BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第5話:二階建てバスの後ろは今もオープンエアだった。

適当に北へ歩いたらVictoria St.に出た。バス停があった。"Westminster Abbey"。路線を見たところ、11番がよさそうだった。空港で買った1日券(one day travel card)は、あと1回、バスか地下鉄に乗れば元がとれるのだ。

やって来たバスは24番だったが、委細かまわず乗る。そうか、ここは手をあげて止めるんだな。

バス停←バスが必ず止まる停留所はこのように(ってたぶん見えないだろうけれど)"FAIR STAGE"と表示してあり、手をあげなくていい)。

懐かしい二階建てのバス。後部にドアがなく、インス(イングランド代表)に似た車掌が手ぶりで「二階へ行け」と乗客を追いやる。二階は乗り降りが面倒なので、フツーは一階から座席が埋まるのだ。

やがてインスが上がって来て検札をする。"Any more~?!"と言う節回しが、どこか笑いを誘う。

15分ほどでいくつか劇場が見えてきた。そろそろだ。下に降り、チャンスをうかがう。繰り返すが、後部にドアはない。バス停でなくっても、自分が安全だと思えば飛び降りていいのだ。ただし、それで後続の車に轢かれても自己責任だが。

インスが"Aldwitch! Aldwitch!"と呼ばわる。バスがスピードを落とした。身軽になった私は、踊るようなステップを踏みながら、Wst Endの地に立った。

(第5話:二階建てバスの後ろは今もオープンエアだった。 了)

text and photography by Takashi Kaneyama 1999

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