noodleは揚げそばだったし、mushroomはしいたけだった。 あんかけ揚げそばの上にのっているアヒルの脚のローストのぶつ切りは明らかに電子レンジで温めそこねたもので、ところどころが氷のように冷たかった。野菜炒めも、牛肉は切り方が大きすぎて噛み切るのに力が必要だったし(歯医者に行っておいてよかった)、逆にタケノコは妙にふやけた若者のような頼りない食感だった。 いくら中華料理なら安全牌とはいえ、ちょっと悲しくなる出来だった。チンタオ(青島)はうまかったが。一応、レストランなのにな。 面目ないことに、野菜炒めはかなり残してしまった。う〜む。たいした量じゃないのに。勘定をしてもらい、11ポンド80ペンスにチップをどれだけ足そうかと思案しつつ小銭を置いていたら、あっという間に"Thank you".と金を持っていってしまった。それならそれでいいが、なぜかウェイターが帰ってきた。 "This is old coins". うあわあ。やっぱり古かったか。払おうとした小銭は13年前の旅行の時の余りだったのだ。そうか、この10ペンス硬貨は使えないのか。さすが中国系、金には厳しい。しゃべる英語は文法が間違っているが("These are old coins".だろうが)。 さあ、では街の記憶はどれだけ古くなっているか、試してみよう。 (第8話:やっぱり13年は長かった。 了) text by Takashi Kaneyama 1999 |
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